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トヨタ26年に専用電池、車台のレクサスBEV開発、マルチパスウェイ維持

2023/2/14(火)

2月13日の会見に登壇した4月1日からの新経営陣5人

左から新郷和晃氏、宮崎洋一氏、佐藤恒治氏、中嶋裕樹氏、サイモン・ハンフリーズ氏

トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は2月13日、社長に就任する予定の佐藤恒治執行役員ら4月1日からの新経営陣が記者会見し、「2026年を目標に電池やプラットフォームなどすべてをBEV最適で考えたレクサスブランドのBEVを開発する」と明らかにした。
同時にBEV一辺倒ではなく、世界の顧客に多様な選択肢を提供する全方位の「マルチパスウェイ」を堅持する方針も示した。

BEVとマルチパスウェイ「急速な方向転換ではない」


佐藤氏はエネルギーセキュリティを視野に入れたクルマづくり、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することがトヨタの使命とし、世界のエネルギー状況がさまざまだからこそ世界の顧客に多様な選択肢を届けるマルチパスウェイに取り組むとした。

その上でマルチパスウェイにおいてBEVも重要な選択肢として挙げ、「機が熟した今、従来と異なるアプローチでBEVの開発を加速する」と述べた。

一方、エネルギーやカーボンニュートラルを、ワンソリューション(ただ一つの解決法)で解決できる問題ではないと強く思っているとし、「『トヨタがBEVに急速に舵切り』では全くない。どちらかというとコミュニケーションが浅かったBEVについてもう少し具体的な発信をしたいと思った」と新BEV開発を明らかにした意図を語った。

2021年12月開催のBEV戦略説明会で公表した、30年にレクサス100万台、トヨタ350万台を目指して段階的なBEV普及に努める考え方は変わらず、レクサスがBEVづくりを先導し、学んだ内容をトヨタに反映させることになるとの予測を示した。

会見に応じる佐藤次期社長

会見に応じる佐藤次期社長



また、事業・販売プレジデントを務め、4月から副社長とCFOを兼務する宮崎洋一執行役員は、レクサスでトヨタらしいBEVのイメージをつくることが重要とした。同時にトヨタブランドでBEVのほかにもHEV、PHEV、FCEVについても準備の必要があるとした。ブランドを越えてトヨタとして魅力あるクルマを販売し、さまざまな地域で電動化の需要に合わせて現地生産も含めて検討するという。

豊田社長築いた経営を継承「クルマづくりの原点大事に」


会見の冒頭、佐藤氏は4月からの新体制のテーマを「継承と進化」とし、豊田章男社長が13年かけて築いた「商品と地域を軸にした経営」を継承すると発言。

TNGAやカンパニー制導入によって「素性の良いクルマづくり」と開発効率の向上を実現し、グローバルでバランスの良い事業構造に変わったと分析。損益分岐台数はリーマン・ショックのころと比べ3割以上も改善したとの成果を確認した。

また、「もっといいクルマをつくろうよ」という価値観が社内に浸透したことを「何よりも大きな財産」と表現。議論よりも現場でまず行動するクルマづくりの原点を大事にする会社、「クルマ屋」に変わってきたとし、「4月から『豊田章男経営』を新体制で実践する」とした。

佐藤社長を含め8人の執行役員で新経営を推進

佐藤社長を含め8人の執行役員で新経営を推進



モビリティ・カンパニーへの3テーマと重点3事業


また、佐藤氏は新体制が目指す進化を、社長交代の会見の場でも頻出した「モビリティ・カンパニーへの変革」とした。そのために「電動化」「知能化」「多様化」の3つのテーマがあり、それぞれBEV開発の加速、ソフトウェア基盤Areneの開発、多様なニーズに対応するクルマづくりなどの課題に取り組む。

また、3つのテーマ実現に向けて「重点事業の3本柱」を挙げた。

1つ目は「次世代BEVを起点とした事業改革」で、「クルマの構造を合理化し、モノづくりから販売・サービスまで事業のあり方を大きく変えていく」。

2つ目の「ウーブンの取り組み強化」では、社会インフラまで含めてモビリティのあり方を考え、トヨタとウーブンが一体となってAreneの開発を加速させる。また、モビリティのテストコースの街、ウーブン・シティでの実証実験を進めていく。

3つ目は「アジアのカーボンニュートラルの実現」。タイ最大の民間企業CPグループとの協力関係を軸とし、産業や国を越えた連携で電動化やモビリティの実証を進める。

チーム経営柔軟に変化


新体制では3つの重点事業についてチームで具体的に詰めていく。佐藤氏は「適材適所」「肩書より役割」の考えを根底に置き、「サッカーのチームのように柔軟にフォーメーションを変えていく」チーム経営を行うとした。

その中で、現在、副社長・執行役員を務める3氏は4月1日より重点3事業の指揮を現場で行う。

近健太氏はウーブン専任のCFOとしてArene開発、ウーブン・シティに取り組む。前田昌彦氏はアジア本部長として「新興国らしいカーボンニュートラル」「CASE技術の社会実装」をテーマにアジア戦略をけん引する。桑田正規氏はチーフプロジェクトリーダーとしてレクサスのBEV事業戦略に取り組み、BEVを軸とした九州の生産体制の再構築も担当する。

「若いチーム」の新経営陣。こうしたポーズで撮影も

「若いチーム」の新経営陣。こうしたポーズで撮影も



執行役員8人は「商品と地域を軸にした経営」を実践する。

中嶋裕樹氏と宮崎洋一氏は新たに副社長に就き、商品と地域を軸に統括。北米本部長の小川哲男氏と中国本部長の上田達郎氏は新しく執行役員となり地域軸の経営を推進する。

サイモン・ハンフリーズ氏は佐藤氏の後任のチーフブランディングオフィサーとしてブランドづくりを統括する。トヨタコンパクトカーカンパニーのプレジデントを務める新郷和晃氏は、担当にチーフプロダクションオフィサーが加わり、競争力のある生産体制を推進する。

佐藤氏は社長の役割を「キャプテンとしてチームの力を最大化すること」とした。また、経営陣について「自分の役割を限定的に考えるのでなく、いろいろなことをみんなで考えて行動する」ことが重要とした。
なお、「どんな社長でありたいか」との質問に対して「クルマをつくり続ける社長でありたい」と答えた。

※画像はすべてトヨタ提供

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