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伊藤慎介の “Talk is Chap” 〜起業家へと転身した元官僚のリアルな産業論  第2回 日本のものづくりの底力を日本人は活かしきれていないのではないか

2017/11/22(水)


ドリームスデザイン社の粋な計らいが重要なデザイン変更につながった

rimOnOは現在のプロトタイプまでに2度のデザイン変更が行われている。

起業当時である2014年9月頃のデザインは図1であり、布製のボディと可愛らしさを実現すべく最初にデザイナーの根津が提案してきたものだった。その前提で三次元図面として作成されたのが図2である。私自身はこのデザインが気に入っていたのであるが、布製ボディを自ら提案した根津としては、このデザインではボディ構成が難しいのではないかと自問自答し始める。

 
 
そして、2015年4月に根津がデザインしたのが図3である。下部の図面にあるような骨格に布を張っていけばボディが構成されるという構造であり、以前のデザインと比較して縫製やボディ構成が圧倒的に容易になっている。

一方で、私としては可愛らしさが失われたと感じており、このままでのデザインで進めるかどうかを悩み始めていた。

 
 
そのような中、設計の打ち合わせのために2015年5月にドリームスデザイン社を訪れた私と根津は突然のサプライズに驚かされた。なんと、1:1スケールの模型が会議室に置かれていたのだ。

奥村氏によると、現状のデザインのままで進めるかどうかを悩んでいた私の気持ちを察し、車両の全体イメージをつかみやすくするために、ゴールデンウィークの休みを返上し、社員総出でホームセンターなどの材料を使って手作りで完成させたというのだ。(図4)

この粋な計らいにわれわれが感動したのは言うまでもない。

模型に乗り込むことで実物の具体的なイメージがつかめた根津は、図5のように、ホワイトボードに可愛らしさと布製ボディを両立させる新しい車両イメージのスケッチを描き始め、図面に修正のラインを入れ始めていく。

 

デザイン変更の際の過程


こういう過程を通して2度目のデザイン変更が行われ、その翌月である2015年6月に現在のデザインが誕生したのである。(図6)

 

シート加工会社のビー・クラフト社が手掛けた「布製ボディ」

紆余曲折を経ながら3度目でようやくデザインが完成したrimOnOであるが、果たしてこのクルマを実際に作ることができるのか、データで見るような可愛らしさは本当に実現するのか、世の中にない新しいプロダクトに挑戦している経営者としては密かな不安を抱えていた。

詳細設計が終わり、2016年の年明けからrimOnOは製作フェーズに入る。

布製ボディというこれまでにはない斬新なボディの製作については、奥村氏が以前から親しくしていた愛知県豊田市のビー・クラフト社に依頼することとなった。

 

ビー・クラフト社の永谷社長(右)と縫製を担当した森下氏(左)


ビー・クラフト社は自動車用シートの型取り・縫製・製作などを手掛けるシート加工会社であり、自動車用シートの技術・ノウハウについては定評のある会社である。

しかし、自動車用シートで数々の輝かしい実績があるビー・クラフト社であっても、ボディを自ら製作するのは初めてだったようである。

奥村氏によると、rimOnOの布製ボディの製作を持ちかけられたビー・クラフト社の永谷社長は、面白そう、やりましょう!と二つ返事で引き受けたそうだ。

 

布製ボディの型取りの様子


できあがったボディパーツ


しかし、実際に布とウレタンでボディを構成しようとすると曲線をきれいに出すことが難しい。そこで「理想を現実に」すべく、奥村氏と鳥羽氏がビー・クラフト社の現場に貼りついて縫製を担当した森下氏と共に何度も試作を重ねて一緒に作り上げたと聞いている。

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