ヒョンデ、水素と電動化の融合で次世代戦略を推進【JMS2025】
2025/11/13(木)
ヒョンデがジャパンモビリティショー(JMS)2025に初出展した。世界第3位の自動車グループへと成長を遂げた同社は、1967年の創業以来「Progress for Humanity(人類のための進歩)」を企業理念に掲げ、ZEV販売戦略の強化を通じて持続可能なモビリティの実現を目指している。
今回の出展では、日本初公開となる新型FCV「ネッソ」を中心にフラッグシップBEV「アイオニック5」、都市型スモールBEV「インスター クロス」、インスターのコンセプトモデル「INSTEROID」が披露された。
今回の出展では、日本初公開となる新型FCV「ネッソ」を中心にフラッグシップBEV「アイオニック5」、都市型スモールBEV「インスター クロス」、インスターのコンセプトモデル「INSTEROID」が披露された。
未来を拓く水素技術「The all-new NEXO」2026年投入予定

The allーnew NEXO
ヒョンデの水素燃料電池の歴史は、1998年にさかのぼる。27年にわたる研究開発を通じて、同社は独自のスタック技術、水素貯蔵・供給システム、熱管理技術などを自社で確立し、水素モビリティの量産体制を構築してきた。
新型「ネッソ」は、その成果を凝縮したFCVの第2世代モデルだ。このモデルでは、従来の単一グレードから「エクスクルーシブ」「エクスクルーシブスペシャル」「プレステージ」、3つのグレードに拡充された。車体下部には54.2リットルの高圧水素タンクが3本配置されているが、旧モデルよりも広いラゲッジスペースを実現。航続距離は世界最高水準の約826kmに達する。水素充填時間はわずか約5分で、ガソリン車に劣らない利便性を確保した。販売価格は、韓国で806万~880万円(日本円換算)に設定されている。
ヒョンデは自動車メーカーの枠にとどまらず、水素の製造、輸送、貯蔵、利用を包括する「HTWO」ブランドを構築している。今後は「ネッソ」を通じて日本市場に新たな選択肢を提案し、水素エネルギーへの関心を高め、持続可能な社会の実現を目指す方針だ。
日本市場での「ネッソ」投入は、2026年上期を目標に調整が進められている。日本でのFCV普及は、今後の水素インフラ整備の進展が鍵を握る。現在国内の水素ステーションは約170カ所だが、政府目標では2030年までに1,000基へ拡大を予定。市場環境の整備が進めば、今後のFCV展開に弾みがつくとみられる。
日常を変えるBEV「IONIQ5」実証で示された電池性能と耐久性
- IONIQ5
- コンセプトカーINSTEROID
一方、今回出展されたBEV「アイオニック5」や「インスター」は、すでに日本市場に投入されている。多様なライフスタイルに対応する幅広いBEVのラインナップは、電動モビリティの選択肢を拡大した。
「アイオニック5」は最大84.0 kWhの大容量バッテリーを搭載。一充電での航続距離は、約703 km(WLTC/RWD)を実現した。400V/800V対応のマルチ急速充電システムも搭載し、急速充電への適応力も高い。こうした充電性能の向上は、日本でのBEV普及における課題の一つである「充電時間の長さ」への対応にもつながる。
京都のMKタクシーでは、都市交通での営業車両として2022年から「アイオニック5」を採用している。1日の平均走行300km強を1日2回の急速充電を行いながら運用を続けているが、25万km走行した車両でもバッテリーのSOH(State of Health)は数パーセントの劣化にとどまっているという。こうした実績は、BEVの耐久性と運用面での実用性を示す事例として注目されている。
ヒョンデは、FCVとBEVの双方で電動化を推進し、再生可能エネルギーを軸とした次世代モビリティの実現を目指す。水素と電気、異なる技術領域の両輪でアプローチする同社の戦略は、走行距離や用途に応じた多様な選択肢を提示しつつ、再生可能エネルギーの活用拡大やCO₂排出削減を具体的に後押しする取り組みといえる。
(取材・文/平井千恵美)









