伊藤慎介の “Talk is Chap” 〜起業家へと転身した元官僚のリアルな産業論 第4回 起業未経験者がベンチャー起業をあおるのはどうなのか?
2017/11/3(金)
起業をあおるよりも起業家が生きていきやすい社会にすべき
ここまで書くと起業を考えている人は二の足を踏んでしまうだろう。私の場合、電気自動車やそれを取り巻く新しい世界を創りたいという強い気持ちがあり、そのために役所を辞めて新しいことにチャレンジしたいという気持ちと、何となく起業に対するあこがれは持っていた。だが、起業することがどれほど大変なのか、特にお金を稼いだり集めたりすることの大変さについては十分な事前検証を行わないまま踏み出したというのが実情である。
今回のコラムでは会社経営のための収入確保や事務手続きに焦点を当てたが、起業するメンバーとの関係性、資金調達に関するベンチャーキャピタルやエンジェルとの関係性など、ここでは取り上げていない多種多様な苦労があることも付け加えておきたい。
つまり、本当に起業するのであれば、世の中を変える素晴らしいアイデアだけでは不十分なのだ。一緒に苦難を乗り越えてくれる仲間、そしてどんなに大変なことも何とかして乗り越えようとする覚悟と責任感が必要不可欠なのである。
ピッチイベントの開催、起業時の資金補助などによって無責任に起業をあおるよりも、起業して収入に困っているベンチャーに対して受注を出す、自らの組織が持っているリソースをベンチャー企業に対して提供する(モノ、ヒト、カネ、場所、情報など)、ベンチャーキャピタルからの資金調達がしやすいよう会社としての協力姿勢を明確化するなど、起業家が少しでも夢を追い求めやすいような協力をすることの方がよっぽど意味があると思う。
今の日本は起業家にとってまだまだ生きづらい社会なのだ。アメリカのようにベンチャー企業が大企業として成長できる社会にしていきたいのであれば、起業家が生きていきやすい社会にしなければならない。そういう社会の実現のために多くの社会人が本気で協力すれば、世の中を変えたいという意思のある起業家は自然と増えていくだろう。
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