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「現代の魔法使い」が語るクルマの未来 【落合陽一氏 インタビュー】

2017/11/14(火)

「現代の魔法使い」と呼ばれる落合陽一氏に、これからのクルマと人の関係についてお話を伺いました。
筑波大学助教でデジタルネイチャー研究室を主宰する落合陽一氏(以下、落合氏)。メディアアーティストとしても活躍し、超音波により物体を空中で3次元に自由に動かせる「Pixie Dust」や、レーザーにより空中に触れられる光を描き出す「Fairy Lights in Femtoseconds」など、さまざまな作品を発表しています。
 
[LIGARE vol.27 (2016.5.31発行) より記事を再構成]

●これからの人間と機械の関係について

─デジタルネイチャーについて教えてください。

現在は、ICやノートパソコンなど「形のあるコンピューター」という道具を使って世界を観察しています。しかし、デジタルネイチャーの時代では、人間や自然、環境、コンピューターが一体となった超自然を前提としています。そこでは機械学習や集合知を前提としていて、人間とコンピューターの立ち位置がたまに逆転することもあります。
つまり、人間がコンピューターに操作されてもいいし、コンピューターが人間らしく振る舞ってもいいと思います。あらゆる対応関係が変わってしまうのがデジタルネイチャーです。
 
 
 
そのような世界を迎えるためには、まずコンピューターを道具でなくすことが必要になります。形あるコンピューターはあくまでも道具でしかありません。
形のないコンピューターを造ることで、モノとモノが互いに情報を伝達しあうというインタラクションが道具を不要にします。インターネットが直接空間に出てくるようになるのです。
 

●これからのクルマについて

─これからクルマはプラットフォームの一部になっていくように思いますが?

まさにそのようになると思います。UBERという世界で一番大きいタクシー会社がクルマを一台も保有していない時代ですからね。今のクルマは、インターネットにつながっていないコンピューターのようなものだと思います。
昔はネットワークにつながらない独立したパソコンが何台もありました。それが現在では全てつながっています。しかも、形はスマートフォンやノートパソコンなどさまざまです。このような「physical layer」としてのハードの上に、AmazonFacebookなどのアプリケーションがあります。Amazonは、Kindle端末の売上はそれほど多くないですが、Kindleアプリケーションは多くの人が使っています。このように、全てのハードウェアの上にソフトウェアが乗っています。
 
 
これと同様の変化がクルマでも起こるのではないでしょうか。現在、クルマとクルマはつながっていません。これが、コネクテッドになり、形もパーソナルモビリティやクルマ、タクシー(所有しないクルマ)とさまざまあります。
ハードウェアの層としてトヨタなどが有力ですが、これからはソフトウェアやアプリケーションのパイをどうとるかが重要になってきます。例えば、テスラはハードウェアとしては大きくないですが、プラットフォームは動かしやすそうという雰囲気がありますよね。
 

─確かに自動車メーカーでソフトウェアを考えているところは少ないですね。

自動車業界には、ソフトウェアとハードウェアの間にしっかりとしたミドルウェアの層があります。NVIDIAが車載専用のチップを造ったりしていますよね。
今まではphysical layerとしてのクルマが重要で、品質のよい工場と品質のいい製品があればよい時代でした。しかし、結局はミドルウェアの上でソフトウェアが動くので、この結びつきが強いところが勝つと思います。日本にはこの結びつきを持っている企業がなく、トヨタが今まで持っていたパイを切り崩されている気配があります。
 

─自動車は産業構造が大きいので、レイヤーの層も多いですよね。

多いですね。さらに、一層あたりの単価が非常に高いです。なので、全てをフォローすることはできないので、選択しなければいけません。UBERはハードウェアを持たず、、サービスとソフトウェア、アプリケーションのみという業態です。
Googleは、自動運転などソフトウェアから入って、Android Carなどのハードウェアまでつなげています。このような多層構造は極めてインターネットと似ています。今までは横の層だけを見ていればよかったものを、どう縦につなげていくか選択することが非常に大切になります。自動運転の時代になれば、この産業構造はさらに広がると思います。
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