NIMSら、リチウム空気電池のサイクル寿命主要因が負極の劣化と解明
2023/2/6(月)
国立研究開発法人物質・材料研究機構 (以下、NIMS)は、リチウム空気電池の劣化反応機構の詳細を解析し、負極の金属リチウム電極の劣化がサイクル寿命の主要因であることを明らかにした。1月31日付のプレスリリースで明かした。
リチウム空気電池では、理論重量エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍になる。さらに、軽くて容量が大きいことから、ドローンや電気自動車、家庭用蓄電システムなど幅広い分野への応用が期待されている。NIMSは、先端的低炭素化技術開発ALCA特別重点技術領域「次世代蓄電池」 (以下、ALCA-SPRING) の支援の下、基礎研究を進めてきた。2018年には、ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)と共同でNIMS-SoftBank先端技術開発センターを設立し、携帯電話基地局やIoT、HAPS (High Altitude Platform Station) などに向けて実用化を目指した研究を行ってきた。
今回の研究は、NIMS、ソフトバンク、株式会社オハラの3者で実施したものだ。これまで、酸素正極反応の高い過電圧が、サイクル寿命を低くする原因として考えられてきたが、今回の研究結果では従来の定説を覆す重要な発見だという。さらに、研究チームは、金属リチウム負極の劣化を抑制するために、軽量性と柔軟性を兼ね備えた厚み6μmの固体電解質膜を開発し、負極の保護膜としてリチウム空気電池に搭載した。その結果、高い重量エネルギー密度を維持しながらサイクル寿命を大幅に向上することに成功している。
なお、NIMSは、今後現在開発中の新規材料群をリチウム空気電池に搭載することで、サイクル寿命のさらなる向上を実現する。そして、NIMS-SoftBank先端技術開発センターでのリチウム空気電池の早期実用化につなげると述べている。
(出典:NIMS Webサイトより)