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自動運転を支えるダイナミックマップとは? ITS推進フォーラム4

2017/3/4(土)

日産自動車株式会社 白 良文 氏

自動運転には、高度な自車位置の測位が必要になる。ダイナミックマップはその基盤となる高精度な地図をつくるとともに、動的なデータを足すことでさらなるサービスを提供することを可能にする。SIP-Adusの中で進むダイナミックマップのプロジェクトの取り組みを紹介する。

 
■第3回はこちら


ダイナミックマップとは何か

ダイナミックマップとは、高精度な地図がベースとしてあり、その上のレイヤーに、地図上には書けない交通環境等の動的な情報を外から取り込み、高精度な地図上に紐付けするものだ。つまり、実際の世界の状況をクルマの中に再構築する仕組みづくりが非常に大事な要件になる。

 
このダイナミックマップを使うことによって、自車の位置を正確に知ることができ、また道の先で何が起こるのかを、より速く知ることができる。さらに、ダイナミックマップの情報とクルマのセンサーから得られる周辺環境等の情報を統合することで、よりなめらかな自動運転を実現しようとしている。
 


下図:ダイナミックマップの構造。高精度な静的地図の上に、車輛から集めた動的データを組み込んでいる。(出典:東京大学公開シンポジウム)

 
ダイナミックマップの施策

2014年度からはじまったダイナミックマップの施策は、2017年の大規模実証実験に向けて地図情報を新たに作成することと、ダイナミックマップセンター機能を構築することが当面の課題だ。2015年度は、基盤地図のデータ構造、動的データの利用の仕組み、基盤地図の更新手法などの検討が進んだ。また、実際にダイナミックマップが試作され、専用ビューアの開発が行われた。

 
そして、2016年度の施策では、主に高速道路の基盤地図の追加作成が行われた。高速道路上で急カーブがある区間や、車線の多い区間、道路幅が狭い区間、分岐・合流がある区間といったような、特殊な状況を含む路線を選んでデータを作成している。このデータは2017年の大規模実証実験で使用される予定だ。

 
2016年度の施策の2つ目は、ダイナミックマップセンター機能の構築だ。このセンターは、基盤地図に加え、車輛や歩行者、周辺環境等の情報を付したダイナミックマップのデータ管理や更新の仕組みを構築し、これを利用する地図サプライヤに提供するための機能を持つ。白氏によると「外からの情報や基盤のデータベースをつくり共通なデータを提供する。その先は、ビジネスとして競争領域であり、各クルマ会社や地図会社で必要な情報を付加し、クルマに提供するというスキームを考えている」とのこと。

 

ダイナミックマップセンター機能の概念図。図中左のセンターが地図情報を提供、クルマ会社や地図会社は情報を付加しサービスを提供する。

 
もう1つの取組みとして、国際連携の動きも進んでいる。ISO TC204では標準化活動が進んでおり、ダイナミックマップセンターと地図サプライヤなどがどういったデータをやりとりするかというデータ・ディクショナリや、基盤地図構築の仕組み、静的データと動的データの組み合わせなどの標準化を議論している。

 
白氏は最後に「2017年をめどに、まず高精度地図を使っていただいて、実証実験を通じてダイナミックマップの性能向上や構造の研究を今後進めていく」と締めくくった。

 

ISO TC204での、地図の標準化の議論。データ・ディクショナリ―、位置参照方式、GDF5.1のファイルフォーマットなどの標準化を推進している。

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