日産ら4社、横浜で自動運転、事業性を重点検証 20台同時、海外も視野
2025/10/17(金)
日産自動車(以下、日産)、BOLDLY、プレミア・エイド、京浜急行電鉄(以下、京急電鉄)の4社は横浜市と連携して自動運転モビリティサービスの実証実験を開始すると発表。10月3日に日産グローバル本社ギャラリーで記者発表会が開催された。
当日は、日産 代表執行役社長兼CEOのイヴァン・エスピノーサ氏、BOLDLY 代表取締役社長兼CEOの佐治友基氏、プレミア・エイド 代表取締役の吉澤成一朗氏、京急電鉄 取締役社長の川俣幸宏氏が登壇。実証では、安全性や事業効率の検証を通じて、運用課題の抽出やサービスエコシステムの構築を行い、将来的には海外展開も視野に入れている。
当日は、日産 代表執行役社長兼CEOのイヴァン・エスピノーサ氏、BOLDLY 代表取締役社長兼CEOの佐治友基氏、プレミア・エイド 代表取締役の吉澤成一朗氏、京急電鉄 取締役社長の川俣幸宏氏が登壇。実証では、安全性や事業効率の検証を通じて、運用課題の抽出やサービスエコシステムの構築を行い、将来的には海外展開も視野に入れている。
実証概要:安全性と事業効率の検証に焦点
発表会の冒頭、日産 執行職 総合研究所 所長の土井三浩氏から実証の概要説明が行われた。土井氏は、今回のプロジェクトのテーマを「自動運転モビリティが走る日常の可能性を広げること」とし、地域活性化や生活の質向上に貢献するためには、安全・安心の確保や地域との連携による社会的受容性の醸成が重要であると強調した。将来、国内だけでも数万から数十万台規模の自動運転モビリティが走行すると想定されており、普及を進めるには車両の提供能力、24時間体制・長期運行での安全確保、事業効率の確立が不可欠だ。その上で今回の実証では、特に安全性と事業効率の検証に焦点を当てると説明した。
実証は、みなとみらい・桜木町・関内を含む市街地エリアにて、2025年11月27日から2026年1月30日までの約2カ月間実施。セレナがベースの自動運転車両を使用し、セーフティドライバー同乗の自動運転レベル2相当で運行される。
乗降地は、横浜駅から石川町駅周辺の26カ所に設置予定で、乗客は乗車アプリで予約後、2次元コードで認証し乗車する。一般モニターは「Easy Ride」Webサイトで約300名募集される。2025年度中は5台、2026年度には最大20台まで増車し、多台数運行の方法を検証する。
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注目されている技術のひとつが、複数台の自動運転車両を安全に運行するための遠隔監視センターである。監視センターはみなとみらい地区の「PLOT48」に設置する予定で、自動運転システムの監視、フリートマネージメントによる配車・運行管理、無人運行における車内の乗客ケアの3機能を担う。
本実証で得たい成果について、土井氏は「自動運転による日常の移動をぜひ、横浜だけではなく、日本全国の皆さんにも認知していただきたい」と述べた。さらに、多台数運行に向けた移動設計・安全設計・効率設計のノウハウを蓄積していく考えを示した。
具体的には、移動設計では乗降場所や利用方法、車内コミュニケーションの検討を行い、安全設計では連携各社の役割分担や点検リスト、教育・緊急対応マニュアル、無人乗降の運用ルールを整備する。効率設計では遠隔監視の省人化や異常時対応体制を構築し、安定した運行を目指す。
日産、移動サービス領域挑戦の意義深い一歩へ
今回の実証では、日産が全体を統括し、自動運転車両提供および運行を担当する。BOLDLYは、車両の点検や点呼、リアルタイムの走行映像監視、緊急時の乗客対応記録などを一元管理する自動運転車運行プラットフォーム「Dispatcher」を提供。プレミア・エイドは、運行車両のスタックや乗客の体調不良といったデジタル技術だけでは解決できないトラブルの現場対応を行う。京急電鉄は、交通事業者視点での運行・運用体制構築の支援に加え、地域開発や地域モビリティ開発の知見を共有する。実際の運行は、日産と三菱商事が共同出資する関連会社Moplusに委託される。日産のエスピノーサ氏は、今回のプロジェクトを「移動サービスという新しい領域に挑戦する意義深い一歩」と位置付ける。また、「国内に向けてデザインされた技術とサービスを全国の多くの地域、そして将来的には世界に広げていき、モビリティの革新につなげていきたい」と意欲を語った。
なお、日産はすでに2026年1月から神戸市での自動運転モビリティサービス実証実験開始を発表しており、横浜市での知見を活かす見込み。
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BOLDLYの佐治氏は、1人で複数台の車両を安全に見守る「1対N運用」の実現に取り組む考えを示した。20台同時運行という国内最大規模の実証に対しては「これまでの全国50台を超える監視実績により培ったシステムの開発力や運用のノウハウを活用して貢献したい」と述べた。
プレミア・エイドの吉澤氏は、経験豊富なオペレーターが自動運転車両を監視し、リスクを早期に認識して対応する体制を構築する方針を明らかにした。あわせて、「自動運転車両の普及を促進し、交通事故のリスクを減少させ、社会全体の安全性向上に貢献していきたい」と話した。
京急電鉄沿線エリアマネジメント構想「newcalプロジェクト」も手掛ける京急電鉄の川俣氏は、自動運転による地域の移動課題解決に大きな期待を寄せた。その上で、「エリアマネジメント活動に基づく地域特性に応じたモビリティの整備、そして交通事業者の視点で運行や運用体制の構築に向けて尽力していきたい」と語った。
また、経済産業省の製造産業局自動車課長を務める伊藤政道氏も来賓としてあいさつを行い、次のようにコメントした。
「本実証の取り組みが、今後の日本における自動運転タクシーのモデルケースになると共に、経済産業省の事業における標準モデルの構築にも貢献いただくことを期待している」。
セレナベースの自動運転車両、レベル4を見据えた設計
会場では、実証に使用される自動運転車両の展示も行われた。概要説明の中で、土井氏は車両のデザインコンセプトが「どこでもドア」であると明かした。リアドアに四角い枠がデザインされており、「ドアから中に入ると、そこはもう横浜」というような移動を実現したいと話した。車両には多数のカメラが搭載されており、そのうち自動運転制御に利用されるのは14個である。運転席上部には6個のカメラがあり、そのうち3個を用いて異なる距離にある信号機を検出している。その他、LiDARは6個、ミリ波レーダーは9個搭載。バンパーにはマイクを内蔵し、緊急車両のサイレンを検知して緊急車両に道を譲る機能も備える。
ハンドルの横には黄色の緊急停止用スイッチが設けられている。また、助手席の窓際に8本の通信アンテナがあり、通信が途切れないように4回線を利用している。助手席背面にはタッチパネルモニターが設置され、乗客向けに利用方法など各種情報を表示する。
実証ではセーフティドライバーが乗り自動運転レベル2で運行されるが、車両自体は2027年以降の自動運転レベル4実現を見据えた設計となっている。運用面や遠隔監視、現地対応サービスと連携しながら課題の抽出に取り組む体制だ。