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『自動運転技術の概要と社会へもたらすインパクト』トヨタ自動車・鯉渕健氏

2016/9/30(金)


GPSの精度では足りない

よく「GPSで走るんでしょ?」と聞かれますが、それでは精度が足りません。GPS単独では最悪の場合、50mもズレが発生することがありえます。ジャイロや最新ソフトウェア技術を駆使しても、高精度の地図がなければ、最悪の場合のズレは10mまでにしか抑えることができません。このズレについては、安全性の観点から平均ではなく、最悪の場合を考えなければなりません。となると、やはり高精度の地図が必要になってきます。認識センサや高精度地図を組み合わせれば、最悪の場合でも横0.1m、縦0.5mまでズレを抑えることが可能になります。
地図には自車位置推定以外にもさまざまな役割を期待できます。まずは道路構造や交通ルールに加え、信号情報を取得する役割。ここの信号が青のときに自分はどっちに行っていいのか、そして、どこからクルマが来るのか、あるいは来ないのかということも含めて把握することができます。
また、3Dの高精度地図とセンサ情報との差分を取得すると、それが他のクルマや歩行者などであると把握できます。この地図(空間情報)を使うことで、漏れなく障害物を抽出するということが可能になります。こうして、他のクルマ、歩行者、自転車などを検出できれば、それらの行動特性を踏まえた上で自らの行動を決定するといった網羅的認識ができるようにもなります。

高精度地図を使うことで取得できる情報


2020年に向けた高速道向けシステム

先述のような高精度地図を完璧に整備するのはまだまだ現実的ではありません。高精度地図と一口に言っても
いくつかのレイヤーに分かれています。それは、①道路構造や交通ルール、信号機情報などを包括したレイヤー、②白線・道路境界・標識など位置不変な道路特徴のレイヤー、③走行軌跡等の走行経路のレイヤー、④地表面形状のレイヤー、⑤樹木・標識・構造物などの常設静止物の5つです。この内、③~⑤のレイヤーのレベルになると既存の手法や仕組みでの整備は困難で、地図自動生成技術等が必要になります。
一方、①と②のレイヤーまでであれば、自動車専用道路であれば従来手法での整備が可能であり、2020年までに要件を満たす目算がついています。もちろん、更新の効率化という面で課題はありますが、トヨタではこの2つのレイヤーの高精度地図に基づき、2020年をめどに高速道路での自動走行を実現すべく、走行実験を行っています。
この自動車専用道路向けのシステムでは、クルマのバンパー内にLean LiDARを搭載して4本のレイヤーをもとに、インターチェンジから高速道路本線への合流、本線の走行、ジャンクションにおける分流、本線からインターチェンジへの分流といった各局面で適切な動作を行います。実験車の構成も早期市販化を目指した量産化可能なものになっています。ただし、2020年想定のこのLiDARは垂直画角が狭く、認識アルゴリズムでの新たな工夫が必要など課題も残っています。
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