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ティアフォーが存在感を見せるオープンソースによる自動運転開発の動き【CES2024】

2024/2/2(金)

ティアフォーのブース

ラスベガスで開催されたCES2024では自動運転に関する最先端技術が数多く出展され、開発に参加する企業や組織の幅が年々広がっている。自動運転ソフトウエア開発を先導する株式会社ティアフォー(以下、ティアフォー)を中心としたオープンソースの運用も進み、関連するアライアンスの出展も目についた。

オープンイノベーションを加速させるティアフォー

世界最大規模のテックトレンドイベントであるCESでは、早くからモビリティ関連の最新テクノロジーが取り上げられており、車載音声アシスタントも1990年代後半には展示が行われていた。
自動運転に関してはCESが発表の舞台に選ばれることも多く、モビリティ関連の展示が集まるラスベガスコンベンションセンターのウェストホールを中心に、今年も数多くの出展があった。ただし、一時期の夢見る未来のテクノロジーから実装段階に入ってきたことで、技術的に専門性の高い展示が増えている。

オープンソースによる自動運転の開発ソフトウエアを先導するティアフォーは、そうした傾向に合わせるように昨年より大きなブースを出展し、各種ソリューションや開発キット、さらに昨年スタートしたホワイトレーベルEV「ファンファーレ」で提供するロボバス・シャトルなどを展示していた。

ティアフォーのブースでは自動運転に関する技術とあわせて使用するカメラやセンサーなどが並んでいた。


「ファンファーレ」で提供する自動運転EVスタートアップ企業PIX Moving社が開発する無人運転のミニバス「RoboBus」を展示

新たな取り組みとして公開された Co-MLOps(Cooperative Machine Learning Operations)プロジェクトは、これまで各社で収集していたカメラ画像やLiDARによる点群データなどを共有可能にし、プラットフォーム上でそれぞれ独自の自動運転AI開発をスケールさせることができるという。

2023年に日本やドイツなど8カ国で行われた実証実験をベースにしたエッジAIモデルも公開され、業界全体のオープンイノベーションを生み出すために、高い技術力で支援しようとしているのが伝わってきた。

AWSがオープンソース開発団体に加盟

EVを含む次世代自動車の開発技術は多岐にわたるため、業界内外での連携を強める様々なアライアンスが立ち上げられている。例えば、ティアフォーはオープンソースの自動運転OS「Autoware」の開発を主導していることで知られ、今や500社以上で採用されている。

その「Autoware」の業界標準化を目指す国際業界団体 The Autoware Foundation(以下、AWF)は、世界から70を超える業界メンバーと20を超える大学や研究機関が参画しており、昨年末には大手クラウドサービスのAWS(アマゾン ウェブ サービス)が加わったことが発表された。

AWSを提供するAmazonはモビリティ分野に力を入れており、今年もウェストホールの目立つ場所に大きなブースを設けていた。自動運転や話題の生成AIの活用でクラウドサービスの必要性はますます高まっており、MicrosoftやGoogleと競うように自動車メーカーとの連携を広げている。

今年はBMWやBoschとの連携が発表されたが、会場ではその他に提携するメーカーの名前が紹介されていた。 今後、オープンソース開発に対してもどのような相乗効果をもたらすのかが気になるところだ。

モビリティ分野との連携を強めているAmazonはウェストホールの中でもかなり目立つ場所に大きなブースを出していた

ちなみに同じホールにはAmazon傘下のZooxもブースを構えており、自社で開発を進めているロボタクシーが展示されていた。Zooxは車両を使った無人による自動運転走行を昨年カリフォルニアの公道で成功させており、運用技術面でも注目を集めている。ラスベガス市内ではデータ収集中とみられる、乗用車タイプの車両もあちこちで走り回っており、サービス開始が間近であることを予感させていた。

Amazon子会社のZooxは公道走行に成功したロボタクシーを展示



自動運転カーレースで人材育成

AWFはオープンソース開発はもちろん、次世代のモビリティ業界を支える人材育成活動も行っており、CES中に開催される「Indy Autonomous Challenge」のスポンサーにもなっている。4大陸から40の大学チームが参加するモーターレースは、共通車両である自律運転する無人のフォーミュラーカーに各自開発したAIドライバーを搭載し、実際にサーキットを走らせることで性能が競われる。

AIドライバーの開発には、Autowareのオープンソース・シミュレーター・プラットフォームが使用され、その開発にはティアフォーも関わっている。 決勝レースはCES期間中に、会場から近いラスベガス・モーター・スピードウェイで行われるが、ウェストホールには使用される車両が展示され、参加者の関心を集めていた。

共通のレーシングカーで自動運転システムの性能を競う「Indy Autonomous Challenge」は毎年CESにあわせて決勝レースを開催している



世界最大のEVコンソーシアムとの連携

CESでは様々なEV車両が展示されているが、その多くは将来的に自動運転機能を搭載することを前提に開発が進められている。EV生産のオープンプラットフォームとして台湾のフォックスコンが主導する「MIH(Mobility in Harmony)コンソーシアム」にも自動運転ワーキンググループがあり、議長をティアフォーが務めている。

MIHには日本企業も多数参画しており、メンバーは2600社を超えたと発表されている。ウェストホールに出展されていたMIHブースにはブースではJMS(ジャパンモビリティショー)にも出展されていた、3シーターのProject Xコンセプトカーの展示をはじめ、活動を紹介するミニセッションなどが行われていた。

MIHコンソーシアムはコンセプトカーの展示やミニセッションを開催

複雑で多様化するソフトウエア開発に対応するため、IT業界ではオープンソース化が進んでいるが、モビリティ分野でもその動きが着実に広がっていることが感じられる。その中心にいるティアフォーの活動はグローバルでも注目されており、ますます存在感を高めていきそうだ。

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(ITジャーナリスト/野々下裕子)

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