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コネクテッド・ビークルの国内・海外動向 ITS推進フォーラム3

2017/3/4(土)

マツダ株式会社 小川 伯文 氏

IoTが広がりを見せる中、クルマも通信を行い、つながることが求められる時代に差し掛かっている。SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)では、このつながるクルマであるコネクテッド・ビークルの取り組みが進められている。その開発状況や、海外での取り組みを紹介する。

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海外でのコネクテッド・ビークルに関する動向

はじめに、海外のコネクテッド・ビークルに関する動向では、ヨーロッパとアメリカの動きが取り上げられた。V2Xを用いた自動運転に関する海外動向では、ヨーロッパにおいてC-ITSのプロジェクトが活発化している。C-ITSとは、Cooperative-Intelligent Transport Systemsの略で、協調高度道路交通システムのことを指す。車車間、路車間などの通信を用いた交通システムで、日本でもETCなどが一般的になってきている。

 
その中で、ヨーロッパではi-GAMEというプロジェクトが行われた。これは、EC(European Comission:欧州委員会)の支援を受け、TNOやIDIADAといった研究機関や自動車メーカーがバックアップをし、V2VやV2IのC-ITSの研究を行うといった内容だ。2016年5月にオランダのヘルモントで最終イベントが開催され、約10kmの高速道路の片側2車線を2日間にわたってクローズして実験が行われた。車線変更のシナリオ、交差点の合流、緊急車輛回避の3つのユースケースを元にして、5.9GHzのDSRCを使った通信性能と相互接続性の検証が行われた。車輛は6カ国から集まった大学生が研究・製作を行った。

 

C-ITS実用化に向けたヨーロッパでの組織構成(同フォーラム、内村孝彦氏の資料より引用)。

 
その他にも、AUTONET2030というプロジェクトがあり、2016年の10月27日にファイナルワークショップが行われた。隊列走行をしているところに合流してくるクルマが割り込むシミュレーションを検討している。

 
アメリカではCV (Connected Vehicle)Pilotと題し、3つの都市が交通問題解消に向けた取り組みを行っている。ニューヨークでは、歩行者事故を減らすため、車輛5800台、信号機300台を用いたV2I、V2V、V2Pの技術の効果検証を大規模に行っている。タンパでは、都会の交通渋滞や事故、逆走が問題となっており、その対策を考えている。ワイオミングでは、高速道路を走行するトラックが強風により転倒する事故が相次いでいるため、気象情報を提供し未然に防ぐ取り組みが行われている。

SIPのコネクテッド・ビークル開発状況

一方、国内ではSIPがコネクテッド・ビークルの技術開発を行っている。まず、車車間・路車間の技術は、高速道路での合流をユースケースとして検討が始まっている。700MHz帯のDSRCの通信技術が用いられているが、課題が徐々に見えはじめている。多量のクルマが行き交い高速で移動するため、通信容量の拡大と短時間での通信品質の安定化が当面の課題として挙げられる。最終的には自動運転で合流を実現するために、テストコースにおいてインフラ整備と車車間通信を行い、必要な要件を検討しているという。

 

SIPにおける車車間・路車間通信技術の開発状況。700MHz帯の通信容量拡大や、合流のユースケースの検討を行っている。

 
一方、歩車間通信では、自動運転者による適切な歩行者把握のために歩行者の位置を正確に把握するという課題がある。衛星測位技術の誤差除去技術やPDR(Pedestrian Dead Reckoning)を使った位置補完などを用いて、現在+-5cmほどの誤差で歩行者位置を測定するめどが立っているという。また、700MHz帯の通信が可能な端末をスマートフォンの中に組み込むことや、DSSSの活用など、自動運転に必要な要件を整理している段階だという。

 

歩車間通信技術の開発。歩行者の位置測定と歩行者端末の開発が進んでいる。

 
SIPワークショップでの課題共有

2016年11月には東京でSIP-adus Workshopが開催された。日本から9人、ヨーロッパから5人が参加し、議論を深めた。やはり共通した課題として挙げられるのは、インフラの普及促進問題と、通信の仕様の問題だ。DSRC、5G、Wi-fiと通信規格がさまざまある中で周波数の関係をどうしていくかが問題となっている。また、それぞれがバラバラのユースケースを用いているため、議論が噛み合わないという課題も浮上。ユースケースを共通化していき、最終的には通信仕様を標準化していくことが今後求められる。

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