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ウェアラブルデバイスの最前線と、コネクテッドカーの未来予想図

2022/8/30(火)

【特集:ドライブレコーダーの進化に迫る】

スマートウォッチの普及が進み、ウェアラブルデバイスは私たちの暮らしに身近な存在となった。デバイスから取得するバイタルデータは暮らしを便利にするだけでなく、事故を未然に防いだり、職場環境を改善したり、さらにアルコールチェッカーとの連携であったり、現場で大いに活用できるポテンシャルを秘めているという。

人とクルマをつなぐHMI(Human Machine Interface)として、ウェアラブルデバイスはどのような進化を遂げるのか?また、ドライブレコーダーとの連携で価値はより高まるのか?

伝統産業に携わる繊維メーカーから、ウェアラブルを用いたIoTソリューションカンパニーへと変貌を遂げたミツフジ株式会社で、代表取締役社長を務める三寺歩氏に話を聞いた。

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■西陣織からウェアラブルへ

インタビューに答える三寺氏_1

――ミツフジはもともと繊維メーカーとして創業したそうですね。

三寺氏:1956年に、西陣織の帯を製造する工場として創業したのが始まりです。その後、オイルショックなどの不況を経験しながら、繊維商品の加工・生産を請け負うようになり、だんだん厳しい価格競争にさらされるようになりました。

――苦境を乗り切るために、どんな取り組みをしたのでしょうか?

三寺氏:先代の社長である父が会社を継いでから、高機能な繊維の開発に取り組みました。1990年代に抗菌防臭作用や電磁波防止といった機能を持つ銀に注目し、銀めっき繊維「AGposs(エージーポス)」を開発しました。

銀めっき導電性繊維「AGposs」

銀めっき導電性繊維「AGposs」
※ウェアの裏側(写真左)に電極となる銀めっき繊維(写真右)が編み込まれている


――当初はどんな用途で使っていたのでしょうか?

三寺氏:防臭作用を持つ靴下や、電磁波シールドエプロンといった製品を作り、高い評価を得ていました。ところが、今では抗菌防臭の靴下は格安でどこでも手に入るようになり、これらの分野はここ数十年で大幅に価格が下落しました。

――当初打ち出していた機能だけでは厳しくなったんですね。

三寺氏:その後、銀めっき繊維が持つ「導電性」が注目されるようになったのを機に、ビジネスの軸足をそちらに置くように転換しました。

――新たなニーズが見出された背景に、ウェアラブルデバイスがあったのでしょうか?

三寺氏:実際、ウェアラブルデバイスを開発したいというニーズがあり、銀めっき繊維がよく売れるようになりました。ただ、繊維だけでウェアラブル製品を開発できるわけではありません。

バイタルデータを取得するためのセンサーや、データを送信するトランスミッター(通信装置)、データを処理するアルゴリズム、さらにはクラウドサービスの構築など、さまざまな技術が必要になります。

――ウェアラブルデバイスは多様な技術の組み合わせで完成するんですね。

三寺氏:全てを一社だけで担うのは大変で、そこがウェアラブルデバイスの難しいところです。それをミツフジ一社でやろうと開発したのが、ウェアラブルIoTソリューションの「hamon(ハモン)」です。

■ウェアラブルデバイスによる事故防止とは?

「hamonウェア」

「hamonウェア」



――「hamon」はどんなことができるソリューションなのでしょうか?

三寺氏:着衣型の「hamonウェア」の場合、センサーから取得した心電図データを基にして、ストレスの度合いや眠気の計測、暑熱リスク管理などが可能です。

例えば、工場で作業する従業員の暑熱リスクが高まったらシステムが通知し、スマホアプリでセルフモニタリングをしたり、PCで集中管理をしている管理者が休むように指示したり、現場を見守るアラートツールとして活用できます。

また、スマホを持ち込めない現場向けに、スタンドアロン型で、より手軽に装着できて色と振動で暑熱リスクを着用者に事前にお知らせする、暑熱対策に特化したリストバンド型の「hamon band(ハモンバンド)」も開発しました。今夏には、着用者本人だけでなく、現場の管理者も着用者全員の一斉管理が可能な、SIM搭載のスマートウォッチタイプも販売します。

「hamon band」(写真右)と、今夏発売予定のスマートウォッチタイプ「MITSUFUjI 03」(写真左)

「hamon band」(写真右)と、今夏発売予定のスマートウォッチタイプ「MITSUFUjI 03」(写真左)



――工場の作業現場だけでなく、社有車を運転するシーンにも応用できそうですね。

三寺氏:これまで複数の運送事業者でテストをした実績があります。今後は営業車向けの展開も始まる予定です。

体調を可視化して早めに対処することができれば、社有車の事故リスクを下げることができます。営業車はいろいろな場所へ出向く必要がありますから、眠気や暑熱リスクが高まる状況も起こり得ます。それらのリスクを測るアルゴリズムを使いながら、バイタルデータをリアルタイムで管理することが可能です。

――安全運転管理者が事故防止に活用することもできそうですね。

三寺氏:管理者の立場からすると、社有車の事故はなんとしても防ぎたいはずです。「疲労をためて、事故リスクが高い運転をするくらいなら休んでほしい」というのが本音でしょう。事故そのもののインパクトはもちろんですが、「危険な状態で運転することを許容している会社」というネガティブなイメージがつく可能性もありますから。

――危ない兆候を事前に察知する「見守り」へのニーズは高まっているのでしょうか?

三寺氏: 昔から、見守りへのニーズはありました。一方で、従業員の立場からすると「監視されている」と感じている方も多かったのです。

ところが、コロナ禍において、自身の体温を会社に報告するケースも出てきました。体温は重要なバイタルデータであり、プライバシーという面もありますが、職場の安全配慮の観点から報告・管理する必要性が出てきたんです。

また、健康に対しての意識も大きく変化していると思います。そんな状態が日常化したことで、バイタルデータを測定するウェアラブルデバイスの心理的なハードルが下がっていると感じます。

■「よりよい状態」のためにバイタルデータを活用

インタビューに答える三寺氏_2
――やはりバイタルデータの活用は、ネガティブな事象に対応する用途が主でしょうか?

三寺氏:これからの時代は、自分がよりよい状態となるために、バイタルデータを活用する流れに進んでいくと考えています。ヘルスケアにおける「あなたの健康度は全国で何位」のような相対的な尺度ではなくて、自分自身がハッピーになるためにデータを使うんです。

――その考え方は、個人だけでなく企業でも同じでしょうか?

三寺氏:企業がバイタルデータを使う際も、監視するためのデータというより、従業員と企業の関係をよりよくするために活用するのが大切です。ストレスや体調の悪化のようにネガティブな指標だけでなく、「気分よく働いている」指標を測れば、生産性の向上や職場環境の改善に利用することも可能だと考えています。

――ポジティブな指標も活用していくということですね。

三寺氏:例えば、国が示している最低限の休憩・休暇の考え方よりもさらに大胆な制度を導入すれば、働き方が改善し、労働生産性が高まるケースもあるでしょう。ただ、それを実行する根拠として、データが必要なんです。

事故の防止は前提としながらも、よりよい職場環境を実現するためにデータを活用する――。その基礎データを取得するために、ウェアラブルデバイスによるソリューションを活用していくわけです。

■アルコールチェッカーとの連携も?バイタルデータの可能性

イメージ画像
――バイタルデータの活用シーンについて伺います。例えば、義務化に向けた動きが進んでいるアルコールチェッカーと連携する場合、どのような活用が考えられるでしょうか?

三寺氏:例えば、ドライバーのバイタルデータとアルコールを検知するアルゴリズムを組み合わせて、遠隔から管理しつつ、状況によっては管理者が介入するなどの方法で、飲酒・酒気帯び運転への対応が考えられます。

きわめて高い安全性が求められる分野なので、シートやハンドルなどから取得したデータと、ウェアラブルデバイスからのデータを組み合わせて、より精度を高めることも重要になると思います。
※道路交通法施行規則の改正にもとづき、安全運転管理者は運転者の運転前後において、アルコールチェックの実施が義務化。2022年10月から「アルコール検知器を用いて確認すること、検知器を常時有効に保持すること」が必要になる予定だった。
今年7月「最近のアルコール検知器の供給状況等を踏まえ、当分の間、安全運転管理者に対するアルコール検知器の使用義務化に係る規定を適用しない」との発表が警察庁からあり、記事執筆時点(2022年8月)では検知器の導入時期は未定となっている。(参考:警察庁発表)

――ドライブレコーダーとの連携を想定した場合、いかがでしょうか?

三寺氏:常時録画している映像とウェアラブルデバイスが連携している前提だと、運転傾向とバイタルデータから事故リスクをポイント化して、一定の数値を超えた前後の動画を抜き出す方法などが考えられます。

異常が出たらドライバーにアラートを出したり、リアルタイムで管理者に連絡したり、そうした応用も可能ではないでしょうか。映像とバイタルデータの組み合わせは、高いポテンシャルを秘めていると思います。

――そのほかに、どのような応用が考えられますか?

三寺氏:バイタルデータはマーケティングへの応用も可能です。もちろんデータを匿名化する前提ですが、「このエリアを運転している人はテンションが高まっている」といった傾向がわかれば、それに応じた広告やクーポンを出すこともできるでしょう。

そんな活用が広がれば、クルマがデジタルマーケティングのエコシステムに組み込まれて、新たな収益源も生まれます。監視や見守りだけではなく、「楽しく安心安全に」というポイントが、これから自動車関連のプロダクトに求められることではないかと思います。

【取材後記】
当コラムでは、これまで居眠り運転やあおり運転、飲酒運転といった、クルマにまつわる社会課題について考えてきた。いずれにおいても言及されていたのが、「ドライバーの状態を正確に測定する」ことの重要性だ。「映像×バイタル」の可能性は、今後コネクテッドカーとウェアラブルデバイスの連携を語る上で、一つの重要な視点となるだろう。

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