コネクティッド時代の通信を考える IoT通信プラットフォームのSORACOM
2017/11/30(木)
Introduction
SORACOM(株式会社ソラコム)を知っていますか?SORACOMは、MVNOとして、NTTドコモの通信基地局を使ったデータ通信SIMを提供する、IoTプラットフォームです。近年、クルマはカメラやセンサー、OBDなどさまざまなモジュールからデータを収集し活用しようとする動きが活発になっています。それは、1台1台のクルマに限ったことではなく、世界中を走るクルマから情報を集め、ビッグデータとして蓄積され、テレマティクス、自動運転分野などのサービスに利用されます。このように、最近ではクルマはIoTの分野とも深く関わり、通信が必要とされるようになってきています。
[LIGARE vol.29 (2016.9.30発行) より記事を再構成]
SORACOMは、本年7月6日に、未来創生ファンドからの資金調達を行いました。未来創生ファンドに出資しているトヨタと、KDDIが推進するコネクティッドカー向けグローバル通信プラットフォームについてパートナーシップを構築することも発表しました。また、7月13日には主催カンファレンスの「SORACOM Conference 2016 “Discovery”」を開催しました。
自動車分野でも導入事例の多いSORACOM。玉川憲・代表取締役社長へのインタビューも交え、その魅力に迫ります。
Technology
世界初のクラウド上のバーチャルキャリア
SORACOMは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)、つまり自社では実際の回線を持たず、NTTドコモの回線を利用して通信サービスを行っています。また、モバイル通信とクラウドを一貫して提供するIoT通信プラットフォームでもあります。通常、モバイル通信を行う場合は、基地局とデータセンターなど、さまざまなハードウェアに膨大な初期投資をしなければなりません。しかしSORACOMは、基地局をNTTドコモから借り、クラウド上にソフトウェアを構築することで、バーチャルキャリアを作り上げています。これだけでもかなりユニークですが、サービスが支持されている理由とは何なのでしょうか? その概要について述べます。
「A」から始まるSORACOMのサービス
SORACOMのユニークな点は、提供するサービスの頭文字が「Air」「Beam」 「Canal」というように、アルファベットの順番になっていることです。そして、その一番はじめの「A」が、SORACOMの通信の基本となるSIMカードを提供するサービス「Air」です。SIMカードは、携帯電話やスマートフォンに入っているので、珍しいと思うことはないでしょう。SORACOM Airの特徴は、IoT向けに特化していることです。通信ができるだけでなく、SIMの利用開始、停止、解約、速度変更、利用状況をWeb上で監視・管理することができます。
IoTの時代、たくさんのモノが通信を行えば、膨大な数のSIMカードを管理する必要があります。SORACOMは、APIを使ったプログラムでの操作も可能で、数万枚にわたるSIMカードでも管理がしやすくなります。また、一日10円の従量課金制、通信料は1MBあたり0.2円となっています。
クラウドのパワーを使ったアプリケーション連携サービス
SORACOMのクラウドのリソースを使って、セキュアな通信を可能にするのが「Beam」です。oTが広まると、顧客情報など機密性の高い情報を頻繁に送受信することになります。当然高いセキュリティが必要になりますが、通信デバイスの少ないリソースでは暗号化が困難なときがあります。Beamを使用することで、デバイスとサーバー間の通信の暗号化をクラウド上で代わりに行うことができます。デバイスとSORACOMのクラウド間の通信は、キャリアの回線であるためもともとセキュアになっています。
これを発展させたものが「Funnel」です。AWSやAzureなどのクラウドサービスにデータを転送することができます。サービスごとに認証の仕方が違っているため、それぞれにデータを中継するサーバーを立てたりする必要がありました。Funnelを使えば、画面で設定を行うだけでAWSやAzureへの接続が可能になります。
また「Endorse」というサービスもあり、これはAir SIMを使用しているデバイスをSORACOMが認証プロバイダーとして認証するサービスです。このようなクラウドリソースを使ったサービスにより、よりセキュアな通信を行えるようになっています。