交通崩壊を防げ!「くらしの足を守るフォーラム」が緊急提言
2020/4/28(火)
公共交通の日本型モデルのあり方が岐路に
続いて、タクシー、バス、鉄道などの各交通事業者が事例紹介を行った。バス事業者としてイーグルバス株式会社社長の谷島賢氏は、「最低限の運行の維持」「感染拡大防止策」が重要だと語った。その上で、観光バスはほぼ需要がゼロとなっているが、企業送迎バスは減少幅が少ないと指摘し、感染防止のガイドラインや安心して働ける環境づくりへの支援を求めた。また、熊本都市バス株式会社社長の高田晋氏は、現行の運行補助金が事前確定型であることに触れ、今回の急な赤字増加時に対応できるような制度変更の必要性を語った。
続いて株式会社トラフィックブレイン代表取締役の太田恒平氏は鉄道事業について、固定費率が大きい鉄道特有の事業構造に触れ、一時運休したところでコストが下がらず、むしろ休業後の再開コストが大きくなると解説した。さらに、加藤氏は福井鉄道株式会社の事例を紹介。同社は通学定期券販売減によって4月の運賃収入が約7割減になると明かし、キャッシュ不足から資金繰りに苦労する現状を挙げた。太田氏は運行や財源を民間企業が担う従来の日本の公共交通のあり方が大きく変わらなければ「危機を乗り越えられないのではないか」と疑問を呈した。
コロナ渦でも失くせない「くらしの足」
次に、東北各地のタクシー事業者の現状について、全国自動車交通労働組合連合会書記次長の高橋学氏からの提供資料を元に、早稲田大学客員准教授の井原雄人氏が紹介した。各社とも運賃収入が急減しており、小規模事業者は廃業の危機に直面している。しかしその一方で、高齢者の利用が多いデマンドタクシーなどは影響が小さく、買い物代行など生活密着サービスに活路を見出しているという。高齢者や障がい者のための同行サービスなどを展開する株式会社ハートフルタクシー取締役副社長の篠原俊正氏も同じく、「生活に直接必要なサービスを提供していることから3月は約1割減で乗り越えられた」と、地域に密着した事業の強みを紹介した。また篠原氏は「コロナは最大の危機だが、タクシー事業が人の移動だけではなく、高齢化社会に適合した生活総合支援事業に生まれ変わるタイミングだと思っている」と力強く語った。
福祉輸送事業の事例紹介では、かながわ福祉移動サービスネットワークの清水弘子氏が登壇。高齢者の通院や障がい者の通所などの「福祉有償運送」の利用が約3割減少したと説明した。また、コロナ渦による担い手不足と、高齢者の外出機会減による体力低下という2つの問題への懸念を示した。現在は、いかにして高齢者に向けて「サービスを続けている」というメッセージを発信するか、そして現在停止している活動資格取得のための認定講習会を別の方法で開催できないか模索しているという。
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