公共交通×トヨタでMaaSを考える Ha:moが創るモビリティの未来
2018/10/5(金)
MaaS(Mobility as a Service)という概念が、自動車メーカーや交通事業者の間で浸透している。当セミナーでは、交通事業者や自治体の担当者を対象に多様なモビリティサービスの活用と街づくりをテーマに議論を行った。日本では、いち早くトヨタ自動車(以下、トヨタ)が「Ha:mo(ハーモ)」というモビリティサービスを提供し、東京や豊田市、岡山市などで導入を進めてきた。そこで得た経験をもとに、マルチモーダルな交通サービスの構築と自治体の交通政策との連携の必要性について講演した。これまで地域の交通を支えてきた交通事業者にとって、次の一手は何なのか。高齢化が進む中、自治体は今後どのような交通政策を行っていく必要があるのか。トヨタ自動車株式会社MaaS事業部(旧:ITS企画部)早田 敏也氏(以下、早田氏)の講演から紐解いていく。
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MaaSが議論の的になる背景とは?
MaaSの概念が大きな広がりを見せている理由は、世界的に移動サービスへのニーズが高度化していることだけではない。特に日本では、少子高齢化社会で迎え浮き彫りになった移動困難者への課題解決や人手不足への対応が迫られている背景がある。そして、これらの社会課題に直面しているのが、路線バスなど地域交通に携わる事業者たちだ。地域のニーズに応えるため試行錯誤を続け、さまざまな(コミュニティバス、オンデマンド交通、自家用有償運送、相乗りなど)モビリティサービスが生まれた。一方で採算の悪化や人手不足のあおりを受け、減便や廃止をせざるを得ない事業者も多く見られ、持続可能なサービスモデルを模索している状況だ。個々のサービス同士を上手く統合させることも見据え、ユーザーにとって本当に利用しやすいモビリティサービスを構築するための議論が始まっている。トヨタのマルチモーダルへの取り組み
トヨタ自動車(以下、トヨタ)は、マルチモーダルなモビリティサービスの構築を、他社に先駆け取り組んできた。その一つが「Ha:mo(ハーモ)」と呼ばれる、トヨタ「COMS(コムス)」のシェアリングによる次世代の交通システムだ。2010年にコンセプトを立案し、2012年の豊田市での実証を皮切りに、グルノーブル(フランス)、東京、沖縄、岡山、バンコクとさまざまな都市で実証実験と事業化への取り組みを積み重ねてきた。背景には自動車メーカーとして抱える課題があった。日本では自家用車への移動の依存度が高水準である一方、大きなボリュームを占めるのは近距離かつ少人数での移動である。それが都市の渋滞や駐車スペース不足などを引き起こし、都市交通システムの大きな課題となっていた。そうした課題解決の取り組みの一つとしてトヨタが取り組んだのが、新たな都市交通システムHa:moだ。