2モードで動くミライドンに挑戦

ミライドンは2022年発売のゲーム「ポケットモンスター バイオレット」に登場する「伝説のポケモン」。四足歩行から二輪車のような「ドライブモード」に変形し、主人公を乗せて移動する。

ミライドンのゲーム上の設定、全長3.5mとほぼ同じ大きさのモビリティは東京ミッドタウン日比谷1階アトリウムで展示される。14日に「トヨタミライドンプロジェクト始動お披露目会」が行われ、四足歩行モードで動く様子が披露された。


トヨタ技術会はミライドンのモビリティ「TOYOTA Engineering Society MIRAIDON」(以下、MIRAIDON)を作るに当たり、「四足歩行とドライブモードで実際に動くこと」にこだわった。

各人がトヨタで培った技術や知見を集めて製作。人気ポケモンという形が定まっていて半年という期限もある中、動く「モビリティ」を作ることは一つの挑戦だったと会のメンバーは振り返った。

一番苦労した点はミライドンという決まった形の中に動力をどう配置するかの設計で、「スペースが決まっている中で試行錯誤を重ねた」という。脚が動き、ドライブモードで曲がるための「モーターなどの配置にはすごく苦労した」。


MIRAIDON操作には、ゲームでミライドンを動かすコントローラー「ジョイコン」を使う遊び心を取り入れた。ジョイコンのボタンを押すと、四足歩行モードのミライドンは脚を1本ずつ上げ、ゆっくり進む一連の動作をする。

四足歩行モード、ドライブモードの変更には部材を組み替える。展示はドライブモード状態で行い、モビリティの背に試乗できる※。展示時間は午前11時から午後9時を予定。時間帯によって展示と試乗を切り替え、試乗には数量限定の整理券が必要。

協力会社も力合わせ「類見ない完成度」実現

MIRAIDONはフレームが鉄製で、外装はABS樹脂。3Dプリンターで大型・複雑な外装を作るには名古屋市の企業山一ハガネが協力し、塗料会社の大日本塗料とロックペイントが塗料の調合や試作をした。株式会社ポケモンはデザイン面を監修。「ゲーム内で表現されているミライドンの形や色、質感、全体的なイメージで他に類を見ない完成度」と評している。

また、トヨタ技術会は「機能と安全の両立」にトヨタならではの工夫を凝らした。MIRAIDON外装に丸みをもたせる、軽量化のために脚の関節からのぞくモーターの回転に子供が手を触れないよう「柵」となる部材を設けるなどだ。

小学生の絵から「ミライモビリティ」づくり

MIRAIDONはトヨタ技術会による「トヨタミライドンプロジェクト」で生まれた。プロジェクトは、「こどもたちが想像する『ミライモビリティ』の実現を通じて、想像する楽しさと、ものづくりの力を伝える」ことを目的とするもの。

トヨタ技術会では専任メンバーが毎年のテーマに基づいてものづくりをする。2023年度のテーマを、子供をターゲットとする「ミライモビリティ」とし、企画を検討。技術会は小学生からモビリティを絵にするアンケートを募り、約8000通が集まった。

その中でメンバーが注目したのが、じょうずに描かれたミライドンの絵だったという。その他にも生物が乗り物に変形する絵は多数あり、「子供が求めているだろう『相棒感』があって、形を変えるモビリティ」を作ろうと決め、MIRAIDON製作に動いた。

メンバーはモビリティの3Dモデルを試作して持参の上、株式会社ポケモンに協力を要請。ポケモン担当者の回答は「素敵な夢のある企画で、全く悩むことなく引き受けた」。

技術会は協力会社と一緒に実機の製作を進め、23年11月に豊田市で開催されたイベント「わくわくワールド」でMIRAIDONを出展。今回、「プロジェクト」として「ミライモビリティ」MIRAIDONを都内で展示した。

技術会メンバーは、MIRAIDON製作の経験を社内で各人が手がける業務に生かし、トヨタ自動車のクルマ・モビリティづくりに貢献したい考えという。

トヨタ技術会は会員2万人以上というトヨタ自動車の社内団体。戦後間もない時期に発足した。各部署から集まる専任メンバー約20人は、任期の1年間会の活動に専念してその年の「チャレンジングなテーマ」に取り組んでいる。

製品を作り展示する「ものづくり企画」や車内の「技術交流会」「ドライビング講習会」といった技術研鑽や地域貢献活動を専任メンバーが行う。「トヨタミライドンプロジェクト」は23年のものづくり企画。


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