三菱ふそう、日野26年4月経営統合 親2社水素、CASE技術で支援
2025/6/11(水)
三菱ふそうトラック・バス、日野自動車、ダイムラートラック、トヨタ自動車の4社は、三菱ふそうと日野の統合について最終合意したと6月10日、発表した。2026年4月1日事業開始予定で三菱ふそう・日野が統合した持株会社を設立し、2社をそれぞれ持株会社の100%子会社とする。規模の拡大による相乗効果を見込み、「商用車をリードする企業、日本に根差した真のグローバルカンパニー」を目指す。三菱ふそうの親会社ダイムラートラックと日野の親会社トヨタは水素やCASE関連の技術開発を通じて商用車事業を強化する。
商用2社規模生かし各自の競争力を強化
持株会社のCEOに就任予定のカール・デッペン 三菱ふそうCEOと、小木曽聡 日野CEO、カリン・ラドストロム ダイムラートラックCEO、佐藤恒治 トヨタCEOが6月10日、会見した。三菱ふそう・日野の統合持株会社は、日本をはじめ事業展開する各地の独占禁止法当局の許可などを得て発足する。ダイムラートラック、トヨタが25%ずつをめどに株式を保有した上で東京証券取引所プライム市場に上場を見込む。日野はトヨタの関係会社から外れる予定。新会社の社名、デッペン氏以外の経営陣など当局や各社の取締役会、株主の承認を得た上で今後決定・公表する。4社は23年5月に三菱ふそう・日野の統合で基本合意を発表したところ、日野の認証不正問題などを受けて統合を延期していた。問題の解決にめどを付けたことから統合を進める。当面は、三菱ふそう・日野それぞれが持つブランド、商品群や販売店網を残した上で相乗効果により競争力向上を見込む。
デッペン新CEO「全関係者、業界にメリット」
デッペン氏は会見の冒頭、4社が統合に基本合意した23年と比べ、商用車の事業環境は厳しさをさらに増しているとの見方を示した。業界に要求されるCASEや脱炭素関連ほかに巨額の投資が求められるからこそ、規模が重要だとした。日本市場で多くの商用車メーカーが個々に存在し続けるのは現実的でないと述べ、すべてのステークホルダーにとって統合はメリットをもつと力説した。小木曽 日野CEOは、さまざまな課題があり、転換点を迎えている商用車業界にはこれまで以上のスピードと柔軟性、投資が必要とし、「今回の協業は千載一遇の機会」と形容。「事業上はもちろん、異なる企業文化が融合する相乗効果は測り知れない」とした。
ダイムラートラックとトヨタ協業も加速
ラドストロム ダイムラートラックCEOは「2社の統合は歴史的。トラックメーカーはディーゼル、EV、水素燃料電池、水素エンジンを同時並行で開発する必要に迫られ、効率的に解決する手段は規模しかない。商用車業界をリードしながら大型トラックに強みが集中する当社と小型車両を得意とする三菱ふそうが規模のメリットを得られる可能性は限定されていた。可能性を拡大する日野との統合で時宜を得たもの」とコメントした。- 三菱ふそうは世界170の国・地域で展開
- 両社の可能性は大きいと期待
佐藤トヨタCEOは23年に4社が「強みを生かして日本、アジアの事業基盤を守り、商用車の未来をつくりたい」というビジョンに共感して相互理解を深めてきたからこそ統合が前進したと語り、トヨタとダイムラートラックはCASE技術を基本に統合会社を支援すると述べた。トヨタ・ダイムラートラックの協業についても「水素モビリティの実装と普及を加速しており、踏み込んだ連携も含めてさまざまな可能性を追求している」と話した。
20年、30年の長期視点で判断
質疑応答の要旨は下記の通り。――改めて統合の意義を。
デッペン氏「4社いずれも15年、20年の長期的な観点で課題に取り組むことが必要と感じており、未来に投資しようと決めた」
――トヨタ・ダイムラートラック、三菱ふそう・日野それぞれ相手のどこに魅力を感じたか。
小木曽氏「日野、三菱ふそうの2社は同じ市場でお客さまに向き合い、共通の課題を認識していた。互いにほぼ同じ魅力を感じていたことが統合の意義の大切なところ。乗用車のトヨタの価値に加えて、商用車のプロであるダイムラートラックと一緒に事業ができる大きな魅力を感じている」
ラドストラム氏「当社、トヨタの前任のCEOが基本合意した時からお互いを尊敬しつつ協業の話を進め、2社にとってもメリットがあると感じていた」
佐藤氏「ダイムラートラックは地域に根差した会社を目指し、日本の商用車業界へのリスペクトがあり、卓越した技術をもっている。さらに一番申し上げたいのは前任のマーティン・ダウムCEOは自らトラックを運転し、後任のカリンさんもトラック愛にあふれる方。当社もクルマ好きばかりでそういう部分のシンパシー、ビビビとくるような感覚があった」
――統合効果の数字を出していただけるとありがたい。
デッペン氏「今の段階で数字を挙げるのは時期尚早と考える。まずは独禁法当局の認可を得ないと具体的な話はできない。しかし、可能性、特に投資効率についてメリットは大きいと考える。別々に重複した投資をする必要がなくなる」
――統合でトヨタの新会社への議決権比率は20%未満となり、持分法適用会社から外れる予定と思う。背景と影響を。
佐藤氏「比率変更の最大の理由は小型トラックの適正な競争環境を守る必要があると我々が判断したため。トヨタブランドも同領域で27%のシェアをもち、新会社を関係会社とすると影響を与えてしまう」
(画像はトヨタニュースリリースより)