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セレンスがフォルクスワーゲンらと協業 自動車向け生成AI対応を強化【CES2024】

2024/2/15(木)

セレンスはChatGPTの統合を可能にする「Cerence Chat Pro」を発表した

自動車業界向けAIアシスタントやコネクテッド技術などを開発するセレンスは、フォルクスワーゲンやマイクロソフトらと協業し、生成AIを活用して新たなインタラクションを提供する「Cerence Chat Pro」を発表した。自然な言葉で対話するように使えるユーザーエクスペリエンスは、セレンスが開発する音声アシスタントを使用する車両で展開される。

音声アシスタントにChatGPTを統合

世界から5000以上のメディアが集まるメディアデイのトップで開催されたフォルクスワーゲンのプレスカンファレンスは、AIが大きな話題となった今年のCESを象徴するかのような内容であった。

ステージ上のスクリーンにはフォルクスワーゲンと、モビリティ業界向けに最新のコネクテッドテクノロジーを提供するCerence Inc.(以下、セレンス)のロゴが同じ大きさで並び、その下にドットで「AI ONBOARD」という文字が大きく書かれ、開始前から参加者の期待を膨らませていた。

2台の車両と「AI ONBOARD」のメッセージが目を引く


そしてフォルクスワーゲンは、セレンスが開発する音声アシスタントIDA(アイーダ)にOpen AIのChatGPTを統合し、運転中の使用に適するようインテリジェント化された「Cerence Chat Pro」をセレンスと共同開発したことを発表した。

1万以上の自由形式の質問と回答をシームレスに使い分ける処理が実装され、生成AIの使用で課題となるクラウドでのデータ処理で生じるレイテンシーなどの問題を解消できるようにする。

新機能は次世代インフォテインメントと共に提供され、フォルクスワーゲンはステージに並ぶEVセダンのID.7とカモフラージュ柄の新型ゴルフをはじめ、将来的に全てのモデルに生成AIを導入していくとしている。

フォルクスワーゲンはセレンスと共同開発する「Cerence Chat Pro」の導入でブランド価値を高める


ChatGPTの使用が急速に広まったときは、プライパシーや機密に関わる質問をすることが問題視されたが、車載アシスタントはよりプライベートな車内で使用されることから、センシティブな話題を制限する保護レイヤー機能も備えられている。

ちなみにセレンスはマイクロソフトとも協業関係を結んでいることを発表しており、Microsoft Azure OpenAI Serviceを通じて様々な機能が提供される。クラウドを通じてサービスが定期的にアップグレードできるといった利点もある。

「Cerence Chat Pro」は、迅速で容易にChatGPTを車載アシスタントに統合できるだけでなく、セルフサービスポータルを通じて、質問や回答をカスタマイズすることも可能だ。入力はブラウザなどを使用して簡単に行えるので、メーカーが車両モデルにあわせて、AIをより使いやすくすることができる。

「Cerence Chat Pro」を体験

車内で「Cerence Chat Pro」を使うには、ウェイクワード「Hello IDA」と言うか、ステアリングホイールのボタンを押すとアクティブになる。あとは対話するように自然な言葉で話しかけるだけで、いろいろな機能が使える。

例えば、「寒いから温度を上げて」というとエアコンの温度を調節し、「イタリアンレストランを探して」と言うと候補をリストアップして、目的地を検索してくれる。つまり、これまではメニューを切り替えたり、アシスタントが理解できるような言い方をする必要があったことを自動で判断し、ハンズフリーでストレスなく実行できるというわけだ。

自然な言葉で車載機能をコントロールしたり検索したりできるデモが披露された


発表後にステージに展示されていた新型ゴルフの車内で「Cerence Chat Pro」を実際に試してみた。まず、音声認識はとてもスムーズで、一緒に乗っていた人たちと順番に使ってみたが、ほぼ聞き間違えはなかった。反応速度も即答とまではいかないが、通信環境があまりいいとはいえない発表会場でありながら、それなりにスムーズであった。

まるで友達に話しかけるような気軽さで使えるが、「今日の調子はどう?」と質問すると、「私はChatGPTです。いろいろ答えられるので質問をどうぞ」と真面目に回答してきたのが面白かった。

「Cerence Chat Pro」はつたない英語でもスムーズに利用できた



NVIDIAとLLMを開発

ラスベガスコンベンションセンターのウェストホールにあるセレンスのブースでは、「Cerence Chat Pro」をはじめとする、さまざまなソリューションが紹介され、実際に体験できるようになっていた。

ウェストホールに出展されたセレンスのブース



生成AIの対応では「Cerence Chat Pro」とは別に、NVIDIAと共同で自動車に特化した大規模言語モデル(LLM)の「CaLLM(Cerence Automotive Large Language Model)」が紹介されていた。既存の組み込みシステムと生成AIをクラウドで統合し、市場投入までの時間を短縮することで、車内インテリジェント機能を迅速に導入できるようになるという。

セレンスは車向け生成AIに使用するLLMをNVIDIAとも開発している



車載アシスタントを効果的に使用するには、コクピットの設計もあわせて考える必要がある。声を聴き取るマイクは通常、ドライバーの声が聴き取りやすいようにセッティングされるが、車両によっては同乗者も使いやすくするなどメーカーによって考え方は変わる。そうしたニーズにあわせてセレンスでは、マイクの数や位置を適切にカスタマイズできるノウハウを蓄積している。

マイクの設定やUIの作り込みも大事な要素になっている


バイクもインテリジェントに

音声アシスタントは自動二輪の高級モデルで搭載できるようになってきているが、セレンスではよりインテリジェント化する機能の開発を行っている。経路検索はもちろん、バイクの機能をコントロールしたり、タイヤ圧、バッテリーをチェックしたりといったことがトータルにできるというもので、快適で安全な走りをサポートする。

自動二輪でも生成AIが使えるようになる


ドライバーのカラダの動きやまばたきの数などをセンシングして、安全で快適な運転をサポートする開発は各社で進められているが、セレンスもアイトラッキングシステムやバイオセンサーソフトウエアを開発するSmart Eyeと協力し、感情を認識する新しい車載アシスタントを共同開発している。

車載アシスタント「Cerence Assistant」と統合されており、バックミラーカメラでドライバーの表情と視線を分析し、反応や感情を判断することで、より没入感のあるアシスタントができるというものだ。

時間の関係で体験はできなかったが、これらの開発は今後進む自動運転でも活用されることが考えられ、さらに次のステップでどのような進化を見せてくれるのかが楽しみなところだ。

(ITジャーナリスト/野々下裕子)

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