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AIは交通をどう変えていくか―東京大学特任教授・中島秀之氏に聞く

2017/12/12(火)

東京大学 先端人工知能学教育寄付講座 特任教授 中島 秀之 氏

 公立はこだて未来大学発のベンチャー企業である未来シェアが始めたSAV※1の乗り合いサービスが話題を集めている。配車はすべて自動でAIが行い、バス・タクシーなど車両を限定せずに利用できる新しい交通の形をつくりあげている。SAVの開発に携わり、株式会社未来シェア 取締役会長 CEO、東京大学先端人工知能学教育寄付講座特任教授である日本を代表するAIの研究者・中島秀之氏に話を聞いた。
 

[LIGARE vol.36 (2017.11.30発行) より記事を再構成]

 

AIの側で感じさせられるのは人間のすごさ

――中島先生が考えるAIの定義を教えてください。
AIは研究分野であって、情報技術、ITの一部です。既に完成された技術も人工知能と呼ばれていますが、それらは単なるプログラムだと考えています。AIは単純な作業ではなく、知的な処理を行う分野で、人工知能の「知能」の定義は、情報が不足している時に自らの考えで遂行できる能力です。

40年、AIの研究をしていますが、「人間のすごさ」をとても感じます。機械が人間のように判断し行動するのは難しい。情報が足りない時でも難なく乗り切るのが人間です。今のコンピューターではできないので、情報が足りない時はこうしなさいと教えておく必要があります。

最近話題になっているディープラーニングは、今まで学習したものから一般化して応用して、教えたこと以上のことができます。一番、衝撃的だったのはアルファ碁です。NHKの囲碁の番組で、人工知能が今までプロが打ったことのない手を打ちだして、それをプロが真似るようになったのです。完全な情報があるわけではないのに、新しいことができるようになってきています。特定の分野、例えば将棋や囲碁に限ると、人間より上手くなっています。

AIを使わなくてもいい、いわゆるコンピュータープログラムの延長線上では、AIに近いことができるようになってきました。一番良い例がエクセルの表計算で、人間は5×5ぐらいの計算であれば容易にできますが、例えば3桁×3桁になると間違えが増えます。一方でITはすんなりやってのける。今のエクセルが、もう少し複雑な判断をするようになると、だんだんAIに近づいてきます。

 

人間の実体験による学習にはAIは勝てない

――交通の分野でAIはどのような役割を担うでしょうか。
交通の分野では、電車のダイヤを調整するのは、コンピューターより人間の方が優れているというのですが、私はそれを疑っています。電車の事故や停電でダイヤが乱れた時は、コンピューターに任せた方が上手くいくのではないかと思っています。エクセルの延長線上で、車両の場所や目的地への到着時間を全部情報として入れておけば、いろいろ制約がある中で何をすればいいかということをコンピューターの方が上手く判断できるはずです。

ダイヤの乱れを直す時に人間の方が優れていると言われるのは、人間はNという条件があった時に、今はどの項目を優先するべきかの判断ができるからです。例えば、時間の遅れを最小限にすればいいのか、特定の駅で留まっている人をはける方が大事なのか、といった判断ができるのが人間です。人間が臨機応変なのは、生活の中での体験に基づいて大事なことと大事ではないことを判断しているからです。例えば、会社で働く人、買い物に行く人について、人間は教えなくても知っているけれど、プログラムは電車のダイヤのことしか知りません。人間とコンピューターはそこが違います。

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