再エネの主力電源化に向け 三菱商事ら、蓄電システムの本格運用開始
2023/7/20(木)
三菱商事株式会社(以下、三菱商事)ら3社は7月19日、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化、ならびに再エネ出力制御の低減に向け、福岡県田川郡香春町に出力1.4MW/容量4.2MWhの蓄電システムを設置したと発表。さらに、同システムの本格的な運用を開始した。
今回の取り組みは、NTTアノードエナジー株式会社(以下、NTTアノードエナジー)、九州電力株式会社(以下、九州電力)、および三菱商事の3社で実施する。再エネなどの発電量が需要を上回る場合には、電力安定供給に不可欠である需給バランスを確保するため、再エネ電源の発電を抑制する出力制御が行われている。このため、再エネの有効活用に向けた対策が必要になっている。
特に九州地域では、2023年度に約740GWh※1の出力制御が見込まれており、これは一般家庭およそ17万世帯分の年間消費電力に相当する※2。また、再エネの出力制御は、2022年春以降、九州以外の複数の地域においても開始され、実施地域が拡大している。
※1 「第43回総合資源エネルギー調査会/系統ワーキンググループ参考資料」(経済産業省)より。
※2 「令和3年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(確報値)」(環境省)に基づき、九州エリア内の世帯当たり年間消費電力量を 4433kWhと想定。
このような状況を踏まえ、3社は、出力制御されている電力の有効活用および新たな調整力等創出に向け、各社が持つ経営資源やノウハウ等を活用して共同での系統用蓄電池事業の開発を2022年6月から進めてきた。そして、7月から次のステップとして、NTTアノードエナジーが国の補助を受け福岡県田川郡香春町(田川蓄電所)に設置した国産の系統用蓄電池を活用して、太陽光発電の出力制御量を低減させるとともに、需給ひっ迫時に電力供給する事業モデルを構築、運用している。※2 「令和3年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(確報値)」(環境省)に基づき、九州エリア内の世帯当たり年間消費電力量を 4433kWhと想定。
3社は、田川蓄電所で「事業モデルの検証」、「複数の太陽光発電所の同期運用の検証」を始めているという。「事業モデルの検証」では、太陽光出力制御の低減にくわえ、スポット市場や需給調整市場、容量市場等の各種電力市場において系統用蓄電池をマルチユースする場合の事業性を検証する。一方、「複数の太陽光発電所の同期運用の検証」では、太陽光出力制御の低減の実現に向けた、再エネ発電量と蓄電池充電量との遠隔地での同時同量達成のトライアルを検証しているとのことだ。
なお、3社は、2025年度以降の容量市場への供給力供出も予定しているという。くわえて、今後は、引き続き出力制御量低減の実現に資する取り組みとして、将来的な事業拡大も視野に引き続き検証を進めていくと述べている。