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「自動運転の性能評価を」 日本自動車研究所(JARI)、自動運転評価拠点「Jtown」を公開

2017/11/8(水)

日本自動車研究所(JARI)の自動運転評価拠点「Jtown」全景

日本自動車研究所(JARI)の自動運転評価拠点「Jtown」全景

日本自動車研究所(JARI)は3月28日、国内初となる自動運転の評価拠点「Jtown」を公開した。4月1日から正式に運用が開始し、研究開発や自動運転の標準化の取り組みを世界に先駆けて行おうとしている。

[LIGARE vol.33 (2017.5.31発行) より記事を再構成]


Jtown設立の背景と目的

日本自動車研究所(以下、JARI)は、つくば市研究学園に自動運転評価拠点「Jtown」を設立した。もともとJARIは2006年に衝突実験場と模擬市街路を整備しており、そこでITSや予防安全の研究開発を行ってきた。今回は、この模擬市街路を拡充する形で「多目的市街地」「V2X(※1)市街地」を整備、さらに「特異環境試験場」を新たに整備。さまざまな環境下で自動運転の性能評価を行うことが可能となっている。

※1 V2X(車車間通信および路車間通信)… V2Xは自動車と自動車(V2V)、または自動車と信号機や道路標識などのインフラ(V2I)がクラウドを通さず直接に相互通信し、効率的な交通システムの構築と自動車事故の未然防止を目的とする仕組み。

 

 

本施設は、経済産業省の平成28年度補助事業である「自動走行システム評価拠点整備事業」として採択され、15億円の補助を受け総額22.5億円で設立された。

今回の発表にあたりJARIの代表理事 研究所長である永井正夫氏は「1969年に正式に財団法人として創立され、2019年はちょうど50周年。世の中まさに自動運転時代の幕開けのようになっており注目されている。2、3年前からユーザーの声として自動運転の評価ができないかという話が出てきている。政府の活動としても自動走行ビジネス検討会やSIPが起ち上がり自動運転評価拠点の必要性が出てきた」と、施設の設立背景と必要性を述べた。

 

雨や霧など特異環境下での性能評価「特異環境試験場」

特異環境試験場の外観



 

今回注目すべきは新設された「特異環境試験場」だ。自動運転車はもちろん、通常の自動車と同様に夜間や雨・霧といった環境下でも走行しなければならない。その際にシステムが正常に作動するかどうか試験を行う場所が必要になる。この「特異環境試験場」は全長200メートルにわたる走行路で、日光を遮蔽し暗闇を再現できる。施設内には信号機や標識、人形などが設置され、実際の走行環境に似た環境を再現している。

 

日照設備のデモ。左は外光が入っている状態だが、右は日光を遮断した状態で装置から光を照射した状態。朝日や夕日などの表現ができる上に、20000ルクスという強い光を照射することができる。



 

この暗闇の中で、日照設備のデモが行われた。この装置は照度20000ルクス以上の光を照射することが可能で、色温度も変更でき、朝日や夕日など、さまざまな状況の日射を再現できる。また、試験場内の照明設備自体も照度をさまざまなに変更でき、夜間から薄暮までの明るさを再現することが可能になっている。

 

特異環境試験場で雨天環境を再現した様子。3段階で雨の強さを調節でき、今回は車両2台と信号機、標識、横断する歩行者を設置している。水たまりの反射も再現できる。写真左は霧が発生した状況を再現している。視程が15メートルほどの濃霧を発生することができる。



 

次に霧発生設備のデモが行われた。この設備では、視程が15メートルのかなり濃い霧まで再現することができる。霧の粒径も細かく、ほとんど実際に起こる霧を再現しているといっても良いほどだ。

続いて降雨のテストが行われた。施設上部に設置された装置から雨滴が射出され、30mm/h、50mm/h、80mm/hと「強い雨」~「非常に激しい雨」の3段階の強さの調節ができる。路面に水たまりができれば、光の反射の再現も可能となる。

このような装置を組み合わせることによって、霧の中の照明や、逆光での障害物認識、降雨中の信号認識など、多種多様な環境下で自動運転自動車が周辺環境を認識できるかどうかテストすることが可能となる。

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