豊田合成、人とスキンシップするクルマ 感情表現にTポーズまで!?
2019/10/31(木)
10月24日~11月4日にかけて行われた東京モーターショー。豊田合成は、CASE対応技術や、ゴム・樹脂製品の専門メーカーとして提案する将来のインテリア・エクステリアのコンセプトモデルなどを紹介した。
主力製品であるフロントグリルモジュールはカメラやミリ波レーダなど、周辺状況を認識するセンシング機能や運転状態をLEDの光で周囲に伝えるサイネージ機能などを搭載。これらの機能を使い、自動運転の時代に、HMIサインとして人とクルマをどのようにコミュニケーションさせるのかを提案した。展示されているフロントグリルモジュールのクルマの前に立つとカメラが捉えた人はピクトグラムで表される。担当者おすすめのTポーズ(※トヨタのT)をすると、クルマもポーズを認識してTポーズで返してくれた。商品開発部 外装開発室の近藤武司チームリーダーは、「グリルやバンパー周りの部品で、自動運転に対してどう貢献するかを考えた時に、コミュニケーションのツールとして使えるのではという発想に至った。ドライバー不在の自動運転では、人が横断歩道を渡る時にコミュニケーションに困る。クルマ側も、人の動きを見て『渡ってください』というサインが出せると、人とコミュニケーションができる」とサイネージの開発経緯を語ってくれた。
豊田合成では、トヨタが9月に発表したオリ・パラ向けの車両であるAPMのサイネージを提案しているという。「例えば、新国立競技場の駅からオリンピック会場のエントランスまで、人とクルマが同じところを移動する場合、安全に運行するためにサイネージで知らせたり、気づかずに前を歩いている人にクラクション鳴らした際には『ごめんね』という顔を表したりする。クルマの意思が確認できるような、もっと人とクルマが近づくところを提案していきたい」(近藤氏)。サイネージのコミュニケーションは、言語も不要なため、外国人が多く訪れることが予想されるオリ・パラにもぴったりだ。
将来コンセプトのブースでは、ゴム・樹脂技術を活用した柔らかな車体にAIを搭載し、スキンシップによりコミュニケーションができる相棒のようなクルマ「Flesby III」を披露した。2030年には相棒のようなAIを一人ひとりが持っているということを想定。クルマに乗る際にはドアノブがポコっと膨らみ、立体的にAIが現れる。クルマにAIが憑依して、実際に触れることでAIとのコミュニケーションを楽しめるというコンセプトだ。
エクステリアには、歩行者との接触時にも衝撃を吸収する安全機能や、走行シーンに応じて車体形状を最適化する省エネ機能などを搭載している。インテリアコンセプトには、柔らかく包み込むシートや、シーンに応じて色合いが変わるLED照明などで安らぎを与えるファーストクラス機能などを備えている。
デザイン開発部の先行デザイン室の荒川哲也グループリーダーによると、「高分子メーカーなので、クルマが柔らかくなることで新しい価値が生まれるというのがテーマで開発を進めてきた。通常、シリコン材を使うと伸び縮みはするけれど、ベタベタした素材になるので、使えない。今回の素材は表面をサラサラさせ、開発レベルだが研究成果を展示している。光も透過するので、コミュニケーション手段としても使える」という。
CASE 対応技術としては、フロントグリルモジュールやジェイテクトのステアリングシステムと連携したハンドルモジュール、次世代セーフティシステムとしてシートに一体化したエアバッグを紹介。要素技術の体験コーナーでは、電気で伸縮する次世代ゴム「e-Rubber」の振動を用いて、多彩な触覚を擬似的に再現するハプティクス技術「Commu-Touchpad」や、高出力・高周波の電力を扱える「縦型GaNパワー半導体」を用いて、離れた場所へワイヤレスで電気を送る技術「e-Float」も展示した。