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自動運転はここまで来た!CES2017試乗レポート3社

2017/3/15(水)

ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市「CES」は、今年は例年に比べて自動車メーカーからの展示や発表が大幅に増え、中でも自動運転自動車の開発に関するものが多く占めらていた。その関連もあってか、ラスベガスコンベンションセンターの駐車スペースに設けられたノースプラザと呼ばれる巨大な展示、試乗を行うメーカーも例年よりかなり数が多く、ほとんどが自動運転自動車の試乗であった。

その自動運転自動車を実現する方法だが、現時点では業界全体や法規制による統一された規格がまだないため、試乗車両の内容や何を試せるようにするのかはメーカーによって違いがあり、どのような分野の技術を得意とし、力を入れようとしているのかも分かりやすかった。

ここではいくつか行われていた自動運転自動車の試乗の中から、実際に体験することができた、ルネサス エレクトロニクス、DELPHI、NVIDIAの試乗内容についてポートする。

 
ルネサス エレクトロニクス
自動運転自動車システムは2タイプの試乗を実施。 ドライバーの運転支援のデモ、またコネクテッドカーシステムのデモを行った。

 
今年のCESで初めて自動運転自動車の試乗を行ったルネサスは、ノースプラザ内に関連ソリューションや技術を紹介するブースを設け、今後の開発ロードマップなどを紹介していた。それによると昨年から3年間の開発ステップを設けており、今年は基本的な技術を完成させ、来年にはそれらを拡張していく予定だ。

ブース内ではパートナーとして提携している、さまざまなメーカーや大学の研究機関などを個別に紹介しており、ルネサスが半導体メーカーというスタンスからそれらの協力関係を深めながら、最先端技術をいち早く導入できる体制を整えていることをアピールしていた。

具体的な製品としては、高度な自動運転技術を実現する車載ソフトウェアの試作品を開発できるキットを展示。今回、試乗に使われた車両には2台のキットを搭載し、V2X通信によって、車両同士がお互いの状況をリアルタイムで把握し、衝突や接触がないよう回避したり、ルート上にある信号機の情報を認識してスムーズな進行ができるようにするなど、レベル4の自動運転システムが実車両で実現できていることを証明していた。

試乗の内容だが、完全な自動運転ではなくドライバーの運転を支援する機能の紹介ということで、コース内を大きく周回しながら周囲の情報をリアルタイムで判断し、ドライビングをアシストする動きをデモしてくれた。

コースを斜めに横切ろうとするもう一台の車両を見つけると自動で速度を落としたり、追い越しをかけようとするのを認識すると路肩に移動するよう促すなど、さまざまなシチュエーションで車両がどのような動きをするかを体験でき、多くの判断を人間ではなく自動車側で行うことで安全性が高められていることが説明された。逆に言えば説明がなければ分からないほど違和感のない動きで、安心感があった。

 
自動運転自動車システ ムの車輌と開発担当者のJohn Buszek氏。彼がリーダーとしてすべてを統括、進行している。

 
ルネサスは他にもう一つ別の車両を使って、コネクテッドカーシステムのデモと試乗も行っていた。前述の車両よりも車内のインフォテインメントに力を入れたタイプで、車内の大型タッチディスプレイが設置されているのが特徴だ。

走行中の道路情報やルート情報はもちろん、信号や工事、事故などの情報をリアルタイムに判断し、分かりやすいインターフェイスでドライバーをアシストする。その中の一つに、広大な駐車場の中から空きスペースを見つけて移動から車庫入れまで支援するシステムがあり、将来的にはドライバーは建物の近くに降りて、あとは自動で車を預かってくれる自動のバレーパーキングシステムにもなりそうだ。

システムとしては、日中の明るい車内でも見やすい高精細度の画像表示や360度の映像を指でぐるぐる自在に視点を変えられるなど、高度な画像処理を可能にする機能が搭載されている。また、ダッシュボードに付けられた2つのカメラでドライバーの状況をモニタリングできるハードウェアを動かす処理能力も備えているのが分かる。拡張性の高さに加えて、Carplayシステムなど他社が開発しているシステムとも連携できる柔軟性もあり、メーカー側のアイデアを試しやすくしているのが分かる。
車載用コンピュータの開発に向けては、先行するNVIDIAをはじめ、Intel、QualcommとNXPらが新しい技術を発表している。メーカー間の連携も進んでおり、ルネサスは車向けのOSの開発を進めるblackberryとQNSに対して、車載システムを提供するなど、パートナー関係をさらに拡げようとしている。

自動車に不可欠な技術の信頼性という点で高い評価を受けており、今回、試乗可能な自動運転自動車を複数発表したことによって、業界からの注目度が高まりそうだ。

 
パネルで2016~2018年までのマイルストーンを展示していた。

 
DELPHI
 
数年前から毎年、公道での自動運転自動車の試乗を行っているDELPHIは、今年も会場周辺を自動運転でクルーズする試乗会を行っていた。残念ながら公道のデモは希望者が多く体験ができなかったが、ノースプラザ内の専用コースで行っていた、V2E(Vehicle to Everything)の試乗を体験した。
V2Eの試乗も2015年から行っているが、今回は特に安全対策のための技術開発に力を入れているようであった。試乗の順番を待つブース内でビデオを使って、交通事故や渋滞、工事による通行止めや進路変更などのアクシデントに対して、自動車側が何を判断基準とし、どのような回避を行うようシステム設計を行っているかがについてどのような技術研究と開発を行っているかが詳しく紹介された。

試乗は完全な自動運転ではなく、専用コース内をドライバーが運転している状態で、V2Eを用いたさまざまな安全機能の確認を行うというもので、ルネサスが行っていたものとよく似ていた。違いとしては、たまたま日没後のタイミングとなったため、自動運転でよく問題視されている夜間走行でも安全機能が確実に働くかを確認することができた。

 
 
コースは普段は駐車場に使われているため照明が少なく、全体的にかなり暗い状態で、ヘッドライトの明かりだけで走行しているような状況であった。障害物も用意されていたが、車内からは見にくく、それでももちろんシステムではそれらをきちんと認識して、速度を落としたり、回避したりしていた。

車内にはV2Eの状況が分かる小さなモニターが用意されていて、どのタイミングでどのような判断を行っているのかが分かるようになっていた。たとえば、路肩で止まっている車があると数メートル前からディスプレイで状態を知らせたり、自転車がコースの端を横切ったのを知らせるなどできていた。

 
 
限られた時間内での試乗だったため、バリエーションはそれほど多く体験できず、衝突回避の方法や安全選択の順位といった細かいところまでは実感が分からなかったが、実用性という意味では十分な段階にあるように見えた。

 
NVIDIA
 
ドライバーシートを完全無人にした試乗を行い、自動運転システムの完成度を最もアピールしていたのがNVIDIAだ。

使用車両はアウディのQ7が使われており、アウディとNVIDIAは2020年に路上走行が実現できる自動運転自動車を共同開発すると発表している。

試乗では、助手席に解説のためのスタッフが座り、ノートパソコンのディスプレイを見せながらシステムについて説明するという状態で、未舗装の部分を含む8の字コースを計3周するというもの。最初の2週は時速4~50km程度で外周を走り、速度はややゆっくりめではあるもののハンドリングはスムーズで、発車時や加速、減速の違和感はほとんど感じられない。

途中、3週目に入ったところで、スタッフがルート上に工事用の車線変更表示を移動させ、それを自動で判断した車両がルートを変更させるときも、人が判断しているかのようにスムーズであった。また、試乗した時は日没間近で、薄暗い状態からどんどん暗くなるという、人であれば運転しにくい時間帯であったが、それについても何の影響もないようだった。

 
 
とにかく驚いたのは後部座席からドライバーシートを見ていると、まるで透明人間が運転しているのではないかと思うほどステアリングが自然と動いていたこと。それもそのはずで、試乗コースをどのように学習させたのか尋ねたところ、開催数日前からドライバーが繰り返し同じコースを走らせ、エンドツーエンドで学習させる方法を採用しているという。

つまり、ドライバーの運転をそのまま記憶するという方法で、NVIDIAのジェン・スン・ファンCEOはCESの基調講演でこのシステムは「犬に散歩コースを覚えさせるのと同じ」だと説明している。それゆえに、人間の運転をコピーしたような動きになっていたのだろう。

NVIDIAでは自動運転車向けAI車載コンピュータ DRIVE PX 2 を使用した統合アーキテクチャを開発しており、データセンターのシステムでディープニューラルネットワークのトレーニングを行うことで、学習モデルをリアルタイムに実行できるようにしている。

つまり、GPSなどは使わずに、搭載されたカメラとセンサーでコース上の位置と周辺情報や障害物を認識しながら走行するというわけだが、これが実際の道路ではどのように実現していくのかが気になるところだ。

 
NVIDIAは屋内ブースでテスラの開発用車両と顔認識システム他、ソフトウェアを紹介。屋外でBB8こと「audi.AI」を使った自動運転自動車の試乗を実施。ドライバー席に誰もいないという大胆なデモであった。

 

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