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Astemo、レアアースフリーの新型EVモーター開発 2030年実用化へ

2025/10/29(水)

自動車部品大手のAstemo(アステモ)は、BEV(バッテリーEV)向けに、レアアースを使用しない新型モーターを開発した。資源リスクの高いネオジム磁石に代わり、安価なフェライト磁石と、同期リラクタンスモーター技術を組み合わせることで、従来のモーターと同等の性能を確保。主駆動から副駆動まで幅広い出力に対応し、2030年頃の実用化を目指す。

EVの駆動モーターには、強力な磁力を生み出すためにネオジムなどのレアアース(希土類)を用いた永久磁石が広く使われている。しかし、レアアースは産出地域が偏在しており、地政学的なリスクや価格変動が安定供給の課題となっている。

この課題を解決するため、Astemoは従来型の永久磁石モーターの代替として「同期リラクタンスモーター」技術に着目し、新型モーターを開発した。同期リラクタンスモーターは、ローター(回転子)の鉄心の形状による磁気抵抗(リラクタンス)の差を利用して回転力を生み出す方式だ。Astemoは、磁力を伝える経路を複数層に分ける独自の「多層フラックス構造」を開発。これにより、強力な永久磁石を使わずに十分な回転力を確保することに成功した。

今回の開発では、BEVの駆動システム全体を最適化するため、2種類のモーターを提案している。一つは、常時駆動力を発生させる主駆動用モーターだ。こちらは同期リラクタンスモーターをベースに、安価で安定供給可能なフェライト磁石を補助的に埋め込むことで、180kWという高出力を実現。従来のネオジム磁石を使ったモーターに比べ、サイズ増加を30%に抑えた。

もう一つは、急加速時などにパワーをアシストする副駆動用モーターだ。こちらは磁石を一切使用しない純粋な同期リラクタンスモーターとした。これにより、主駆動モーターだけで走行している際に、副駆動モーターの磁石がブレーキとなってしまうエネルギーロスを防ぎ、システム全体の電力消費を抑制する。

Astemoは、このレアアースフリーの新型モーターを2030年頃に実用化する計画で、量産車に採用されれば世界初となる見込みだ。資源リスクを低減し、安定した供給を可能にすることで、BEVのさらなる普及に貢献していくとしている。この新型モーターは「Japan Mobility Show 2025」で展示される。

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