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観光型MaaS「Izuko」プロジェクトリーダー森田創氏インタビュー ~伊豆の活性化に奔走した2年間を語る~

2020/9/15(火)

東急株式会社 交通インフラ事業部MaaS担当課長の森田創氏

伊豆半島で行う観光型MaaS「Izuko(イズコ)」プロジェクトのリーダーを務める東急株式会社(以下、東急) の森田創氏が7月、著書『MaaS戦記―伊豆に未来の街を創る―』を講談社から出版した。MaaS事業の立ち上げから2度にわたるIzuko実証実験終了までの約2年間を描いたドキュメンタリーだ。

観光型MaaS「Izuko」は、東急、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)などが伊豆エリアで展開している目的地までのシームレスな移動を行う統合型サービスだ。鉄道・バス・AIオンデマンド交通・レンタサイクル・観光施設などをスマートフォン上で検索・予約・決済できる。

日本のMaaS元年とも呼ばれる2018年4月に、東急は10年、20年先を見据え、複数の事業開発プロジェクト推進部を新設した。その中の1つが、森田氏が立ち上げを任されたMaaSプロジェクトチームだった。

森田氏は東急に入社後、渋谷ヒカリエ内の劇場「東急シアターオーブ」の立ち上げを担当し、その後広報部に異動。MaaSプロジェクトが始動する直前まで広報課長を3年半務めていた。ある日、野本弘文社長(当時、現・東急株式会社会長、東急グループ代表)から突然、MaaS事業の立ち上げを命じられたという。

プロジェクトチームのメンバーは、森田氏と3人の部下の計4人。しかし、森田氏は交通事業もIT業務もほぼ経験がなく、当時はMaaS(Mobilty as a Survice)という言葉すら知らなかった。「最初は不満と不安しかなかった」と振り返る。

2018年春の時点では日本国内でのMaaSの取り組み事例はなく、森田氏はMaaS先進国といわれるフィンランドでの現地調査に飛んだ。情報収集や検討を重ねた結果、2019年4月から始まるJRの静岡デスティネーションキャンペーンに合わせて観光型MaaSアプリを開発することを決めた。ここから伊豆エリアを中心に日本で初となる大規模な観光型MaaSの事業であるIzukoプロジェクトは始まる。
※JRグループが自治体や観光事業者らと共同で行う大型観光キャンペーンのこと

Izukoの実証実験は、2019年4月1日〜6月30日までのフェーズ1、2019年12月1日〜2020年3月10日までのフェーズ2、2度にわたって実施。さらに2020年11月16日から社会実装に向けた最終実証であるフェーズ3の開始も決定している。

プロジェクトリーダーとノンフィクション作家、2つの顔を持つ森田氏に、Izuko事業や伊豆地域への思い、今回の書籍化について話を聞いた。

画像:Adobe Stockより



やってみて分かった、MaaSの理想と現実


――書籍にはIzuko開発時の緊迫感に満ちた現場の様子がリアルに描かれていています。なぜMaaSをテーマに書くことになったんですか?

森田氏:全て実際にあったことを書いているので、関係者の確認取りには非常に苦労しました(笑)。私は会社員のかたわら、物書きとしての活動を数年前からやっています。これまで2冊ほど本を書きましたが、しばらく間が空いていたこともあり、昨年2月に講談社の編集者から「そろそろ3作目を書いてはどうか」と連絡があったんです。

ただ、その頃はIzukoの立ち上げで恐ろしいほど仕事が忙しかったので、今書くのは到底無理だとMaaSやIzuko開発での苦労話をしたんです。すると編集長に「それを書いてみて」と言われてしまって。でも自分が主人公で、自分でも結論の見えない話を書く難しさは想像以上で…。講談社からお尻を叩かれ(笑)、昨年末から仕事の合間に少しずつ書き始めることになりました。

1、2作目は、今から遠く離れた戦前の話でしたから、客観的になれるし、書くこと自体に負担はなかったのですが、今回は自分がまさに今やっている仕事が題材ということで、正直とても書きづらかったです。

――舞台裏ではこんなことが起きていたのかと驚きました。怒涛の2年間でしたが、特に思い出深いことはありますか?

森田氏:最も強烈に心に焼きついているのは、実証実験のフェーズ1を開始した昨年4月1日の前後1週間です。実証実験の開始2週間前でもまだアプリは完成していないし、やっとできたと思ったら地図画面でメディカルセンターの場所が高校になっていたり、温泉のアイコンがなぜか鉄アレイのマークで表示されていたり…。もう悪い夢を見ているのかと思いました。

メンバー全員で業務を分担して、みんな必死になって対処してくれたおかげで、なんとか奇跡的に実証実験をスタートできましたが、あの時はほぼ寝ずに対応して本当に苦しかったので、もう二度とあれは味わいたくないですね。Izukoがここまで来れたのは、部下やチームのおかげだと思っています。

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