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路線バスICT化の最前線、京阪バス バスのオンライン化で「乗る」から「降りるまで」をトータルサポート

2017/5/8(月)

京阪バス株式会社 ICT推進部長兼経営企画部長 森山 豊 氏

 

「乗り方がわからない」「いつ来るかわからない」。そんなバスのイメージを拭い去るべく、京阪バス株式会社(以下、京阪バス)がバスのICT化に取り組んでいる。

2012年に開始されたバスロケーションシステムを皮切りに、延着証明書のweb化や一日乗車券のICカード化など業界初のサービスを次々と打ち出した。2017年3月には次世代型総合検索サイト「グループバスナビ」をオープン。乗客の「乗る」から「降りるまで」をトータルサポートできるように考えられたというICT化計画。

システム開発の中心人物であるICT推進部長兼経営企画室部長の森山豊氏(以下、森山氏)に話を伺った。

 

<バスロケーションシステムから派生させたサービス>

 

――ICT化に乗り出したきっかけを教えてください。

一日乗車券のICカード化や延着証明のweb化など、今、関西では一番新しいことをしていますが、十数年前までは一番遅れていました。磁気カードがつぶれそう、運賃表示器がボロボロで使えない、単一無線が使えなくなるかもしれないなど、システム整備の必要に迫られていました。

 


 

そんな時にモバイルクリエイト株式会社(以下、モバイルクリエイト)のバスロケーションシステム(以下、バスロケシステム)を知りました。

従来からあるGPS位置情報を乗客へ返すという単機能システムとは異なり、音声・文字情報・ポイント情報などのあらゆる情報を、インターネット経由で届けることが可能で、車内の液晶にも反映ができます。これを中心にシステムをつないでいくことで、新しい取り組みができるのではと考え、5年計画を立てました。

 

――バスのオンライン化はどのようなサービスに生かされていますか?

オンライン化の当初の目的は、ICカードのポイントサービス用の会員・乗降情報をサーバーから取得することでした。回数券カードを廃止するために、各社は独自にバス専用ICカードを作り、そこに利用割引などのおまけをつけています。ICカードはバス利用時にタッチすることで、使った額とポイントがカードに書き込まれます。

登録型割引が利用できるPiTaPaとは異なり、ICOCAはJRに中身の開示を依頼して改造しないと、ポイントを書き込めません。バスをオンライン化しサーバーにつなげば、事前に登録した会員情報と乗降情報を照らし合わせ、降りるときにポイントの精算・付与ができます。

この方法により、ICOCAを改造せずに、ポイントサービスを提供できるようになりました。同じ仕組みを利用すれば、事前の区間登録なしで定期券が利用できるようになります。

 


 

<社内の負担は軽減し、乗客にとっては便利に>

 

――他にはどのようなサービスがありますか?

延着証明をweb化しました。路線バスでは全国初です。web化されるまでは案内所か営業所に取りに行く必要がありました。時分が空欄なので、営業所への問い合わせも多く、現場の負担もありました。バスロケシステムから運行履歴がビッグデータで取れるようになり、直近一週間のデータをお客様が照会できるようになりました。

指定された時間の範囲で、最も遅れたバスの延着時間を表示します。学校や会社側からも確認可能です。利用数は1日100件ほどで、事故が起こった際は4倍になります。

 


 

他には、緊急情報の配信です。事故で大渋滞した時に、これまでは「バスが来ない理由がわからない」ことで電話が殺到して営業所がパンクすることもありました。これらの問題を解消するために、情報を伝える手段を考えました。

事故が起きると営業所から全管理職にメールが送信されます。情報配信担当者は送られてきた情報を緊急情報として配信します。不測の事態が起こった時、車内・ターミナル・停留所・ネットとあらゆるところに情報が流れます。

3月にオープンした次世代型総合検索サイト・京阪グループバスナビは、別々のサイトだった位置情報のバスロケサイトと時刻表サイトを統合しました。また、停留所のQRコードをスマホで読み込めば、運行情報の確認もできます。

 

<インバウンド効果にも期待>

 

――グループバスナビはインバウンドに効果がありそうでしょうか?

グループバスナビを導入してからページビュー数は15000から倍の30000になりました。使い勝手がよいのか、利用者数も右肩上がりです。

停留所のナンバリングは京阪バスの停留所だけでも、約2600カ所あるので、これから一年かけて取り組んで行きます。ローマ字の表記もありますが、数字は万国共通なので海外の方でも入力・検索しやすく便利です。

京都市役所の都市計画局歩くまち京都推進室が行っている「外国語案内充実ワーキンググループ」で、多言語表示の共通指針が策定されました。「遅延」や「定期券」などの表示方法を市としてまとめる取り組みです。この動きと並行して、多言語化にも対応していければと思っています。

 



 

<「スルッとKANSAI」での成功体験を再び>

 

――オープンシステムにされていると伺いました。

同じ問題意識を持っている各社に呼びかけ、共同開発をしています。関西全体に広がるようなオープンなシステムにしたかったからです。各社で標準仕様を作り、開発コストを頭数で割ることをメーカーに了承してもらいました。そのため、コストは少なく済んでいます。モバイルクリエイトのバスロケを採用しているバス会社は、モニターの仕様やデザインがほぼ同じです。

阪急電車の茨木市駅は、階段を降りると京阪バスのモニターがあります。京阪バス、阪急バス、近鉄バスの3社が運行しています。3社がバスロケシステムを入れると、遅延情報も含めた全情報が京阪バスのモニターに表示できます。

また、阪急バスと共同運行している京阪電車の淀駅から、阪急の西山天王山を通ってJR長岡京へ行くバスがあります。京阪バスと阪急バスが混じり合って走っているので、京阪バスのバスロケに阪急バスの情報を流し、阪急バスのバスロケにも京阪の情報を流してもらっています。

 

――今後の各社での広がりについてどうお考えですか?

共通乗車制度の「スルットKANSAI」が始まった時に、ライバル会社が共同で取り組むことで、価値が3~4倍にもなりました。関西のバス会社は当時の取り組みを成功体験として持っています。これは関東にはない動きです。

これからも各社からさまざまなアイデアがでてくると思います。モバイルクリエイトのバスロケユーザーは阪急・神姫・山陽・近鉄などの関西バス会社にとどまらず、広島・沖縄全域にも広がり、合同で会合を開催しています。同じ悩みがあれば一緒に解決できるし、情報交換もできます。バス業界全体の底上げになっていくことを期待しています。

 


 

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今後は行先表示器のLEDを点滅させることで意味を持たせ、行先や到着時刻などを多言語で表示する可視光通信や、ジオフェンシングという技術を使ってスマホの操作なしで接近情報が提供できるシステムも視野に入れていると森山氏は語ってくれました。ICT最前線を走る京阪バスの今後に注目です。

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