PdCとunerry、ビッグデータを活用したまちづくりを支援
2022/5/25(水)
株式会社public dots & Company(以下、PdC)と株式会社unerry(以下、unerry)は、富山市、兵庫県加古川市(以下、加古川市)、神奈川県小田原市(以下、小田原市)において、まちづくりの支援を行った。unerryが5月20日付のプレスリリースで明かしている。
全世界的な潮流である「脱炭素社会の実現」を目指し、日本でも2030年度における温室効果ガス46%削減、2050年カーボンニュートラルなどの目標が掲げられている。CO2排出量削減には、環境保全や再生可能エネルギーへの転換、都市のコンパクト化や持続可能な公共交通網の整備も寄与すると期待され、さまざまな取り組みが実施されている。国際社会を構成する一員として、各自治体が取り組む「脱炭素まちづくり」が重要性を増す中、注目されているのが「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)」と呼ばれるエビデンスに基づいた政策形成だ。今回の取り組みは、環境省が実施した「令和3年度 移動データを活用した地域の脱炭素化施策検討業務〜データ駆動型脱炭素まちづくり〜」の一環として行われた。同プロジェクトは、令和2年度に続く2年目であり、富山市、加古川市、小田原市において地域移動の「見える化」および、持続可能なまちづくりに向けた施策効果をunerryの運営するリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」に蓄積された移動データを解析している。初年度の成果を踏まえた手法の確立を目指すとともに、3自治体が抱える地域課題解決に向け、官民一体で取り組んだ。
富山市では、「ウォーカブルなまちづくり促進のための効果的な施策」をテーマに掲げた。中心市街地に車で訪れた人を対象に、来訪後の移動の調査を行っている。また、滞在場所の可視化も行い、ウォーカブルな中心市街地にすべく施策を検討した。この調査により、車での中心市街地来訪者は、その後の徒歩移動範囲が半径600m程度に限定されていることが明らかとなった。さらに、徒歩移動エリアの拡大に向けた「具体施策を強化すべき重点箇所の抽出」や「進行中である施策の検証」にも有効となる可能性が示された。
加古川市が掲げたテーマは、「中心市街地の活性化と車移動から公共交通利用へのシフトに関する施策」だ。駅周辺来訪者の来訪手段、滞在場所、滞在時間を調査している。また、図書館の移転前後の利用者変化を比較し、図書館の駅前移転効果による人流変化を把握した。
この調査により、駅周辺エリアへの来訪者の基礎的理解ができたことに加え、図書館を駅前商業施設へ移転したことによる若年層の増加や鉄道を利用した来訪者の増加など、施設利用者の変化・移動手段の変化などが明確化された。さらに、施策の効果を定量的に把握している。
小田原市では、「公用車のEV化と地元住民へのシェアリングに向けた施策」をテーマに掲げ、休日における市所有施設周辺の自家用車低利用頻度を調査し、人流データを可視化した。EVシェアの候補地を、候補地周辺における車以外による外出率やターゲット層の移動状況などで定量・定性評価することで、データにもとづく候補地選定が可能であることが示された。
また、今回の取り組みでは、いずれの自治体においても、移動実態を可視化したことで、立場の異なるプレイヤー同士がエビデンスにもとづいた積極的な議論を交わしている。さらに、令和3年度の成果としては、3自治体の取り組みを通して「施設移転」「表彰制度」「イベント」などハードソフト両面での施策検証においてデータ活用の有効性を得られた。これにより、全国への横展開につながる汎用的な「調査・分析モデルの型」の確立に向けて大きく進捗している。同プロジェクトは、令和2年度、令和3年度の成果を踏まえた上で、今後も継続的に移動データ活用の拡大を目指すという。なお、分析結果の詳細は、以下で公開されている。
http://www.env.go.jp/policy/local_re/r2houkokukai/post_176.html
■環境省 総合政策課 政策企画官 黒部 一隆氏のコメントのコメント
さまざまな分野で活用が進められている人流データは公共が主体となった「脱炭素まちづくり」への活用においても、大きな可能性を有する取り組みであると考えております。車から公共交通や自転車、徒歩などへの移動手段の転換による「脱炭素まちづくり」を始め、ウォーカブル、にぎわいの創出などに向けた具体的な政策づくりに向けて、人流データの見える化とそれらを踏まえた政策立案を支援するためのツールについて整理検討を行ってまいります。