メルセデス・ベンツ、次世代電動スポーツカーとラグジュアリーミニバンを日本初公開【JMS2025】
2025/11/18(火)
メルセデス・ベンツ日本(以下、メルセデス)はジャパンモビリティショー(JMS)2025で、次世代BEVスポーツカー「CONCEPT AMG GT XX」と高級ミニバン「Vision V」を日本で初公開し、最新技術とデザインを紹介した。
両モデルは、同社が目指す電動化とラグジュアリー体験の方向性を示している。また、プレスブリーフィングでは、今後の生産計画や開発方針など展望も語られた。
両モデルは、同社が目指す電動化とラグジュアリー体験の方向性を示している。また、プレスブリーフィングでは、今後の生産計画や開発方針など展望も語られた。
■次世代BEV「CONCEPT AMG GT XX」をアジア初公開
メルセデスの社長兼CEOを務めるゲルティンガー剛氏は、プレスブリーフィングで次のように語った。「安全性・快適性・走行性能・人間工学に基づくデザインなど、全てのモデルに共通する価値のもと、お客様の日常をより豊かに、ワクワクする体験提供を目指します」。
この理念を体現するモデルの一つとして、「CONCEPT AMG GT XX」がアジアで初公開された。将来、導入予定の4ドア量産スポーツカーに先駆けたコンセプトモデルで、メルセデスAMGの本拠地であるドイツ・アファルターバッハで初めて作られた電気自動車だ。
同モデルは、8月にイタリア・ナルドで実施したテスト走行において、7日半で地球一周に相当する40,075kmを走破した。メルセデスAMG CEOのミヒャエル・シーベ氏は、同モデルを「長距離スプリンター」と表現する。
驚異的な持久力の秘密は、独自に開発したEV専用ハイパフォーマンスプラットフォーム「AMG.EA」にある。動力源のアキシャル・フラックス・モーターは、従来のモーターに比べ、パワー密度が約3倍と高出力。さらに、重量は約3分の2、必要なスペースが約3分の1と軽量かつ小型に進化した。これを3基搭載し、最高出力1,000kW(1,360PS)超、最高時速360km超を達成している。
電力を供給するハイパフォーマンスバッテリーは、F1技術に着想を得て新規開発された。スリムな円筒形セルを採用し、直接冷却と高電圧化を組み合わせることで、高出力の連続性能と急速充電能力を両立。頻繁な加減速にも対応でき、わずか5分で航続距離400km分の充電が可能である。

走行中、V8エンジンの擬似サウンドが響くのも特徴だ。担当者は理由について、「お客様は、電気自動車であってもAMGらしいスポーティーさを求めます。静粛性よりもドライビングフィールを重視する傾向があるため、V8エンジンのサウンドを再現しました」と説明した。
2026年に市販モデルの生産開始が予定されている。シーベ氏は、今後の展望を次のように語った。「引き続き、ハイパフォーマンスな内燃機関と最先端の電気自動車の両方を提供します。今後2年間で、AMGの歴史上かつてない数の新車を投入予定です。現在、全く新しいV8エンジンを開発する一方で、電動AMGの進化にも全力で取り組んでいます。その中心となるのがAMG.EAです」。
■最高級ミニバン「Vision V」で変革、贅沢な移動空間へ

さらに、次世代ミニバンのコンセプトカー「Vision V」も日本初公開した。同モデルは、バン専用電動アーキテクチャ「VAN.EA」を搭載している。VAN.EAは2026年以降に導入予定で、ファミリーからVIPまで幅広いニーズに応えるモデルの展開を計画中だ。この新技術を用い、単なる移動手段ではなく、「移動するプライベートラウンジ」として再定義を図る。
このコンセプトを具現化するため、ミニバンでありながら4人乗りとし、後部座席を広く開放的な空間とした。シートは、人間工学に基づく設計により快適さを追求。ポリッシュ仕上げのアルミニウム製ベースの上に、チューブ状のクッションを重ねて構成し、未来感のあるデザインに仕上げた。素材には、クリスタルホワイトのナッパレザーとホワイトシルクを使用。また、ドアや天井にもレザーを取り入れている。
後部座席と運転席の間仕切りやサイドウィンドウには、透明度を自在に切り替えられるスマートガラスを備え、プライバシーを確保した。スマートガラスには極小の液晶が内蔵されており、電圧でその並びを制御することで透明度が変わる仕組み。
同モデルの特徴は、移動中の体験を7つの利用シーンに分けて提供する点にある。映画や音楽を楽しむエンターテインメントから、リラックス、ゲーミング、ワーク、ショッピング、ディスカバリー(周辺情報の取得)、カラオケまで、多彩なデジタル体験に対応している。
これらの体験を充実させるため、映像と音響にもこだわった。床下に格納された65インチの4Kシネマスクリーンは、乗員が乗り込みドアが閉まると同時にせり上がる仕様。天井や床に設置した7基のプロジェクターと、スクリーン機能も備えたサイドウィンドウを組み合わせることで、360度の映像を楽しめる。
音響面では、シート内蔵型のエキサイターを含む合計42個のスピーカーを装備。Dolby Atmos対応のサラウンドサウンドシステムも組み込み、立体的な音響体験で没入感を高めた。
外観は、メルセデスのデザイン哲学「Sensual Purity」を基に、空力性能を重視した低いシルエットを採用。リアには450本以上の立体的なイルミネーテッドルーバーを配置するなど、先進的な照明デザインとした。また、ヘッドライトにメルセデスの象徴であるスリーポインテッドスターをあしらっている。
担当者は今回の展示について、「ミニバンが高級路線へ進出していくというメッセージを込めている」と述べた。
(取材・文/門脇希)














