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T2、2027年のレベル4物流実装へ切替拠点、遠隔監視を拡充【JMS2025】

2025/11/19(水)

T2は、ジャパンモビリティショー(JMS)2025に自動運転トラックを出展した。2027年にレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービスの開始を目指しており、既にレベル2での商用運行を実現している。プレスブリーフィングでは、参画企業の拡大や切替拠点の設置、レベル4実装に向けた展望を発表した。

2027年、レベル4で幹線輸送サービスの開始へ

T2 代表取締役CEO 熊部雅友氏

T2 代表取締役CEO 熊部雅友氏


深刻なトラックドライバー不足が物流業界の大きな課題だ。こうした社会問題を解決するため、T2は2027年にレベル4自動運転トラックを用いた幹線輸送サービスの実現を計画している。

その前段階として、7月に国内初となるレベル2自動運転トラックを用いた商用運行を開始した。佐川急便、西濃運輸など大手物流会社5社を対象に、関東から関西間で運行中。

T2の代表取締役CEO 熊部雅友氏は、加工食品メーカー6社の物流を担うF-LINEが、11月から商用運行に参画すると発表。さらに、2026年1月より大和物流が、大和ハウス工業向けの建材などの輸送に自動運転トラックを利用することも公表した。その他、複数社が2025年内の参画を検討中で、T2は2030年度以降には2,000台規模への拡大を目標に掲げている。熊部氏は、「2社の参画を弾みに、今後、商用運行の顧客をさらに拡大していきます。この先の展開にどうぞご期待ください」と話した。


商用運行は平日に毎日行われており、運行本数は約80便、走行距離5万kmを超えた。自動運転区間での無事故・無違反も継続中だ。会場では、商用運行で使用中の自動運転トラックが展示された。車両には複数のLiDAR・カメラ・レーダーが搭載されている。

自己位置の推定にはGNSS(全球測位衛星システム)を使用する。トンネルといった受信環境が悪い場所では、LiDARやIMU(慣性計測装置)、高精度3次元地図などを活用し、情報を照合して位置を割り出す。

KDDIの遠隔監視システムによる運行・安全管理

遠隔監視体制<br>(出典:KDDI WEBサイトより)

遠隔監視体制
(出典:KDDI WEBサイトより)


レベル4での運行に向け、遠隔監視体制の構築にも取り組んでいる。7月には、KDDI・三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)・日本郵便と共に、新東名高速道路で実証を行なった。KDDIが通信ネットワークと遠隔監視システムを提供し、有事の際は三井住友海上が現場対応を担当。日本郵便は、高速道路外の一時待避所を提供した。

KDDIは、その遠隔監視システムをJMSで紹介した。遠隔監視システムでは、車両の状態や周辺情報をリアルタイムで遠隔監視側にデータ送信。高速移動中の配信であるため、タイムラグをあえて約2秒もたせ、映像の遅延よりも安定性を優先している。異常を検知すると、遠隔監視側で画面を切り替え、車両から実際に見える映像とアラート情報を照合。必要に応じて現場対応を要請する。


担当者は、「オリンピックやワールドカップといった国際的な映像伝送の長い歴史があります。そこで培った映像圧縮技術などのノウハウを生かし、通信効率を意識して遠隔監視システムを組めるのが強みです」と話した。

「切替拠点」設置、基幹輸送のさらなる発展

レベル4実現には、「切替拠点」の整備が不可欠となる。T2のサービスでは、高速道路を無人、ICから顧客の拠点までの一般道を有人で運行する。ドライバーの乗降に必要となるバス停のような場所が切替拠点だ。

T2は、切替拠点を神奈川県綾瀬市の東名高速道路・綾瀬スマートIC付近に設置すると発表した。11月から着工し、完成は2026年2月の予定。同時に5台の切り替えが可能な規模で、物流事業者としては国内初となる。神戸市にも同様の拠点開発を検討中だ。

切替拠点のイメージ<br>(出典:T2 WEBサイトより)

切替拠点のイメージ
(出典:T2 WEBサイトより)


次の展開として、高速道路だけでなく、基幹物流拠点への自動運転トラックの導入にも着手している。本格運用を見据え、7月に三菱地所と建物内の走行実証を実施した。高速道路上だけでなく、基幹物流拠点の内部でも無人走行が可能となれば、さらなるシームレス輸送や省人化につながる。

さらに、三井倉庫ロジスティクスと連携し、クロスドックと自動運転トラックを組み合わせた、混載輸送の実証も9月に行なった。クロスドックとは、複数荷主の荷物を一時保管せず、物流拠点で仕分け・出荷する仕組み。実用化すれば、トラックの稼働率や積載効率の大幅な向上が見込まれる。

運送会社、荷主と協力して日本の物流を支える

運賃は取引先企業ごとに協議の上、個別に設定している。レベル4実装後に運賃が上昇する可能性に関して、T2の担当者によれば、物価動向や運行頻度の最適化を踏まえ、安定した価格水準で提供できる体制を目指す。ユーザー各社からは「ドライバー確保が困難な中で、大きなポテンシャルを感じている」といった好意的な反応が寄せられていると紹介した。

一方で、自動運転は周辺車両の状況などの影響により、手動運転に比べて出荷から到着までのリードタイムが劣るのではとの懸念もある。担当者は、「将来的に2,000台規模で24時間365日運行できる体制を整えれば、大きな影響は出ないと考えています。また、基幹物流拠点やクロスドックといった機能で補完すれば、より柔軟なスケジュール対応も可能になります」と述べた。

既存の運送事業者からの反応についても、担当者は次のように話した。「自動運転トラックが対応するのは長距離の幹線輸送だけで、全てを担えるわけではありません。そのため、運送事業者の方から『仕事を奪うのでは』というイメージを持たれることもありますが、決してそうではありません。長距離輸送の支援を通じて車両の回転率が向上し、毎日車庫に戻り24時間往復できれば、収益性も高まります。私たちのコンセプトは、既存の運送事業者と協力しながら、共に物流を支えていくことです」。

また、熊部氏はビジョンをこう語った。「物流危機に真正面から立ち向かい、新たな解決策を創造・提示します。ステークホルダーの皆様と連携し、商用運行の拡大とレベル4の実現により、日本の物流を支えていきます」。

(取材・文/門脇希)

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