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「現代の魔法使い」が語るクルマの未来 【落合陽一氏 インタビュー】

2017/11/14(火)


●自動運転が何を変えるのか

─自動運転が登場することで何が変わると思いますか?

文化が明らかに変わりますね。駅チカという概念が変わるからです。今の日本は、駅に近いほど地価が高くなっています。それは、駅を通って人が移動するからです。コンパクトシティといって、駅の近くにまとまった街をつくろうとしています。

しかし、自動運転が登場すれば、特に地方での移動は駅中心ではなくなるので、地価がリセットされます。どこに中心地とその影響圏があってもよく、その間を移動する自動車が重要になります。さらに自動運転は、「ハンドルから手を離す」「もしもの時は対応する」最後は「もしもの時も対応しない」というツールになるはずなので、何歳でもクルマを運転できる社会がくると思います。

 

 


 

─最近では、移動そのものの必要性がなくなるのではないかとも考えてしまいます。

テレイグジスタンスが出現してきているので、移動の必要もなくなりつつあります。人が動くことと、人の仮想体であるテレイグ体が動くということは裏返しです。

仮想体になっていれば、どこでも行けます。空も飛べるかもしれない。移動の9割が打ち合わせのためという人も多いと思います。今までの問題は、ディスプレイなどの板に貼り付いた人間を見ていたことです。VRゴーグルをかけて、空間的にセパレートしている人がコミュニケーションをすれば、打ち合わせは対面時と区別がつかないものになります。

では、これとモビリティをどう組み合わせるかが重要になってきます。自動運転では責任の所在が問題になり、人間が動作主体じゃないと責任がとれないとなったときに、VRを使って遠隔からラジコンのようにクルマを操作して人を運ぶ、在宅タクシーのようなものが考えられます。

自動運転でほとんど走行できますが、責任をもって監視する人が必要になります。これがかなりキーになってくるのではないかと思っています。

 

●人とクルマの関係性のこれから

─クルマは、ワクワクを提供できると思いますか?

ワクワクする必要はないと思います。今までは、サービスas所有であり、クルマを買って所有することが前提だったので、ワクワクするサービスかつ製品を売らなければいけませんでした。

しかし、これからはハードウェアとしてのクルマと、サービスとしてのクルマが切り分けられる時代になります。UBERに乗るときは、定時性(正確さ)と安全性が要求されます。サービスにはワクワクは求められていないのです。この前提の中で、ワクワクするモノを売るとなると、Appleのような会社を目指すことになるのだと思います。

 

 


 

ただ、私はワクワクするようなクルマをIT社会で造るにはどうしたらいいかということも研究しています。そのためには、ラグジュアリーなデザインかつ、情報機器と物質が絡みつくようなデザインが必要になります。お金を払ってまで欲しいと思われるような、「グッとくる」素材、Computationalな素材が求められています。

例えば、情報を表示するためにガラスと液晶のディスプレイをはめたくないというときに、Fairy Lightsによって空中に映像を出すということを考えています。このように、情報を表示するのに「グッとくる」素材を追求しています。

 

─所有とサービスを分けて考えなければいけないということですね。

例えば、家族が安全に安心して乗れて、大きいモノが積めてコンパクトに収納でき、さらに普段はランニングコストがかからないようにするためには、ソフトウェアとして所有するのがいいですよね。契約して、毎週違う新車が自動で家の前に止まったり、都内のタクシーぐらい使えるカーシェアリングが実現すれば、所有欲は下がっていくと思います。

しかし、こうなってしまえばサプライヤーの指針は明らかになります。値段が高くてもいいから、とにかくあっと言わせるモノを造ることが大事になります。

このような、プライベートドライバーに提供するクルマはトヨタが強いのだと思います。プリウスなど燃費がよくて安全なクルマは所有欲をくすぐりますよね。

 

─サービスとしてのクルマは具体的にどんなものになると思いますか?

トヨタのような大きい会社であれば、トヨタフォンを絶対に出すべきだと思います。スマートフォンで、クルマが鍵付きで自動で呼べてオートロック解除もできるものです。

トヨタの売上を考えれば、100万台以上は絶対売れると思います。メーカームーブメントの本質は、参入コストが安くなれば、どんなメーカーがどんな製品を造ってもいいということだと思います。

スマートフォンであれば、アプリケーションレイヤーを必要とします。日本は、この層を持っていないことが問題なので、通信とミドルウェアをカバーするトヨタフォンを造れば、アプリケーションレイヤーに入っていくことができるのです。

 


 

─クルマは所有していますか?

所有していません。

ただ、UBERは頻繁に利用しています。日本ではタクシーばかり使っています。研究室ではよくクルマの研究をしているのに、なんでクルマに乗らないのかとよく聞かれますが、そこが一番重要なのです。

ずっと力説してきましたが、ようやく日の目を見てきました。これから、クルマを所有していなくて免許も持たないけれどクルマで移動するという時代がくることは明らかです。車庫入れなどの運転技術よりも、呼び出したらすぐに到着するということが重要になります。

このように、自分では運転しないからこそ、何が便利なのか考えていかなければいけない世の中が今後来るのだと考えています。

 

 

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