伊藤慎介の “Talk is Chap” 〜起業家へと転身した元官僚のリアルな産業論 第1回 このままでは 「次の自動車産業」で世界に負ける
2017/11/29(水)
電気自動車のベンチャー企業である「株式会社rimOnO」を工業デザイナーの根津孝太氏と共に創業してから早いもので2年が過ぎた。
お陰様で今年の5月20日に最初の試作車『rimOnO Prototype 01』を発表することができたが、ここまででさえもよく実現することができたと自分でも驚くくらいの紆余曲折があった。頼りにしていた経産省の補助金は一次選考で落選し、退職金を設立費用で使い切ってしまった後は生活が成り立つのかという不安に駆られる日々が待っていた。
しかし、開発資金の調達に苦労していることを話したところ、経産省時代から付き合いのある知り合い数名が個人で出資してくださり、そのお陰でプロトタイプの開発を進められるようになった。
そして、後にかけがえのない存在となる設計会社のドリームスデザイン社の奥村社長と出会い、三井化学、帝人フロンティア、ローランドを始め、数多くの素晴らしい会社の人たちにご協力していただいたおかげで5月20日の発表会を迎えることができた。
[LIGARE vol.30 (2016.11.30発行) より記事を再構成]
その発表会では、The Truck、LIGAREを含め、数多くのメディアの方にお集まりいただき、rimOnOについて大きく取り上げていただいた。その後もテレビ、新聞、雑誌、インターネットメディアなどたくさんのメディアに取り上げていただき、お陰様で多くの方に知っていただける存在となった。
この2年間の経験だけでも、どれだけ多くの方に支えられて当社や私の今があるかと思うと、言葉では感謝しつくせない思いである。そして、やってみないと分からないことがどれだけたくさんあるのかを痛感し、実体験がなければ本当の世の中は分からないと確信するようになった。
そこで、今回から始めるこのコラムでは、15年間経産官僚を務めた後に起業家となり、実際にさまざまなことを実体験してきたからこそ見えてきた、産業界やそれを取り巻くリアルな環境について語っていきたい。もちろん、政府や行政のあり方についてもできる限り本音で述べていきたいと考えている。
シリーズ最初となる第1回では、自分が属する側になった「自動車産業」について語ることとしたい。なぜならば、この10年、20年で日本の自動車産業は、エレクトロニクス産業と同じように衰退の道を歩みかねないと懸念しているからだ。
この地に来ると何かに出会うだろうとは期待していたが、経験したものは想像をはるかに上回るものであった。
グーグルの本社近くを運転していると普通にグーグルの自動運転車が通り過ぎていった。そして、街中では数多くのテスラ車と遭遇した。更に、現地の人によると、サンフランシスコでは通勤時間帯に海岸沿いの歩道を歩いていると電動スケートボードを含めて、あらゆる“不思議な乗り物”を見かけるそうだ。
もちろんライドシェアのUBERは当たり前のように使われており、過去2年間にタクシーの2/3が廃業したという。そして、UBERはUber Rushという名称の宅配事業を始めており、タクシー業界に続いて宅配業界を“破壊”しようとしている。
そのUBERだが、自動車や移動をデザインしているというよりは、「スマートフォンが動いている」という視点で見ており、スマートフォンにひもづいたユーザー・クルマ・荷物を最適化するという発想で取り組んでいるらしい。「通信網の中のパケットを最適化する」というインターネットや通信技術では当たり前のことを現実社会に当てはめる発想なのだ。
このようにシリコンバレー発の企業は、自動車産業の構造やそのあり方とは無関係に、あくまでパソコン、インターネット、スマートフォンでは当たり前となった発想を自動車の周辺に当てはめていくことで、新しい「移動」や「交通」に関するビジネスを生み出し始めている。
これらが「次の自動車産業」を創り出していく原動力になると思わざるを得ない。
お陰様で今年の5月20日に最初の試作車『rimOnO Prototype 01』を発表することができたが、ここまででさえもよく実現することができたと自分でも驚くくらいの紆余曲折があった。頼りにしていた経産省の補助金は一次選考で落選し、退職金を設立費用で使い切ってしまった後は生活が成り立つのかという不安に駆られる日々が待っていた。
しかし、開発資金の調達に苦労していることを話したところ、経産省時代から付き合いのある知り合い数名が個人で出資してくださり、そのお陰でプロトタイプの開発を進められるようになった。
そして、後にかけがえのない存在となる設計会社のドリームスデザイン社の奥村社長と出会い、三井化学、帝人フロンティア、ローランドを始め、数多くの素晴らしい会社の人たちにご協力していただいたおかげで5月20日の発表会を迎えることができた。
[LIGARE vol.30 (2016.11.30発行) より記事を再構成]
その発表会では、The Truck、LIGAREを含め、数多くのメディアの方にお集まりいただき、rimOnOについて大きく取り上げていただいた。その後もテレビ、新聞、雑誌、インターネットメディアなどたくさんのメディアに取り上げていただき、お陰様で多くの方に知っていただける存在となった。
この2年間の経験だけでも、どれだけ多くの方に支えられて当社や私の今があるかと思うと、言葉では感謝しつくせない思いである。そして、やってみないと分からないことがどれだけたくさんあるのかを痛感し、実体験がなければ本当の世の中は分からないと確信するようになった。
そこで、今回から始めるこのコラムでは、15年間経産官僚を務めた後に起業家となり、実際にさまざまなことを実体験してきたからこそ見えてきた、産業界やそれを取り巻くリアルな環境について語っていきたい。もちろん、政府や行政のあり方についてもできる限り本音で述べていきたいと考えている。
シリーズ最初となる第1回では、自分が属する側になった「自動車産業」について語ることとしたい。なぜならば、この10年、20年で日本の自動車産業は、エレクトロニクス産業と同じように衰退の道を歩みかねないと懸念しているからだ。
普通にGoogleの自動運転車が走るシリコンバレー
10月初旬、約7年ぶりにシリコンバレーを訪れた。この地に来ると何かに出会うだろうとは期待していたが、経験したものは想像をはるかに上回るものであった。
グーグルの本社近くを運転していると普通にグーグルの自動運転車が通り過ぎていった。そして、街中では数多くのテスラ車と遭遇した。更に、現地の人によると、サンフランシスコでは通勤時間帯に海岸沿いの歩道を歩いていると電動スケートボードを含めて、あらゆる“不思議な乗り物”を見かけるそうだ。
もちろんライドシェアのUBERは当たり前のように使われており、過去2年間にタクシーの2/3が廃業したという。そして、UBERはUber Rushという名称の宅配事業を始めており、タクシー業界に続いて宅配業界を“破壊”しようとしている。
そのUBERだが、自動車や移動をデザインしているというよりは、「スマートフォンが動いている」という視点で見ており、スマートフォンにひもづいたユーザー・クルマ・荷物を最適化するという発想で取り組んでいるらしい。「通信網の中のパケットを最適化する」というインターネットや通信技術では当たり前のことを現実社会に当てはめる発想なのだ。
このようにシリコンバレー発の企業は、自動車産業の構造やそのあり方とは無関係に、あくまでパソコン、インターネット、スマートフォンでは当たり前となった発想を自動車の周辺に当てはめていくことで、新しい「移動」や「交通」に関するビジネスを生み出し始めている。
これらが「次の自動車産業」を創り出していく原動力になると思わざるを得ない。
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