ダイハツ新社長にトヨタ井上氏、現場経営で再発防止 4月に新体制方針
2024/2/14(水)
ダイハツ工業と親会社のトヨタ自動車は2月13日、都内で会見し、トヨタの井上雅宏 中南米本部本部長が3月1日付でダイハツの社長に就任すると発表した。ダイハツの奥平総一郎社長、松林淳会長は退任する。会見した井上次期社長とトヨタの佐藤恒治社長は、ダイハツの認証不正を受けて現場経営で再発防止を徹底すると繰り返し強調した。
最優先は防止徹底、海外事業見直す CJPTは脱退
ダイハツは会社の変革・再生に向けて「小型車を中心としたモビリティカンパニーという原点に立ち返り、新たな会社に生まれ変わる覚悟」で取り組むとしている。不正の再発防止徹底を最優先課題と位置付ける。4月に新体制下の経営方針を明らかにする計画。方針に基づき、経営体制や事業を見直す。トヨタの佐藤社長は、ダイハツの海外事業について企画・開発・生産をトヨタからの委託に変更する方向で詳細を検討すると明かした。また、物流の課題解決を図る合弁企業Commercial Japan Partnership Technologies(CJPT)からのダイハツ脱退を発表した。
ダイハツの将来については「小型車を中心にラストワンマイルまで視野に入れたモビリティカンパニー」の役割を担えるよう、あるべき姿を検討」(佐藤社長)していくとした。
「現場と徹底対話」の新社長「自ら話しかけ本音を」
佐藤氏は井上次期社長について「長年、中南米事業の構造改革に取り組み、難しい決断も多い中で、現場のメンバーと徹底的に対話をして、改革を前に進めてきたリーダー」と紹介。井上次期社長は自身の経歴を「トヨタ入社からの36年で約半分を海外、主に新興国で過ごし、営業の第一線、製造も経験した」とした。その上で「人の話を聞くためには、まずは自分から話しかけ、相手の信頼を得ないと、本音を聞かせてもらええないことを経験して参りました。まずは、自分が現場に出向き、自分から話しかけ、信用をして頂き、本音の話を伺うことから始めたいと思います」とした。
取締役にトヨタから桑田氏、柳氏
ダイハツの3月1日付役員人事ではトヨタ自動車九州 副社長の桑田正規氏が代表取締役副社長に就く。また、トヨタ カスタマーファースト推進本部副本部長の柳恵子氏が非常勤取締役に就任する。桑田氏は人事、現場経営の経験を風土・組織改革に生かす。柳氏は確実な認証業務遂行に尽力する。ダイハツの星加宏昌 代表取締役副社長は留任し、品質統括本部長として法規・認証関連業務の体制構築を担当する。3月1日以降ダイハツの取締役は井上社長以下4人体制となる。
トヨタとダイハツは今回のダイハツ社長交代、新経営体制の狙いを「認証不正の根本は身の丈を越えた負荷を現場に強いたことがあると考えており、立て直しには、丁寧に現場の声を聞き、現場に主権を取り戻す経営をできる体制が必要」と考え、決定したと説明している。
会見での質疑応答の要旨は次の通り。
――トヨタからダイハツ社長を送る狙いは。
佐藤氏:トヨタから、ダイハツからよりも、現場で経営する適任者はだれかということで人選した。
井上氏:送られた側の気持ちとしては、ワンチームでダイハツの改革に取り組んでいきたい。取締役4人が一丸になりダイハツを再生することがミッションだと思っている。
――今回の新社長人事をいつ、だれから聞いたか。最初の印象は。
井上氏:3週間ほど前、出張先のペルー・リマでトヨタの佐藤社長、豊田章男会長からオンライン会議で聞いた。責任の重さに身震いするような感じもあった。一方、ダイハツとは仕事の付き合いもあり、小型車で競争力がある会社と仕事ができると新興国で感じたうれしさも思い出した。
――ダイハツが再発防止策を国土交通省に報告した。5年10年かけて社内に根付かせると思う。風化させないための考えは。
井上氏:ここ10年の急拡大の中で出たひずみを吸い上げられず不正を起こしてしまった。現場の皆さんと何が起きていたかきっちり会話することで真因をつかみ、再発防止策を風化させない仕組みを定めたい。
――再発防止策の中に開発期間を延ばすとある。ダイハツの競争力維持と再発防止をどう両立させるか。
佐藤氏:企業経営は非常に長期的なものと考えている。短期的にはペースを落としても、ダイハツの体制を立て直して強みを全員で見直す。原単位にこだわったモノづくりとお客様の生活に寄り添う商品づくりが強みだと思う。
井上氏:商品が次々と出ることは必ずしも販売台数につながるわけでなく、必要な時に切り替わることが大事だと思っている。開発、販売、サービスを組み合わせて競争力を維持する。
――再建に当たりダイハツの大部分をトヨタに一体化することは考えなかったか。
佐藤氏:一体化も含め検討してきた。その上で、トヨタがダイハツの現場に入り、お客様の声を聞いて、ダイハツに本来の役割をもう一度お任せいただけないかどうか取り組む結論に至った。
――ダイハツ会長、社長は引責辞任となるのか。
佐藤氏:再発防止を徹底しながらダイハツらしさを取り戻すために必要な体制変更であり、引責辞任ではない。
今回の人事を決めるに当たっては奥平現社長とも直接対話し、今後の体制についてかなり時間を使って話をした。奥平社長、留任する星加副社長から辞任の申し出があったのは事実。
経営責任に関する当人の思いも受け止めた上で、特に星加副社長についてはダイハツをずっと見てきたからこそ分かる課題もあるはずで、本来のダイハツを取り戻すことに全力を傾けてほしいと今回の人事となった。
※画像はトヨタ自動車ニュースルームより