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社名変更「一番に名前挙がる会社へ」SOMPOダイレクト損害保険 中川社長インタビュー

2024/11/18(月)

社名変更を機にSOMPOダイレクト損害保険の事業変革を中川勝史社長に聞いた

社名変更を機にSOMPOダイレクト損害保険の事業変革を中川勝史社長に聞いた

セゾン自動車火災保険は10月1日に社名を「SOMPOダイレクト損害保険」に変更し、「SOMPOグループのダイレクト型保険を担う中核会社」であることを社名から明確にした。「おとなの自動車保険」で知られる同社は、商品名だけでなく「ダイレクト保険といえば、SOMPOダイレクト」と人々の頭に浮かぶ、日本を代表する保険会社を目指す。

4月、経営トップに就いた中川勝史社長は2024年度から26年度の3カ年の中期経営計画を中心となって策定。事業の変革・強化に全力を注ぐ。SOMPOダイレクト損害保険の展開を聞いた。

オーガニックな成長を推進、日本を代表するダイレクト保険会社目指す新中計

SOMPOダイレクト損害保険の新中計では、「ダイレクト保険会社のオーガニックな成長」と「安心・安全・健康のサービスをお客さまにお届けするSOMPO グループの顧客接点となる」ことを目指す。その先の目標に「日本を代表するダイレクト保険会社」がある。

「オーガニックな成長」「SOMPOグループの顧客接点」「日本を代表するダイレクト保険会社」に向けた重要施策が2つあると中川社長は語る。「オペレーションモデルの変革」と「データドリブンな事業運営の確立」だ。2つの施策を着実に実行し、「どんな状況でもお客さまに選ばれる事業体制」を構築していく。新体制のかじ取りを中川社長に聞いた。

――中計期首の年度に、セゾン自動車火災保険から社名を変え、本社も損害保険ジャパン本社ビルへと移しました。新体制の戦略についてうかがえますか。
「社名変更があってもSOMPOグループ内で当社が果たす役割が大きく変わることはありません。これからお客さまのニーズや、社会環境がどのように変わっていくのか明確には予測できない中で、お客さまに選ばれ続ける商品やサービスを提供し続けること、事業体制をきちんと磨き上げることが特に重要で、『オーガニックな成長』、保険という事業をいかに伸ばしていけるかに取り組んでいきます」

――「オーガニックな成長」に向けた取り組みを教えてください。
「2つ必要であり、1つはオペレーションモデルの変革です。当社には1000人弱の社員がいて、その約半分が損害サービスに関連する部門に、4分の1がコンタクトセンター関連の部門で勤務し、つまり4分の3はお客さまに商品やサービスを直接提供する場にいます。オペレーションを見ていると、特に損害サービス部門においては各人のスキルに頼りすぎる部分があると改めて思っています」
「海外の会社も含めていろいろな事例を見聞きすると、日本とは全く違う発想や仕組みによる成功例がいくつもありました。参考にしながら生産性やサービス品質を高めていきたいと思い、取り組みを始めているところです。ダイレクト・ネット型の保険ということもあり、お客さまが期待するものには価格という要素も大きく、ニーズに応え続けるには事業効率を高めていくことが欠かせません」

業務全体を見直してDX、生産性20%向上へ

――「人のスキルに頼りすぎ」な現状からDXも使ってスキルの標準化や、全体のレベル向上を進めるお話かと思うのですが、もう少し細かいところもうかがえますか。
「1人の社員が担う業務のうち、技術を投入することで省力化や自動化ができる領域が多分にあり、その負担を減らし、「その人ならでは」の業務に集中する。こうして個々のレベルを高いところに引き上げたり、そのスピードを速くしたりということができると考えています」
「もう1つ、業務全体の設計を大きく見直すことがより高い効果をいろいろな領域で発揮すると考えています。業務というのはそれぞれつながっていて、一部だけ切り取って自動化しても全体的な成果発揮に至らないというのは、ままあることです」
自動化を進め、各人の集中すべき業務レベルを高く速く引き上げる

自動化を進め、各人の集中すべき業務レベルを高く速く引き上げる


――オペレーションを大きく変えるには何が必要になるでしょうか?
「オペレーションの基盤となるシステム見直しが1つあり、今年度は損害サービス部門のシステムを米ガイドワイア社の「ClaimCenter」という製品に変更しました。クラウド版を導入したのは日本で当社が初めてで、システム変更の柔軟性や、新しい技術を取り込む上での拡張性を兼ね備えています。今後目指す姿を実現する上で大きな強みとなります。システムを使いこなして、中計期間でオペレーションの生産性を今よりも20%以上高めようとしています」

データ利活用を全社で システム投資を拡大

――成長する上で欠かせないもう1つの要素についてご説明をお願いします。
「データの利活用、『データドリブンな事業運営の確立』です。大きく分けて2つ、保険料のプライシングと、マーケティング・プロモーションの領域があります。1つ目のプライシングでは海外のグループ会社で実績を残してきたメンバーが主導していて、2つ目の領域についてはデータ利活用に長けた人材を集めたDX推進部データチームが動いて分析から利活用までの知識を全社に浸透させる取り組みをまさに始めたところです」
「損害サービスやコミュニケーション系のシステムも含め、ここ数年でシステム投資額を従来の2.5倍に増やして、ビジネスの実態がデータで可視化されてきています。オペレーションとデータ利活用という、ネット型保険を扱う会社に必要不可欠な能力を磨き上げ、お客さまに合った商品、サービスを提供する力を強くしていきます」

全社員が挑戦、対話でつくる”新しい仕事”

――大きな課題で、実現する上で苦労も多そうなどと思います。
「社員全員でチャレンジし、全員の力を高めていかなければならないと思っています。社員にとって仕事のやり方を変える、社名が変わる、本社が変わるというのは大きな変化なので、なぜそう考えたのか、何のために、何をしたいと考えているのかという私の思いを、全国の拠点をすべて回り、社員に直接説明し、質問を受け、答えてというタウンミーティングを今年度20回ほど実施しました」

――社員とのコミュニケーションを大事にするということでしょうか。
「そうですね。業務全体の見直しをやっていくと社員一人一人にとって役割や仕事の内容が大きく変わるはずなので、だからこそ丁寧に説明する必要があります」

――「SOMPOグループの顧客接点」、グループ間連携についてはどんなことをお考えですか。
「連携を強めることでお互いの長所やノウハウの相乗効果を出せると思っています。当社はお客さまと直接の接点を持つ会社です。例えば当社のお客さまに対してSOMPOグループ全体で考えていろいろな商品やサービスのご提案なども含め、新しい価値や体験価値をご提供できる、当社の存在感も高めていけるはずです」
グループの連携例(SOMPOホールディングス新中計説明資料より)

グループの連携例(SOMPOホールディングス新中計説明資料より)


規模追うより「ダイレクト保険ならSOMPOダイレクト」を志向

――「日本を代表するダイレクト損保会社」も目指す姿にあります。もう少しイメージを教えてください。
「規模や収益力をいくらにする、というのではなく今、社内で伝えているのは『日本のダイレクト保険会社といえば?と聞かれたときにSOMPOダイレクトと一番にお客さまに言っていただける会社をみんなでつくっていきたい』ということです」
「全社で意見を出し合って今回、ブランドスローガンを『いつもにそっと もしもに安心』と変えています。お客さまの日常に寄り添う関係を作りたいという思いがあります」

――お話しいただいた取り組みを重ねていった先、2030年や40年のSOMPOダイレクト損害保険の姿をご紹介いただけませんか?
「まさに話していったことを築き上げていければ、SOMPOダイレクト損害保険としてずっと価値を提供し続けられる、お客さまに選ばれ続ける存在として確立できると確信しています」

EVサービス拡充、どんな変化にも応える現場力を磨く

――自動車業界では「百年に一度の変革」「CASE」が言われ続ける中、特に自動運転・電動化の部分で自動車保険はどのように変わるでしょうか。
「自動運転が普及すると事故が劇的に減るだろうといわれていますが、結局は現行法の中での賠償責任となり、過渡期も含めて保険商品への影響を断言することはできないと思います。だからこそ、どんな変化があっても対応できる力をつけていくことがまず大事だと考えます」
「直近では給電のロードサービスも含めてEVのサービスを拡充するなど、足元の変化の中でお客さまが求める、お客さまに安心していただける領域についてはしっかりと対応していきます」


――自社の強みをどうとらえていますか。
「2011年にダイレクト自動車保険に当時としては最後発で参入し、年齢条件がない保険やALSOK駆け付けサービスといった業界初の商品・サービスを導入してきた会社で、発想の豊かさ、斬新さがあります。一方、歴史を重ねて規模も大きくなる中で前例踏襲の雰囲気を感じている部分も少なからずあり、強みを生かしてチャレンジすることを続けていきます」

――最後に、社名変更や事業変革に対する抱負、意気込みなどをお話しください。
「これから計画を実践するに当たって社員全員で取り組んでいきます。社員のいろいろな話を聞いて、私の思いを伝えて、お互いに支え合い高め合っていきます。私の好きな言葉が『現場力』でして、もっともっと現場力のある強い会社をみんなでつくっていきます」


中川勝史(なかがわ・かつひと)氏=1995年安田火災海上保険(現 損害保険ジャパン)入社、21年4月セゾン自動車火災保険 執行役員 お客さまサービス部長、23年4月取締役副社長執行役員 兼 損保ジャパン 執行役員(現職)、24年4月セゾン自動車火災保険 社長、73年3月19日生まれ

セゾン自動車火災保険では「着任してからの3年間、コンタクトセンター、損害サービス部門を担当し、改めてダイレクト保険でお客さまと直接つながり、ニーズを理解することの重要性やそれによって生まれるビジネスの可能性を実感した」と話す。

「現場力」の他に好きな言葉が「ケ・セラ・セラ」。一般に使われる「なるようになるさ」の意ではなく、「人生は自分の思いと発言で変えられる。自分次第だ」と解釈している。

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