豊田合成、小型FCVコンセプト初公開。着脱式で水素利用の拡大へ【JMS2025】
2025/11/12(水)
ジャパンモビリティーショー2025(以下、JMS2025)では、水素エンジンや水素トラック、さらには家庭用エネルギーとして水素を活用する模型など、多様な展示が行われた。政府も2024年5月に水素社会推進法を成立させ、水素供給拠点の整備を後押しするなど、官民一体で水素社会の実現を進めている。
一方で、水素の汎用性にはまだ不透明な部分も多く、特に電気と比較すると現時点での応用範囲は限られている。こうした中で、豊田合成は水素の新たな可能性を提示するコンセプトモデルを披露し、来場者の注目を集めた。
一方で、水素の汎用性にはまだ不透明な部分も多く、特に電気と比較すると現時点での応用範囲は限られている。こうした中で、豊田合成は水素の新たな可能性を提示するコンセプトモデルを披露し、来場者の注目を集めた。
カートリッジで走る小型FCV「FLESBY HY-CONCEPT」
今回の豊田合成ブースでは、水素で走る燃料電池車「FLESBY HY-CONCEPT(フレスビー・ハイコンセプト)」が初公開された。ジャパンモビリティーショーの前身である東京モーターショー時代から「Flesby II」や「Flesby III」を発表してきた豊田合成だが、今回の新モデルは黒を基調に赤のラインをあしらい、従来モデルとは一線を画すデザインとなっている。一方で、丸みを帯びたフォルムにはシリーズのDNAが息づいている。くわえて、同ブースでは、動力源となる水素カートリッジも併せて展示された。1本あたりの重量は約8.5kgで、車体には3本を装着可能。「10kgを超えると持ち運びが難しい」との理由から、使いやすさを重視して重量を設定したという。
スタンドやスクーターも展示、水素の利便性を拡張
水素カートリッジの扱いやすさを補完するため、豊田合成は専用スタンドと水素スクーターも併せて展示した。スタンドは今回、展示用の試作モデルであり、今後は充填機能を備える計画だ。現時点で国内の水素ステーションは限られており、利用環境の整備が課題とされている。こうした背景を踏まえ、持ち運び型カートリッジとスタンドによる充填システムは、充填時間の節約からも注目されるはずだ。
一方、水素スクーターは、カートリッジを脱着でき、取り外した状態では折りたたんでコンパクトにすることも可能となっている。さらに、FLESBY HY-CONCEPTにも搭載できるよう設計されているため、FLESBY HY-CONCEPTで目的地そばの駐車場まで移動し、目的地までのラストワンマイルをスクーターで乗り換えといった使い分けをすることも可能だ。
- 水素スタンド
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水素スクーター
カートリッジ装着時
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水素スクーター
カートリッジ脱着時
ワイヤレス給電スケートボードや家庭利用にも展開
水素カートリッジはモビリティ用途にとどまらず、家庭用電源や調理器など日常生活への応用も想定されている。 1つの応用例が、同社ブースで展示した電動スケートボードだ。このコンセプトモビリティは、ワイヤレス給電技術を採用し、FLESBY HY-CONCEPTに装着することで自動充電を行う仕組みだ。特筆すべきは、カートリッジ装填とワイヤレス給電の双方を展示した点だ。水素スクーターでは、カートリッジを支える構造が必要となるため、小型家電などへの搭載は難しい。しかし、この電動スケートボードは、燃料電池車をいわば充電インフラと見立てることで、小型電気製品でも水素エネルギーを活用できる可能性を示した。新たなエネルギー利用の選択肢を提示した展示といえる。
水素サウナにも採用、トヨタグループの技術連携
水素カートリッジは、トヨタ自動車が6月に発表した水素サウナにも使われている。この水素サウナは、JMS2025の「Tokyo Future Tour 2035」で公開された。豊田合成が提案するのは、単なる水素自動車ではなく、水素を“携帯可能なエネルギー”として生活に取り込む未来像だ。水素社会の実現にはインフラ整備やコスト低減などの課題が残るが、こうした発想が普及への一歩を後押しする展示となった。
- 水素サウナ
- 水素カートリッジ

















