みんなのタクシー、デジタルサイネージ事業参入 都内1万台導入目指す
みんなのタクシー株式会社(以下みんなのタクシー)と、総合PR 会社の株式会社ベクトル(以下ベクトル)は、タクシー車両における後部座席IoT サイネージ事業に関するパートナー意向確認書を締結したと発表した。
みんなのタクシーは、都内タクシー会社5 社(グリーンキャブ・国際自動車・寿交通・大和自動車交通・チェッカーキャブ)と、ソニー及びソニーペイメントサービスの合弁企業。タクシー会社5社が保有するタクシー車両は、現在都内最大規模の1 万台超で、みんなのタクシーは2018年度中にタクシーの配車サービスや決済代行サービス、後部座席広告事業の提供を予定している。ベクトルは、総合PR 会社として8 期連続で過去最高売上、最高益を達成しており、年間約25,000社の安定的な顧客基盤を所有している。また、映像製作から動画広告配信までサービス提供する子会社を複数所有しており、急成長する動画広告市場及び顧客ニーズに対応していく、としている。
今回の意向確認書締結により、みんなのタクシーに参画するタクシー会社5 社が所有するタクシー車両の後部座席IoT サイネージ事業をベクトルが担当し、新型IoT サイネージ端末設置、メディア運営、広告枠販売までサービス提供を行う。また、各セールスパートナー・メディアとの連携により、独自の広告メニューの展開・販売を通じて、東京都内最大規模の1 万台を超えるタクシーサイネージネットワークの創出を目指す。
■タクシー向けデジタルサイネージ事業
タクシー向けデジタルサイネージ事業は、Japan Taxi株式会社が2016年に、株式会社フリークアウトと合弁会社・株式会社IRISを立ち上げ、「Tokyo Prime」の名で都内を中心に展開している。今年3月には、神奈川県のほか札幌・名古屋・京都・大阪・福岡への展開も発表した。さらに、シンガポールではGrabの車両にもトライアル提供するなど海外展開も積極的だ。「Tokyo Prime」端末はJapan Taxi Walletをはじめ、Origami Pay・Alipay・WeChat Payの決済にも対応しており、 順調に拡大を続けている。今回の同事業への参入は、こうしたJapan Taxiグループの積極的な展開が背景にあるとも読み取れる。
■移動中のサービス提供空間としての可能性
同事業は、単に新しい広告配信と決済端末と解釈することもできるが、実際のポテンシャルはそれ以上のものだと思われる。目的地へ移動するだけのタクシーの乗車時間を、「便利な移動」・「楽しい移動」の時間へと変えることができるからだ。その視点で見ると、ソニーの存在感が増してくる。提供が予定されるサービスの中には、配車サービスも含まれており、ソニーのAIを活用した技術への期待値は高い。また、ソニーの持つ数々のエンタメコンテンツなども駆使すれば、後発ながらJapan Taxiグループと差別化できる可能性は十分にある。予約・配車サービスから車内でのサービス提供、そして決済までをパッケージ化することができれば、タクシー業界がMaaSの展開で抜きん出ることも不可能ではない。今後どのように発展していくのか期待したい。