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中国三巨人とモビリティ パイオニア

2017/11/14(火)

2016年10月18日から19日の二日間にかけて、東京でTU-Automotive Japan 2016が開催されました。第8回を数えるTU-Automotiveですが、今回はIoTやコネクテッド・カー、AI、自動運転、ライドシェアなどの最先端企業から発表が行われました。
パイオニアからはカーエレクトロニクス事業戦略部 シニア・スーパーバイザーの田島惠介氏が登壇しました。発表内容をもとに、中国市場における通信、地図、ライドシェアなどの最新動向に迫ります。

[LIGARE vol.30 (2016.11.30発行) より記事を再構成]

三人の巨人“BAT”

中国のICT関連市場において、圧倒的な存在感を誇る三人の巨人がいます。検索エンジンを手がけるBaidu(百度)、eコマースを手がけるAlibaba(阿里巴巴)、メッセンジャーアプリを手がけるTencent(騰訊)はその頭文字をとってBATと呼ばれています。
Baiduは検索エンジンを根幹ビジネスとし、検索エンジン浸透率では93.1%を誇ります。営業収入の9割以上をオンラインマーケティングに依存しており、中国のネット広告での市場シェアは8割に達します。その内、医療関連のネット広告が3割近くを占めているのですが、2016年4月に不正医療広告問題以降、株価が急落し、政府から業務改善命令を受けるなど、苦境に立たされています。

自動車業界に対しては、2015年に独BMWとの協業を推進し、自動運転車の開発に進出するなど、かなり積極的なアプローチを行なっています。同年12月には自動運転事業部設立を発表し、3年後の商用化、5年後の量産化を標榜しています。さらに、2016年9月には同社独自の人工知能ツールである“百度ブレイン”を発表しています。

しかし、先述の不正医療広告問題を受け、大幅な減益だけでなく、人材の流出も深刻で、自動運転分野での取り組みは減速傾向だと見られているようです。

Alibabaはeコマース事業を手がけ、B2Cの天猫、C2Cの淘宝を看板として、ユーザー数は4.8億人に上ります。業績の伸びも好調で、2016年第一四半期の決算では営業利益が前年同期比26%増益となったほか、時価総額でもここ2年間で1.5倍になっています。
自動車分野に関しては特にコネクテッド・カーに注力しています。上海汽車(SAIC)と協力し、独自のスマホOSであるYunOSを搭載したコネクテッド・カーの開発に始まり、2016年7月には初の量産型コネクテッド・カー「栄威 Roewe RX5」を発売しています。このコネクテッド・カーをはじめとする同社および上海汽車のコンセプトは「ログインするクルマ」と言えるものです。駐車場や通行料金なども車内で決済できる仕組みを開発しており、自動車の所有概念にも影響を与えるかもしれません。

Baiduのように5年スパンでの長期計画は重視しておらず、むしろ近々でのフィードバックを重視している傾向にあるようです。好調な業績もあってか、同社と上海汽車との合弁には急速に人材が集まっているようです。

TencentはWeChat(微信)というメッセンジャーアプリを主軸にネットゲームやネット広告などを手がけています。WeChatは誤解を恐れずに言えば、中国版LINEといったところでしょうか。1日に2.8億分の通話がされているといいますから驚きです。その成長も著しく、2年間での時価総額の伸びは約1.7倍とAlibaba以上。2016年には香港市場に上場し、8月時点で時価総額では一時Alibabaを抜き、アジア企業としてはトップとなりました。
自動車業界に対しては、Lubao Box(路宝盒子)やMy Car(我的車)などを通してサービス展開に乗り出していますが、2016年ではともに不調続きのようです。特に地図分野へのアプローチが積極的で、2014年にNavInfo(四維図新)の株式11.28%を取得して第2位の株主になったほか、2015年のhereの買収にも参加しています。

結果的には独3社連合が買収に成功しましたが、hereとの協業関係は続けています。特にNavInfoに対しては出資比率を上げて筆頭株主の座を狙っているようですが、国の管理下にあることから難航している模様。2017年にまた何か動きがあるのではないかと見られているようです。

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