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対談:テイ・エス テック&世界ゆるスポーツ協会 「座る」を「楽しい」体験に。クルマにとどまらない愛されるシートの可能性(1/2)

2019/10/3(木)

TSテック商品開発部の郭裕之氏(左)と一般社団法人世界ゆるスポーツ協会代表の澤田智洋氏(右)

テイ・エス テック株式会社(以下、TSテック)と世界ゆるスポーツ協会(以下、ゆるスポ)は、2019年5月にシート技術と IoT を融合させた「愛されるシート」を活用した、誰もが座ったままで楽しめる新しいゆるスポーツ※1競技「緩急走(かんきゅうそう)※2」を開発・発表した。
車両シートメーカーのTSテックがなぜ「緩急走」を共同開発したのか。その経緯や思いをTSテック商品開発部の郭裕之氏と一般社団法人世界ゆるスポーツ協会代表の澤田智洋氏に語っていただいた。
――愛されるシートが誕生したきっかけは?

郭氏:2016年、当時の社長発令での新魅力商品創出プロジェクトが始まりで、私がリーダーとなって取り組みました。プロジェクトでは問題解決型ではなく、ビジョンを起点としたバックキャスティング思考※3という手法を取り入れました。将来を考える学問を学び、さまざまな有識者の方と出逢い、私たちオリジナルのビジョンを形成した後、その達成に必要となる製品を企画しました。この延長線上で、愛されるシートが誕生しました。

澤田氏:企業内で、ビジョンを創ることを掲げた取り組みがあるのは良いですね。新しいものを創るには一見遠回りに見えることが近道につながることもあると思います。

「愛されるシート」の展示を各地で行っている



――愛されるシートはどういうコンセプトで作られたのですか?

郭氏:私はシートを永く使ってもらいたいと考えていて、永く使ってもらうためには、「あのシートに座りたい」と思われるような「愛される存在」にならないといけない、そういう意味で「愛されるシート」と名付けました。愛してもらうためにシートで幸せを提供できる商品を目指して、「楽しむ」を切り口に、「座る」という体験に新しい価値をつけたいと考えました。

例えば、自動運転車の車室空間の再定義に取り組んでいる企業は多いと思います。車内で映画などが観られたり、仕事ができたりするというのは確かに新しいです。もちろんTSテックでもそのような研究もしていますが、「座る」意味自体は変わっていません。「座ることを『移動のため』から『楽しむため』に変えられたら、『座る』をリフレーミングできる、それがイノベーションだ!」と社内で話したんですが、当時は「評価が難しい」と冷ややかな反応でした(笑)。

澤田氏:見方を変えれば最高の褒め言葉ですね。何かを作り出す時に主流から逸れることは大事だと思います。今、スポーツ業界で流行っているのは最新テクノロジーやセンシング技術を使った観戦拡張やトレーニングで、もちろんこれは重要ですが、みんなが同じ方向に進んでいる気がしています。ゆるスポーツは、テクノロジーを使うなら新しいスポーツを作る方がいいと思って僕らは活動しているので、僕らも業界のトレンドや主流からは逸れている。良くも悪くも競合他社同士、イワシの大群で泳いでいると、Googleやテスラのようなクジラに食べられてしまうかもしれません。

今の私たちは、群れから逸れた小魚同士が一緒に大海を泳ぎ始めているようなものと言えるかもしれません(笑)。逸れているというのは迷子になっているのではなく、私たちは進んでいる先に「美味しい何かがある」と確信しているんですよ。郭さんの場合はそれがビジョンなんだと思います。

※1 ゆるスポーツ:年齢や性別、スポーツの得意不得意、健常者と障がい者に関わらず、誰もが「ゆるっと」楽しむことができるスポーツのこと。

※2 緩急走:TSテックと世界ゆるスポーツ協会が共同開発した座ったままで楽しめる新しいゆるスポーツ競技。「愛されるシート」をコントローラーとして使い、重心移動により画面の中にいるバーチャルランナーを動かして競争するスポーツ。

※3 バックキャスティング思考:将来のありたい姿・あるべき姿を起点として現在を考える思考法。

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