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交通空白を解決!未来の自動運転バスとは─SBドライブ

2017/5/5(金)

大手通信事業会社ソフトバンクから生まれたベンチャー企業のSBドライブと、自動運転技術の研究開発を行っている先進モビリティの2社が「沖縄自動運転コンソーシアム」を組成し、沖縄県南城市において自動運転バスの実証実験を開始した。

これは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「自動走行システム」SIP-adusが進めるプロジェクトの1つだ。近年、自動運転分野では、自動車業界だけでなく、SBドライブやDeNAといったIT業界など多様な業界を巻き込んだ発展を見せており注目が集まっている。



実証実験の背景と概要

今回の実証実験は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム「自動走行システム」(SIP-adus)のプロジェクトの1つとして、沖縄県南城市にあるあざまサンサンビーチにおいて行われた。SIPでは、交通制約者が利用しやすい「次世代都市交通システム」の開発を進めており、自動運転技術の公共バスへの活用などについて検討している。

今回の沖縄県南城市のように、一部地域では高齢化が進むなど、交通制約者が増えつつある。一方で、過疎化により交通需要が低下し、公共交通に対するニーズと供給量にかい離が見られる。これらを解決するために、自動運転技術を公共バスへ活用するための検討が行われており、本実証実験は、コミュニティバスを実際に自動運転化することを想定して行われたものである。

今回の実証実験は3月20日~4月2日まで行われた。平成30年度までに通常の交通環境の中で問題なく走行できる自動運転バスを目指すとしており、今回はその第1ステップとして、自動運転による車線変更と正着制御の技術的な実証を行った。

車両は、先進モビリティは日野自動車の小型バスをベースに開発した車両を使用。同時に、バスの位置の把握や車内の安全を見守る運行管理システムの検証、自動運転バスの社会受容性の検証を行い、乗客の自動運転技術に対する不安を払拭するためにPepperを使ったロボットによる車内案内を行った。対象エリアとなったあざまサンサンビーチ周辺は、人・クルマ共に交通流が少なく、公道を使用した実証実験の最初のステップとして導入は行いやすい場所と言える。

今後、第2ステップとして平成29年度は公道上の通常の交通環境で、同様の正着制御などの実証実験を行う予定だ。

 

各社の役割と技術開発状況


先進モビリティ 代表取締役社長 青木 啓二 氏

 

自動運転の技術開発と車両の改造を行っているのが先進モビリティ株式会社だ。今回は3つの技術を搭載した小型バスの開発を行っている。

1つは、車線維持制御である。車両には高精度なRTK-GPSを車両に搭載しており、事前にドライバーによる走行で、緯度・軽度を計測し走行する経路の軌跡をインプットする。これにより、自動走行の際はRTK-GPSで取得した現在位置を目標の軌跡に追従するように操舵している。

2つ目は正着制御であり、基本的には軌跡上を動くのだが、LIDARにより縁石との距離を測ることで、バス停の縁石から10cm以下に生着することが可能となっている。

3つ目は障害物の認識と車線変更である。LIDARにより障害物までの距離を計測し、それが走行中の車線にあるかどうかを判定。その後ドライバーがウインカー指示を出すことで、自動で車線変更をする。

このように、基本的には軌跡上を走行しながら、障害物を検知し、進路上にあればそれを避け、バス停では正着制御するというのが今回の実証実験での内容だ。しかしまだまだ課題も多い。カメラやLIDARは前方にのみ装着されており、後方の確認はドライバーが行わなければならない。

また、認可上の問題によりブレーキはマニュアル操作であり、アクセルとステアリングが自動化されるにとどまった。今後は「後方もLIDARやカメラを付けて、360度安全確認を自動でできるようにしたい」と担当者は語った。

また、会場ではディープラーニングによる障害物検知のシステムの展示が行われていた。今回は搭載されてはいなかったが、カメラとディープラーニングの活用により、今後は障害物がモノなのか人なのか車両なのか、より詳細な判別が可能になっていくとのこと。

 


SBドライブ 代表取締役社長CEO 佐治 友基 氏

 

SBドライブは、運行管理システムの開発を担当している。運行中の車両が正常なのか異常なのかを判別し、異常であれば、車両の位置情報、遅延状況などの情報が事業者側のオペレーターで確認できるというシステムとなっている。どのバス停の間にいるのか、ブレーキが壊れていないか、ガソリンは不足していないかなど詳細な情報を把握できるとともに、車内外の状況を映像で確認できるようになっている。こちらも将来的には、ディープラーニングにより車内の乗客の状態を判別することができるようになるという。

「通常か異常かという一次判断をAIが行い、運行管理するオペレーターが一度に複数台を見て、AIからの連絡を受けて対応するという形をとる。例えば立ち上がっている乗客が吊革を持っているのか、料金箱を探して戸惑っているのかなどの判断は、これまでは運転手が行いサポートしていた。このような負担を軽減したい」とSBドライブ社長の佐治氏は述べた。

 



ディープラーニングで車両、歩行者など障害物を判別する様子

 



今回の実証実験後、乗客が自動運転の各機能に対してどう感じるかモニター調査を行った結果

 

実際の試乗を経て

今回は、全長約1.2kmの公道上のルートを往復し、途中に設置してある仮想のバス停に停まるという内容だった。速度は約30km/hまで上がったが、走行中は問題がなく、途中に駐車してある車両を車線変更して追い越す際もスムーズな走行となっていた。特にバス停への正着制御はかなりの精度が出ており、縁石との距離はわずかに8cm程度となっていた。「高齢者などの交通制約者が不自由しないためにも将来的には4cm以下にしたい」と担当者は述べた。

試乗をしてみると、時速30km/hに対して基本的な自動運転が問題なくスムーズに進行しているという印象を受けた。実際に、モニター調査の結果、試乗する前は不安という意見が多かったが、試乗の後は安心だという意見が多くなっているとのことで、社会的受容性に関しても高まっているとも言える。

 



自動運転で旋回する様子

 



縁石への正着制御技術

 

当日は、鶴保庸介・内閣府沖縄及び北方対策特命担当大臣が実証実験を視察した。大臣は「日本一、世界一の技術を沖縄で根付かせることは、内閣府にとって悲願。また、沖縄は渋滞が多く、車社会が最も深刻な状況になっている。離島などの閉鎖空間で、運転手不足と言われる場所で24時間365日走らせることができれば素晴らしい。

今回試乗してバス停への正確な横付けや車線変更といった高度な技術や、バスの乗客に対して車両の運行状況の情報を伝達する仕組みなどを体験し、自動走行の技術の大きな可能性を強く実感した。第1ステップとしては満足がいく結果だった。今後2020年の東京オリンピックまでにレベル3を実用化するために、沖縄を中心に先頭を切ってやっていきたい」と、自動運転バスへの期待を述べた。

 



内閣府沖縄及び北方対策特命担当大臣 鶴保 庸介 氏

 

自動運転バスの社会実装への期待

今回の実証実験は、高精度な正着制御の開発など、第1ステップとしては成功と言ってもいいだろう。ブレーキはドライバーの操作によるもので、レベル2相当の自動運転であり、舞台となったあざまサンサンビーチも、交通流が少なく、実際の交通環境とは異なる場面が多い。

しかし今後、法制度上の問題を解決しブレーキの自動化が可能になったり、カメラやLIDARなどによる360度センシングとAI、ディープラーニングを活用することで技術水準も上がると思われる。

今後ステップを経るごとに実際の交通環境での実証実験も考えているとのことなので、レベル3、レベル4といったより実装に近い形での自動運転バスが実現することに期待が持てる。

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