【CES 2025】「モビリティを革新」中国Zeekrの新モデルと海外戦略
2025/1/29(水)
中国自動車大手、Geely傘下のプレミアムEVメーカーZeekrが、CES 2025で画期的な技術と新モデルを披露した。同社は半導体大手のQualcomm Technologies、NVIDIAと協業。最先端の技術を革新的なコックピットシステムや、持続可能なモビリティエコシステムへの挑戦に活用する。
Zeekrが次世代テクノロジーで描く未来のモビリティ
Zeekrは、CES 2025において、Qualcomm、NVIDIAとの戦略的パートナーシップを発表。「持続可能でインテリジェントな交通を再定義する」との意気込みを示した。その代表例が、「次世代Snapdragonコックピットプラットフォーム」と「NVIDIA DRIVE AGX Thor」を活用した自動車づくりだ。
Snapdragonプラットフォームは、インフォテイメントの強化、ユーザーの好みに合わせた可変ダッシュボード、効率的なOTA(Over The Air)アップデートに貢献する。Zeekr副社長のSimon Jiang氏は「Qualcommとの協業はこれまでにない運転体験をもたらすだろう」とコメントした。プラットフォーム搭載のモデルは順次発売される。
NVIDIAの車載コンピューター「DRIVE AGX Thor」を用いた自動運転システムは25年内に搭載される予定。「最新の自動運転・駐車を可能とし、Zeekr車の安全性と運転効率が大きく高まる」という。
欧州事業責任者のジョバンニ・ランフランキ氏はCES会場で行った講演で、「Zeekrの車は単なる移動手段ではなく、オーディオシステムにも、家族の団らんの場にもなる」と強調。Qualcomm、NVIDIAとの協業や注力する生成AI活用によって「一人一人のユーザーの感情とつながるペルソナライゼーションもする」とも明かした。
また、Zeekrは独自に開発した「SEA(Shared Electrification AI・Sustainable Electrification Architecture)」車両アーキテクチャーについて紹介した。ソフトウェア開発期間を半減し、スマートフォンのようなOTAアップデートを可能にしたという。さらに、Zeekrと同じくGeely傘下のボルボなど、他のプレミアムブランドとも技術を共有することで、イノベーションを加速させる。
21年設立のZeekrは急速な成長を遂げた。過去3年間で40以上の海外市場に進出し、24年にニューヨーク株式市場で上場。「プレミアムEVの販売台数で世界一」とする24年の世界販売台数は前年比87%増の約22万台に達し、25年は32万台の販売を計画している。
多様なニーズに応える革新的な新モデルラインナップ
CES 2025で発表されたZeekrの新モデル3台は、同社の考える自動車の未来像を見せた。「001 FR」、「009 Grand」、「Mix」の3モデルは、すべて800ボルトのモデル。それぞれ異なるセグメントのユーザーニーズに応える革新的なBEVの位置づけになる。
スポーツセダン「001 FR」は、まさに電気自動車の性能限界に挑戦するモデル。加速性能は、わずか2.02秒で時速100キロに到達し、テスラ「モデルS」を上回る性能を実現しているという。高性能と洗練されたデザインを融合させ、ドライビングスポーツの心を掴む存在感を放っている。
プレミアムMPV「009 Grand」は、家族向けモビリティの新しい基準を示す。一般的な400ボルトシステムとは異なり、2基のモーターを備える800ボルトパワートレインにより、時速100キロ到達に3.9秒。「ポルシェ911を超える」とする走行性能は、MPVの常識を覆す。
SUV「Mix」は、「車室の有効効率を93%まで高めた」多様な家族のライフスタイルに対応するクルマ。25年前半に欧州など世界各国で発売予定で、グローバル市場での展開が期待されている。
これらのモデルに共通するのは、800ボルト対応システムによる優れた加速性能と充電効率。Zeekrが開発した「Golden Battery Gen2」リン酸鉄リチウムイオン電池は「10分充電で300キロ走行可能」の性能を誇るという。
グローバル展開とZeekrエコシステムへの挑戦
Zeekrは新モデルと同じく800ボルト対応のSUV「7X」を25年前半に欧州ほか世界市場で発売予定。合わせて25年中に豪州、ブラジル、メキシコ、マレーシア、シンガポール、タイ、UAEの7カ国に1,000基の充電ステーションを設置する計画を打ち出している。
第3世代の超急速充電器(中国国内に3893基を設置済み)は最大800キロワットの充電能力を持つ。BEV普及における最大の課題である「充電の利便性」の解決に貢献できる施策。
また、米グーグル傘下の自動運転Waymoと共同開発したロボタクシー「RT」を25年内にWaymoに対して本格的に供給する。Waymoとの自律型ロボタクシー「RT」の共同開発は、Zeekrのモビリティエコシステム構築における戦略的パートナーシップの象徴だ。
Zeekrの一連の発表は、単なる自動車メーカーの枠を超えた、テクノロジー企業としてのビジョンを示した形になった。人工知能、電動化、自動運転技術を融合させ、ユーザー体験を根本から変革しようとする姿勢は、自動車産業の未来に新たなデザインを提案している。