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スマホ片手に自由な日本の旅を WAmazingが見据えるMaaSと地方交通の姿とは?

2020/9/29(火)

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(写真提供:WAmazing)

新型コロナウイルスの感染拡大により痛烈な打撃を受けた観光業界。特に外国からの渡航が制限されたため、インバウンド需要は著しく減少した。そんな逆境にあって「今後もインバウンドに特化したサービスは成長分野」と信じて挑戦を続ける企業がある。

インバウンド向け観光プラットフォームサービスを提供する創業4年のスタートアップ、WAmazing 株式会社(以下、ワメイジング)だ。「日本中を楽しみ尽くしてもらうために」と掲げる彼らの取り組みについて、また、外国人旅行者視点だからこそ見える日本の交通課題やモビリティサービスへの期待について、代表取締役社長の加藤 史子氏に話を伺った。

インバウンド向けスマホアプリ「WAmazing」

――御社のサービスについて教えてください。
加藤氏:ワメイジングは訪日外国人旅行者、いわゆるインバウンドに特化した観光プラットフォームサービスを展開しています。現在は香港・台湾・中国を中心に、ASEAN諸国 やオーストラリア、北米でもサービスを展開中です。スマートフォンアプリ「WAmazing」は、現在、英語と中国語(中国簡体字、台湾繁体字、香港繁体字)に言語対応しています。

訪日外国人旅行客は1回の旅行で、1人あたり約15万円消費すると言われています。主な使い道は、宿泊、飲食、施設への入場料、買い物、そして交通の5領域です。ワメイジングはまず飲食以外の4領域でサービスを提供しています。

私たちは「日本中を楽しみ尽くしてもらうために」をミッションに掲げています。外国人旅行者が日本を旅行している時に使える情報を提供し、宿泊施設やレジャー施設等の予約・決済まで完結するワンストッププラットフォームを目指しています。

――特に多い利用客はどの層なのでしょうか?
加藤氏:2017年1月のアプリリリース以降、台湾や香港、中国などの利用者を中心にサービスを提供しています。このアジア圏の特徴の1つが、日本以上にスマートフォンが普及している点です。

日本はスマホ保有率が約7割と言われていますが、中国や韓国、香港では、ほぼ100%に近い割合です。その中でも若年層は、いわゆるデジタルネイティブと言われる世代で、スマホからSNSで情報収集し、消費行動を決定しています。

このような層に対して、デジタルマーケティングを中心としたスマホ中心の旅行サービスを展開しています。
※インタビューを行った2020年9月時点では、海外からの旅行客がいないこともありサービスを一時停止している。

スマホ片手に自由な旅行ができるように

――日本を訪れた旅行者は、具体的にどんなサービスを受けられるんでしょうか?
加藤氏:ワメイジングのアプリをインストールして個人情報を登録していただいた方に無料のSIMカードを提供しています。観光庁の調査によると、外国人旅行者が旅行中に困ったことの1位が「無料の公衆無線LAN環境が整っていない」と、ネット環境に困っている方々が多いことから始めました。

この配布サービスは口コミで徐々に広まり、新型コロナが感染拡大する直前までは、平均して1カ月に1万人会員が増え続けていました。外国人の旅行者はグループで日本を訪問する場合が多いので、1人が無料SIMカードのことを知ると仲間に伝え、結果、全員がアプリをインストールして会員登録するというバイラル効果が働きやすいのだと考えています。

アプリで会員登録完了した後、空港に設置されたワメイジング専用マシンでQRコードによる本人認証を完了すると、SIMカードが出てきます。現在、専用マシンは日本国内の国際空港22カ所に設置されていて、空から来る外国人旅行者の9割以上をカバーしています。

ワメイジングのもう一つの集客の柱はオウンドメディアでのコンテンツの発信です。日本の旅行時に参考になる観光ガイドのようなオリジナルコンテンツを、これまでに2,000本以上掲載してきました。

WAmazing 代表取締役社長の加藤史子氏
(提供:WAmazing)


――なぜこの事業を始められたのですか?
加藤氏:創業前はリクルートに18年間勤め、旅行情報サイト「じゃらんネット」の立ち上げやネットビジネスの事業開発、観光市場を活用した地方創生に関する研究など、長く観光業界に携わりました。

日本の旅行業者はほとんど日本人旅行者を対象にしていて、その規模は約20兆円という大きな市場です。これまではそれで良かったのですが、将来予測をシミュレーションしたところ、高齢化と人口減少が進む日本人による国内旅行の市場は先細り傾向にあることに気づきました。

かたや、日本を訪れる外国人旅行者は年々増加傾向です。日本政府観光局(JNTO)によると、2019年の訪日外国人数は約3,200万人で、2030年には訪日外国人数は6,000万人まで増加し、その消費額は15兆円になると予測されています。

今はコロナ危機でほぼゼロ状態ですが、今後も外国人旅行者向けに特化したサービスは成長分野であり、日本の人口減少による消費減・GDPの縮小を補い、地方創生に貢献できる事業だと考えて、2016年にワメイジングを立ち上げました。

――交通領域ではどんなことを手がけられているのでしょうか?
加藤氏:訪日外国人旅行者の日本国内の移動は鉄道利用が大半です。しかし、日本国内には私鉄だけでも100社以上、JRも6社あり、外国人にとっては非常に複雑です。この問題に対して、鉄道事業者と協力して解決に取り組んでいます。

2019年には、JR東日本とグループ会社のJR東日本スタートアップと協業して、ワメイジングが運営するウェブサイト上で、JR東日本の訪日外国人旅行者向けフリーパス「JR TOKYO Wide Pass」を販売しました。窓口に並ばず、駅に設置した専用マシンでいつでもパスを受け取れるサービスです。

例えば成田空港では、鉄道切符を購入するために長蛇の列ができるのは日常的な光景となっていました。そこに並ばずに購入できるということで好評をいただきました。

上野駅に設置した専用マシン
(提供:WAmazing)


地方観光時の2次交通に課題あり

――訪日外国人旅行者が抱える移動・交通の問題は、ほかにもあるのでしょうか?
加藤氏:近年の傾向として、東京、大阪、京都などのゴールデンルートはもちろん人気ですが、それだけに留まらず、都市部よりも温泉やスキーを目的に地方に行く方が増えています。実際、2019年の訪日外国人旅行者約3,200万人のうち、約25%が地方空港から直接出入国していました。

彼らにとって、地方を旅する際に一番問題となるのが交通、特に空港や主要駅から観光地や宿泊場所までの2次交通です。日本の国内旅行市場は約6割の旅行者がマイカーで移動するため、これまで地方の観光地が主にやってきたことは、高速ICを降りる場所に目立つ看板を設置し、広大な駐車場を用意することでした。しかし、外国人旅行者はマイカーを持っていないので、日本の地方観光で移動に困るという声は非常に多いです。

最近はレンタカーを借りる人も増えていますが、沖縄などでは交通事故が増えて深刻な問題になっていて、課題は多いと感じます。ローカルに行きたいというニーズに対し、地方にMaaSが導入されれば、車がなくても自由に移動して目的地に行くことができるのではないかと期待しています。

――MaaSのほかに、外国人旅行者向けの観点でモビリティサービスに期待することはありますか?
加藤氏:自転車は非常にいいツールだと思います。平地では観光客の行動範囲が広がりますし、車と違って立ち寄りスポットが増えることで消費も増えるのはシェアサイクルの利点です。電動キックボードも日本に導入されるといいですね。

外国人旅行者の移動がスムーズになり、行ける場所が増えれば地域消費も上がります。観光は移動しなければ何も始まりませんし、彼らに向けた交通サービスはやり甲斐のある領域だと思います。

那覇空港に設置した無料SIMカード配布マシン
(提供:WAmazing)


コロナ危機を超え、将来的には観光型MaaSとの連携を

――今後、交通領域でどのようなサービス展開を考えていますか?
加藤氏:ワメイジングの取り扱う観光商品の中で人気の高いスキーや温泉などは、主要駅から離れた場所や山間部などアクセスの悪い場所にあるケースが多いです。その場合、やはり問題になるのはラストワンマイルの移動です。

この先、観光型MaaSの取り組みが各地域で広がり、外国人旅行者がそれらを利用できれば、ラストワンマイルの移動がスムーズになり、快適な旅を提供できるようになると思います。また、それを実現するには、各地域の観光型MaaSとの接続が重要になるはずです。

私たちのアプリは、決済システムでは中国本土向けにWeChatが使えたり、同じ中国語でも台湾の繁体字と香港の繁体字を書き分けて表示したり、より外国人に特化したUI/UXにしているのが特徴です。

外国人旅行者は1回の訪日で約1週間~10日間は日本に滞在して各地を転々とする傾向にあります。最初の訪問地でその地域のMaaSアプリを使い、別のエリアに行った先でも別のMaaSアプリをインストールするという行動が繰り返されると予想できます。各地域のMaaSアプリの対応言語の問題もあるので、これは外国人旅行者にとってもハードルが高いです。

また、外国人旅行者が旅行前の段階で外国にいながら、事前に日本国内の各地域のMaaSの情報を入手することはなかなか難しいです。

MaaS事業者側も基本的には日本人向けに観光型MaaSを展開している中で、外国人旅行者に向けた言語対応や決済のシステム開発、大規模なプロモーションなどは負担が大きいと思います。

そこでワメイジングが全国各地にある地域の観光型MaaSアプリと連携し、外国人旅行者につなぐことができれば、外国人が日本旅行の準備段階から目的地への到着まで、決済や言葉のハードルなく、ワンストップでサービスを提供できるようになるのではないかと考えています。

いずれは、翻訳などのUIや決済の部分をワメイジングのUIに近づけたり、API連携をしたりと、具体的に取り組んでいきたいですね。

新型コロナでストップしている国際交流はまずはビジネス、観光の順で徐々に再開していくはずです。今は新たなアクティビティや交通商品の拡充をしながら、サービス再開に向けての準備を進めていきます。

(記事/柴田 祐希)

外国人旅行者がスマホ片手に日本を自由に旅する姿を目指す
(提供:WAmazing)

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