ARAVとシャープ、衛星通信による建機の遠隔操作ソリューションを開発、建設業界のDX推進【JMS2025】
2025/11/27(木)
ARAVは、ジャパンモビリティショー(JMS)2025に出展し、シャープと共同開発する衛星通信を活用した建設機械の遠隔操作ソリューションを紹介した。山地や離島など通信環境が十分でない現場も多く、衛星通信の有用性が注目されている。2026年春には、日本と台湾をつなぐ実証実験も予定。遠隔操作や自動運転は、現場のDX推進や作業効率の向上に加え、熟練作業員のセカンドキャリア創出にもつながる可能性がある。
衛星通信で広がる建機の遠隔操作【ARAV×シャープ】
建設現場では人手不足や作業員の高齢化が深刻化し、DXによる生産性向上が急務となっている。ARAVは、建設機械の遠隔操作や自動運転の技術を手がけるスタートアップで、課題解決に向けて現場のDXを推進してきた。同社は現在、シャープと共同で衛星通信を用いた建設機械の遠隔操作ソリューションを開発中だ。衛星通信は、山地や離島など基地局を介したセルラー通信が困難な環境でも活用できる点で注目されている。シャープは、通信技術や端末の小型化など、スマートフォンの開発で培ったノウハウを生かし、「LEO衛星通信ユーザー端末」の開発を進める。高品質・高速・大容量のネットワークを構築できるのが特徴。小型・軽量化にも取り組んでおり、会場で展示されたコンセプトモデルは、寸法が約200mm×200mm×30mm、重さ約1kg。建設機械に加え、自動車分野でも自動運転や車載通信、車内エンタメなど幅広い用途が見込まれる。
シャープの担当者は、「海外製端末は、1台で数百万円と高額です。価格が衛星通信ビジネスの普及を妨げていると考えています。そのため、私たちは100万円以下を目標にしています」と述べた。
両社は、2026年春に実証実験を実施する。国内のテスト場に建設機械を配置し、衛星通信を通じて台湾から遠隔操作と自動運転を行う予定。建設機械の操作性や通信の安定性、衛星通信の有効性・課題を検証していく。
後付けで既存建機をDX化、ARAVの遠隔操作・自動運転システム
ARAVが提供する遠隔操作の装置「REMOTE CONTROL Model V/E」は、油圧ショベルやホールローダーなど、レバー操作の建設機械なら種類やメーカーを問わず後付け可能。市販されている建設機械の84%(ARAV調べ)に適合する。装置は運転席の背面に取り付け、ノートパソコンやスマホ、タブレットとコントローラーを組み合わせて遠隔操作を行う。コントローラーは、デスクにも簡単に取り付けられ、操作員の環境に応じて配置できる。装置を付けたまま運転席で操作することもでき、有人・無人を切り替えての作業にも対応している。
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運転席の背部に取り付けた遠隔操作装置
(出典:ARAV Webサイトより)
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遠隔操作コントローラー
(出典:ARAV Webサイトより)
自動運転では、顧客の要望に合わせて仕様を個別に設計・調整する。従来、自動運転の機能開発は実機による検証が主流で、場所や時間、天候の制約があり、短いサイクルでの試行が難しかった。ARAVは、シミュレーターのOCS(Open Construction Simulator)で現場環境を再現し、開発効率を大きく高めた。
OCSは、オープンソフトウェアとしてGitHubで公開されており、誰でも利用できる。さらに、操作員の教育訓練にも使用でき、開発と人材育成の両方で貢献している。
その他、同じ動作を繰り返す作業を自動化するパッケージも提供。遠隔操作と自動運転を組み合わせれば、1人で2台の建設機械を操作することも可能になる。ARAVの担当者によれば、当初は建設現場が中心だったが、現在では鉱山や製鉄所など危険な現場でも導入が進んでいるという。将来的には、海外や宇宙での実用化も視野に入れている。
ARAVの担当者は、「建設機械の振動や騒音で腰や耳を痛め、働き続けたいのに引退せざるを得ない方も多いです。自宅など快適な環境で作業できれば、一度引退した方もセカンドキャリアとして参加できる可能性があります」と語った。
(取材・文/門脇希)












