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ディスカッションで洗練されていく技術 ドイツ運輸デジタルインフラ省

2017/11/21(火)


ACSFに注力している

ADASS( Advanced Driver Assistance Steering System)はメインのステアリングシステムに追加で装備されているシステムです。クルマを制御する主体となるのはドライバーです。ACSF(Automatically Commanded Steering Function)とCFS (Corrective Steering Function)の2種類があります。ACSFは複雑な電子制御システムを組み合わせ、連続でクルマをコントロールします。経路追従や低速での追従、パーキングオペレーションの時に使われます。現状の取り決めでは、時速10キロに達するとシステムがオフになるため、高速では利用できません。市場ではパークアシストやリモートコントロールパーキングに活用されています。CSFは一時的な制御機能で、時速制限はありません。市場に出ているのはレーンキーピングアシストで、横風に対するアシスト機能もあります。

ジュネーブでは国連欧州経済委員会監修のもとでインフォーマルなワーキンググループが活動を行っています。オリバー氏は、「私たちはACSFに注力して活動しています。ACSFを時速制限なしで高速でも使用するための活動をしています」と語り、議論をする際のカテゴリがA~Eの6種類あると示しました。

 

自動操舵の国際基準(R79)の検討状況
(国土交通省ホームページhttp://www.mlit.go.jp/common/001155041.pdfり引用)



A (=Low speed maneuvering [ Park assist / Remote Controlled Parking ])

B(=Lane Keeping, 2 Categories: B1 and B2)

C(= Lane change [ Lane change commanded by the driver ])

D(=Lane change [ System indicates possibility of a lane change, driver confirms ])

E(=Lane change [ Lane change is performed automatically by the system ])

Aは低速(時速10 /km以下)操縦です。Bのレーンキーピングには2つのカテゴリがあります。B1は市場に出回っている機能、B2は新しい技術を対象としています。C・D・Eはレーンチェンジに関するものです。Cはドライバーが確認した後にレーンチェンジが行われます。Dはシステムでレーンチェンジ可否の判断はシステムが行い、確認はドライバーが行います。EはボタンをONにしておくとシステムの判断で必要があればレーンチェンジが行われます。

ハイクラスのACSF装備車両には、車間の距離を確実に維持するためにレーダーやリーダー、カメラを装備する必要があります。「これらのシステムを搭載し、車間距離や後方のクルマの車速を計算します。車間の距離を確実に維持するための最低要件を取り決めた規定ができたところです」(オリバー氏)。

 

予期せぬ事象が発生したときに発行されるtransition demand

オートマティックブレーキは、前方に走っているクルマの存在にドライバーが気付いていない時にAEB (Automatic Emergency Braking)が働くシステムです。前方を走っているクルマとの車間を適切に保ち、前方車が急に止まった場合は、自車もブレーキが利くようになっています。

安全な走行に関して、特に重要なのはHMI (Human Machine Interaction )です。ドライバーは常にクルマのシステムがどのような状態かを知っておく必要があります。オリバー氏は「状況に応じ、視覚・音声・触覚に働きかける警報システムを立案しています」と語っています。いずれも自動運転、マニュアル運転の両方に対応することが必須となります。

先述のACSFはドライバーが意図してオンにした場合に起動するシステムで、ドライバーの意志でいつでもマニュアルにすることができます。予期しない事象が発生した場合、transition demandというものが発行されます。これが出されるとドライバーはすぐに自分で操縦する必要があります。例えば、シートベルトがされていなかったり、席から離れたり、ドライバーが注意散漫になっていたり、ドライバーからの反応がまったくなかったりする場合です。

transition demand発行後は現状のレーンで少なくとも4秒は走行することができます。4秒の間にドライバーからの反応がなかった場合、MRM(Minimal Risk Maneuver)が実行されます。これは交通状況に応じて、リスクを最小限にするのを目的としたシステムです。モーターパワーのキャンセルが始まって、減速がスムーズに行われます。路肩に停まるまでスローダウンします。他のクルマに知らせるためにハザードランプが点灯します。

 

自動運転技術の安全性をより高めるために

driver availability recognition systemはドライバーが座席にいるかいないかを確認するシステムです。座席にドライバーがいるかを確認し、シートベルトを締めているかのチェックをしてくれます。ドライバーが応答しなかったり、180秒間反応しなかったりすると、警報が発動します。この対象となるのは、ACFSのカテゴリEまたはB2にあたるハイクラスのACFSが装備されている車両です。

これらのクルマにはデータ保存システムであるブラックボックスを装備しなければなりません。事故後に事故が起こった際に操縦していたのはドライバーなのかシステムなのか、システムが要件を満たした状態で的確に機能していたのかを究明するためです。「事故が起こった場所や時間を、データとしてどう取り扱うかをワーキンググループで話し合っています」(オリバー氏)。

 

自動運転関連の国際会議。
自動操舵専門家会議では、日本とドイツが共同で議長を務めている。
(国土交通省ホームページ http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/douro/dai9/siryou3.pdfより引用)



PTIは日本の車検にあたるものです。これに対しても条項をとりまとめています。ソフトウェアのバージョンが最新かどうかを確認します。メーカーからはワイヤレスでアップデートができるようにという要望があります。ソフトウェアがアップデートされた時は、運転者はアップデートされたという事実を知ることが重要です。

また、車検時には型式承認が下りているかの確認も必要です。確認時のテスト内容は、レーンキーピングができるか、レーンチェンジの時に後方からクルマが来たら車線変更をやめられるか、レーンチェンジがスムーズに行われるか、などの項目です。他にも、路面上のマークが上手く見えない時に、要求通りの行動が取れるかどうか、起こるべきではない事例が交通事情によって起こった場合にtransition demandが正常にスタートし、スムーズに対応できるかどうかなどです。動いている物体と停止している物体に対してのブレーキングのテストも行われます。

オリバー氏は、2016年9月にジュネーブでGRRF (ブレーキと走行装置)に対してのプレゼンを行いました。ACSFに関しての複雑さを少しでも低減させようという内容です。今後について、「2017年9月にレーンキーピングに対して明確な要求を取りまとめた最初のドラフトを提案し、それを採択してもらう予定です」と述べ、一つひとつしっかりと対応していきますと講演を締めくくりました。

自動運転技術に関する課題はまだまだ山積みであり、各国でのディスカッションは安全性や自動運転技術向上のために必要不可欠です。各国国内のみならず、国連欧州経済委員会など世界の有識者で行われる討論は、完全自動運転化の実現に大きく寄与してくれることでしょう。

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