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伊藤慎介の “Talk is Cheap” 〜起業家へと転身した元官僚のリアルな産業論 第5回 「自動走行」を理由に先送りされかねない地方の高齢者の移動問題

2017/10/30(月)


高齢者からの問い合わせが絶えないrimOnO

実際に頂いた声をいくつかご紹介したい。

息子達から、事故を起こし人を傷つける前に運転免許を返上するように言われております。高齢運転者の事故報道に接するたびに、子に従うべき時期なのかなと弱気にもなります。

Rimonoを拝見し、この車なら高齢者が運転しても人を傷つける危険を低く抑えられ、息子達も運転容認に傾いてくれるのではと期待します。(78歳男性)

高齢者で今年の更新時に運転免許証を返上しようと思っています。貴社のrimOnOのHPを拝見し2018年発売と書いてありました。

この車は「普通自動車の免許証」が必要なのでしょうか?必要なら返上は取りやめようと考えています。現在の状況と、将来の見通しをお聞かせください。(男性高齢者)

現在、高齢の母が3度目の足の骨折で入院中です。一昨年までは車の必要を感じず(1人の時は電動自転車で間にあいましたし)母の通院などもタクシーと電車を乗り継いで行くことが出来ましたが、この先、母のリハビリがうまくいって自宅の中は伝い歩きが出来るようになっても、外出時の電車の乗り継ぎを考えると自家用車と車椅子が必要であると思われ、そもそも運転免許を持っていなかった私が、今日、ドライビングスクールの申し込みをして帰って来たところで、偶然御社の車を取り上げた番組を拝見しました。

元々自動車文化圏とは無縁で生活して来たので、車で動くのは距離感の体感できる生活圏内のクリニックや店舗くらいで、遠出や高速道路に乗る気も無く、リモノを拝見して「私の身の丈にあってて良いなあ」と思いました。私も「実際免許を取る所まで辿りつけるか分からないなあ、『走る凶器』になりうる車なんて操れるのかなあ」と思っていましたが、御社の車が実際に購入出来るのであれば、励みにして頑張ろうと思います。(50代半ば女性)

半年前に脊髄骨折の手術をしたのですが、医者から軽自動車を運転するのはやめてほしいと言われています。一方で、母の介護のために自分が運転して連れて行く必要があり、毎回主人にお願いせざるを得ないことを心苦しく思っています。リモノのことを知り、すぐに買いたいと思って電話しました。(65歳女性)

ここに紹介したのはほんの一部の声であるが、自らの移動のためにクルマの代替手段としてrimOnOを使いたい70代男性、ご両親など介護者の送迎のためにrimOnOを使いたい50代、60代女性からの購入希望が圧倒的に多く、そういう人たちのためにも一刻も早く量産化と市販化を実現しなければならないと考えている。

 

高齢者の移動問題を「自動走行」で先送りするのはやめてほしい

我々が一刻も早い制度整備を要望している「超小型モビリティ制度」。

地方における高齢者の移動の問題に取り組んでいる関係者からも、乗用車や軽自動車からの受け皿となる乗り物は「2人乗り」であることが不可欠であると聞かされた。

実はヨーロッパでは、L6eといって2人乗りの超小型車が市販できる制度があり、国によっては14歳以上であれば原付免許で運転することが出来るようになっている。そこで、当社では日本でもL6eと同じような制度を導入してほしいと要望している。

 

 

モビリティに関する地方の話を聞くと、高齢者に加えて若者が困っているという話を聞く。人口減少で中学校や高校が廃校になると、徒歩や自転車では通えない場所に通学しなければならないようだ。路線バスが運行している場所や時間帯であれば問題はないが、部活に取り組むなどして路線バスが終了する時間帯になってしまうと親が迎えに行かなければならなくなってしまう。そういう若者にとって14歳以上であれば原付免許で運転できるL6eのような制度は確実に救世主となるだろう。

原付免許のような簡易免許あるいは限定免許で小型車を運転できるようになれば、早まって運転免許を返納してしまった高齢者にとっても救いとなるに違いない。

 

高齢者も楽しく移動を楽しめるrimOnO



 

将来的に自動運転技術が確立し、無人の自動走行車がいつでもどこでも迎えに来てくれる状況を実現しようとするビジョンは否定しない。しかし、320万キロメートル以上も実走行実 証を続けているGoogleであってもまだ無人走行車を運行させるに至っていないということは、地方の高齢者が無人の自動走行車を自由に使える日はまだまだ遠い先だと言わざるを得ない。

 

歳をとってもかっこよく移動できるオープンカー仕様も検討



 

移動に困っている高齢者は日々増え続けている。

自動走行の実現まで先送りするのではなく、超小型モビリティ、シニアカーについての制度整備を進めることで、高齢者に対する最低限の移動手段を提供できる環境を一刻も早く実現してほしいものだ。

 

著者紹介:
伊藤慎介-株式会社rimOnO 代表取締役社長
1999年に旧通商産業省(経済産業省)に入省し、自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの分野で複数の国家プロジェクトに携わる。2014年に退官し、同年9月、有限会社znug design(ツナグデザイン)代表の根津孝太氏とともに、株式会社rimOnOを設立。

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