フィリップス・ジャパンら、3例目の医療MaaSを埼玉県戸田市で運用開始
2022/2/24(木)
株式会社フィリップス・ジャパン(以下、フィリップス)と医療法人慈公会 公平病院(以下、公平病院)は、オンライン診療をサポートする新しいヘルスケアモビリティを共同で開発、2022年2月より運用を開始した。2月17日付のプレスリリースで明かしている。
フィリップスは、ヘルスケアモビリティ事業として、2019年に長野県伊那市、2020年に青森県青森市と協業し、医療MaaSを開発した。3台目となる今回の「公平病院モデル」の特徴は、病院所有の車であることと都市部で運用することだ。慢性疾患患者や移動制限のある高齢者に対する長期的かつ定期的な疾患管理のために実施する。公平病院は、地域のかかりつけ病院としてプライマリーケアから緩和ケアにいたる包括的な診療を提供している。外来・入院だけでなく在宅診療にも取り組み、専門医によるがんや糖尿病などの疾患管理やヘルスケアプロフェッショナルによる生活習慣の改善にも力を入れている。
しかし、長期的・定期的な疾患管理が不可欠であるにもかかわらず、仕事が忙しくて時間が取れない人、移動制限のある高齢者など、通院が困難な患者は決して少なくない。患者家族にとっても、1日がかりになってしまう通院の付き添いには大きな負担がかかるため、負担軽減の必要性が求められていた。オンライン診療は、そのような患者への一助となるが、インターネットやスマートフォンの利用が難しい高齢者も多くいるため普及には時間を必要としている。
フィリップスと公平病院は、看護師がヘルスケアモビリティで患者宅を訪問し、オンラインで患者と病院にいる医師をつなぐことで診療が受けられるD to P with N(Doctor to Patient with Nurse)による仕組みづくりに至った。看護師が運転しやすいようにファミリーカーサイズの車両を導入することで、利便性も高めている。
使用車両には、遠隔聴診器、看護師の視線を医師が遠隔で確認できるウェアラブルカメラを導入し、より対面での診療に近づける工夫を施している。平時だけでなく有事の車両利用が期待され、災害時には避難所などでの診療対応も可能にするため、フィリップスのAED「ハートスタートFRx」なども搭載した。さらに、給電システムを備えたハイブリッド車にすることで、診療に必要な電源も確保している。
また、公平病院のある戸田市は、物流・交通網が発達しており、コミュニティバスが細かく張り巡らされている。ヘルスケアモビリティで患者宅を訪問するにもアクセスしやすく、インフラ網を活用したソリューション展開が期待される。
なお、フィリップスと公平病院は、戸田市全域の健康寿命の延伸や健康まちづくりに向けた取り組みを推進してきた。今回、さらに戸田市を迎え、今後は3者でさらなる地域医療課題や社会課題に向けた施策を展開していく予定だという。そして、実証を進めながら診療領域を検討・拡大させ、平時だけでなく有事にも対応できるように地域の医療ニーズに柔軟に対応していくと述べている。
▼関係者のコメント
■埼玉県戸田市 戸田市長 菅原 文仁氏のコメント
「東京都に隣接する戸田市は現在も人口増加が進んでおり、埼玉県内で平均年齢が最も若いという地域特性があります。一方、今後急速に高齢化が進むことが予想されており、地域医療体制の充実・強化が必要不可欠であると考えています。戸田市は、この医療MaaSの取り組みが地域医療の可能性を広げると考えており、まずは公平病院で運用を開始するモビリティの実証に参画し、今後は3者間で協議を重ね、互いのリソースを最大限に活用しながら、地域医療体制の充実を推進していきます。」
■公平病院 病院長 公平 誠氏のコメント
「誰も取り残さない医療を実現するためには、医療アクセスへの多様な選択肢を患者に提供する必要があり、その一つがヘルスケアモビリティだと考えています。病院のある戸田市は今後10-20年で高齢化を迎え、今以上の医療課題に直面していきます。未来の地域医療を見据えて今から取り組み実証を重ねることで、来るべき医療課題に柔軟に対応してまいります。」
■株式会社フィリップス・ジャパン 代表取締役社長 堤 浩幸氏のコメント
「公平病院と開発した本車両は平時にも有事にも活用できる新たなモデルとなりました。開発には、車両本体、内外装架装、車両機器、ITシステムなどを各病院や自治体のニーズに合わせていかようにも組み合わせることができるため、ヘルスケアモビリティはとても汎用性の高いソリューションだと考えます。今後も引き続きモビリティを起点とした地域医療に貢献してまいります。」
(出典:フィリップス Webサイトより)