【2023年最新版】安全運転管理者等法定講習の概要 費用や時間から学ぶ目的まで
2023/8/10(木)
安全運転管理者は、その任に就く要件や、法定講習の受講義務、さらに業務内容にいたるまで、実に多様な決まりが存在します。そこで今回は、安全運転管理者の基礎知識や法定講習の概要、そしてその役割の本質まで、徹底的に解説します。
解説にあたり、企業や団体の事故削減・安全運転管理のサポート実績を多数持つ、SSD研究所(株式会社エスエスディ)で取締役を務める野村幸一氏と、営業部長の高林一夫氏に話を伺いました。この記事で得た知識を、ぜひ業務に役立ててください!
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安全運転管理者に関する基礎知識
まずは、安全運転管理者の選任が必要となる条件や業務内容などの基礎知識について、法律で定められている内容を参照しながら解説します。●安全運転管理者とは
「安全運転管理者」とは、社用車を運転する従業員への指導など、自動車の安全運転を確保するためのさまざまな業務を行う担当者のことです。社用車を運用している企業は、保有する台数に応じて安全運転管理者を選任する義務があります。その保有台数 とは、「乗車定員が11人以上の自動車1台」か「その他の乗用車5台以上」(大型・普通自動二輪車は1台を0.5台で計算)と、道路交通法および道路交通法施行規則で定められています。
また、20台以上の自動車を保有している場合は、副安全運転管理者の選任も必要になります。副安全運転管理者の人数は、保有する自動車が20台増加するごとに1人増えます。
まとめると、以下の表のようになります。
●安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者は、管理する従業員に対して、安全運転教育や安全運転管理業務を行わなくてはなりません。安全運転管理者の業務内容は、道路交通法施行規則に規定があり、具体的には以下の項目があります。・運転者の適性や状況の把握
・運行計画の作成
・交替運転者の配置
・異常な気象時等の措置
・点呼による日常点検の実施・運転者の過労等を把握する等の安全確保
・酒気帯びの有無の確認 (2022年4月施行)
・酒気帯びの有無の確認の記録と保存 (2022年4月施行)
・運転日誌の備え付けと記録
・安全運転の指導
(出典:道路交通法施行規則第九条の十[e-GOV法令検索])
●安全運転管理者等の選任・届出
さらに、安全運転管理者の任に就くには、下記のような資格要件があります。年齢:20歳以上(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上)
実務経験:自動車の運転管理に関して2年以上の実務経験がある者、またはこれと同等以上の能力を有すると公安委員会が認定した者。
欠格要件:無免許運転などの違反をした日から2年を経過していない者(詳細は下図)。
なお、届出は安全運転管理者を選任した使用者(この場合、企業・事業所など)が行い、選任した日から15日以内に、自動車の使用の本拠地を管轄する警察署を経由して、公安委員会に届け出る必要があります。
届出に必要な書類(警視庁の例※)
(1)安全運転管理者に関する届出書
(2)本人の戸籍抄本または本籍地記載の住民票の写し
(3)本人の運転免許証の写し
(4)本人の運転記録証明書(自動車安全運転センター発行の、3年間もしくは5年間のもの)
※出典:警視庁「安全運転管理者等法定講習」
【専門家の解説】
高林氏:安全運転管理者については、道路交通法第74条と、道路交通法施行規則第9条などにおいて、選任基準(車両の台数)、基本的な業務内容、資格要件が規定されています。野村氏:2022年4月から、「運転前後に運転者の酒気帯び・酒酔いの有無を“目視等で”確認すること」、さらに「その記録を1年間保存すること」が新たに義務付けられました。
なお、「アルコール検知器」を使用した記録の義務付けは、当初は2022年10月に施行される予定でしたが延期となり、2023年12月に施行される見通しです。
安全運転管理者等法定講習とは?
続いて、安全運転管理者が受講しなければならない法定講習について解説します。なお、学ぶ内容などの詳細については都道府県ごとに異なる場合がありますのでご注意ください。●安全運転管理者等法定講習の概要
自動車の使用者は、道路交通法※により、安全運転管理者に法定講習を受講させることが義務付けられています。講習は年一回受ける必要があり、講習受講の時期が近づくと事前に通知が届きます(なお、安全運転管理者以外の代理受講は認められません)。この法定講習とは、道路交通法に基づいて公安委員会が行うもので、安全運転管理者が安全運転に必要な知識や基本業務を習得するために実施されます(具体的な講習内容は後述)。
●安全運転管理者等法定講習にかかる費用と時間
受講費用:4,500円(非課税)
受講時間:6時間
受講形態:都道府県によっては、オンライン受講と会場受講を選択できる場合あり。
講習日程(例):2023年7月大阪府の場合、月~金曜の平日に10会場で計12回実施。
受付時間は9時30分から。講習は10時ごろ~17時15分ごろ。
※日程表の参照元:大阪府警察「令和5年度安全運転管理者等講習の日程」
●法定講習の受講には本人確認と書類の提示が必要
法定講習の会場では、本人確認が実施されます。受講当日に会場受付で提示する必要がある書類は以下の通りです。なお、安全運転管理者証(副安全運転管理者証)が不要な都道府県の場合は、運転免許証などで本人確認が行われます。法定講習の当日、会場で提示が必要な書類
・身分証明書(安全運転管理者証もしくは運転免許証)
・講習通知書
・受講申出書(手数料納付済証の添付)
●受講料は収入証紙などで納付
受講手数料の納付は、各都道府県発行の収入証紙を購入したり、あらかじめ金融機関で納付したりするケースが一般的です(各都道府県の指定に従って納めてください)。収入証紙を購入できる場所は限られていますから、事前に購入しておく必要があります。法定講習の会場では購入できない場合があるので要注意です。【専門家の解説】
野村氏:安全運転管理者の法定講習では、法的な役割についての再確認や、指導上の注意などに関する講義が行われます。これらに加えて、道路交通の現状、交通事故の実態、最新の法令知識、安全運転のための知識、交通事故と賠償などについても取り上げられます。高林氏:具体的にいえば、交通安全に関する講義や映像資料を視聴したり、事故対策に力を入れている企業の実施事例を聞いたりします。実際、どの企業も現場の事故をどう減らすか苦労していますから、企業が取り組む具体的な事例は関心が高いと感じます。
安全運転管理者等法定講習の前に知っておくべき注意点
安全運転管理者の選任基準や資格要件、業務内容や法定講習の受講などが法律で定められているのは、先に述べた通りです。これらの法律に違反した場合、罰則はどうなっているのでしょうか?●安全運転管理者に関する罰則の強化
2022年の道路交通法の改正にともない、安全運転管理者の選任義務違反などに対する罰則が強化されました。安全運転管理者等の選任義務違反や解任命令違反は、改正前は5万円以下の罰金から、改正後は50万円以下の罰金へ、安全運転管理者等の選任・解任の届出義務違反は、改正前は2万円以下の罰金から、改正後は5万円以下の罰金へ、それぞれ強化されました。
また、安全運転確保のための是正措置命令違反が新設されました。これによって、公安委員会が是正措置命令を出せるようになり、違反した場合は50万円以下の罰金が課されます。
【専門家の解説】
野村氏:安全運転管理者が業務を行うための必要な権限や機材が確保されておらず、安全運転が確保されていないと認められる場合は、自動車の所有者に対して、是正のための必要な措置命令を出すという規定が新設されました。実際に管理業務が実施できていない環境の企業に対する厳しい指導と取り締まりが狙いです。高林氏:安全運転管理者を選任しないことは、従業員や業務上の安全を軽視していると捉えられ、企業の信用を失い、多くの方面へのマイナスの影響が起こり得ます。また、安全運転管理者が適切に業務を行うには、使用者のバックアップが必要です。これらの点を踏まえて取り組むことで、より安全な環境づくりに寄与できると考えます。
安全運転管理者が法定講習の経験を現場で生かすには
ここまで安全運転管理者の制度の概要や、法定講習について解説しました。ところで、この法定講習のような社外研修は、「受けないといけないから」受講している人も多いのではないでしょうか?しかし、「なぜ学ぶ必要があるのか」を知ることで、日々の安全運転管理の業務に役立てられる点は多いはずです。そこで、ここからはSSD研究所の二人に、制度の意義や大切なポイントについて聞きました。
●定期的な講習で動機づけ
――安全運転管理者向けの教育プログラムも提供しているSSD研究所として、前述した法定講習を受ける意義は、どのような点にあると考えていますか?野村氏:「なぜこれらの内容を学ぶ必要があるのか」と疑問を持つ人は多いかもしれません。しかし、社用車を使うことは、交通の場に車という危険物を持ち込んで、それによって利益を上げる行為です。ですから、何ら関係のない一般市民の安全を積極的に確保することは義務であり、当然必要だと考えています。
高林氏:ですから、企業として「交通安全のためにどうすればいいか」を考える場にする、というのが講習の目的だと考えています。企業ごとに業務形態も違えば、車種や台数など、条件は異なりますから、法定講習で学んだ内容の中から、自分たちに合う部分を参考にし、役立ててほしい、ということですね。
野村氏:安全運転管理者に対する動機づけの意味合いもあると思います。例えば、健康診断の前後には、みなさんいつも以上に体を気づかうでしょう。それと同じように、定期的な講習を、刺激を受ける機会とするのはとても重要なんです。
――そうなると、講習を受けた後の現場での取り組みが大切ですね。
高林氏:はい。安全運転管理者の基本業務には、「運転者の適性の把握」と、「安全運転指導」があり、自動車運転に関する技能や知識などを指導しなければなりません。従業員が単独で社用車を運転する際に、積極的に事故防止を図る運転をしてもらう必要があります。
野村氏:そのためには、運転者の状況を捉えて具体的な表現で指導し改善させていくことが必要です。危険予知トレーニング(KYT)などが一つの例ですね。また、ドライブレコーダーを活用して、実際にドライバーが起こした事故やヒヤリハットの事例を使用した教材は、その運転場面を「自分事」と捉える材料になると考えます。
ただ、使用した映像における運転者の特定が容易であると、たとえ社内の運転者同士であっても個人情報の問題があると思いますから、その点は注意が必要です。
高林氏:一方、あまりにオーバーな事故映像は、「自分事」にしづらい面もあります。ごくありふれた事例を見せて、「自分も含め、誰でも事故を起こすリスクはある」と考えてもらえるようにした方がいいでしょう。
▼デンソーテンの通信型ドライブレコーダー「Offseg(オフセグ)」の強み
POINT1: トラブルをふせぐ メインユニットと通信ユニットを分離して名刺サイズに小型化された本体は、運転席からの視界もしっかり確保。さらに、標準設定のカメラは、フルHDで200万画素、2カメラ一体型で約360°の撮影が可能で、高画質に広範囲を録画できます。さらに後方をしっかりカバーしたい場合は、オプション設定でリアカメラの取り付けも可能です。POINT2: 事故をふせぐ 人的事故要因の約7割を占める、安全不確認や前方不注意など主要な12シーンをAIが自動で検出し、管理者や運転者に警告、通知することができます。さらに、信号無視や車間距離不足といった6シーンは、リアルタイムに警告することも可能です。
POINT3: ムダをふせぐ Offsegは、安全運転管理、車両管理の効率的な運用にも貢献できます。個々のドライバーの運転行動を評価する「安全運転診断」や、「運転日報・月報の自動作成」など、日々の業務をサポートする機能を多数取りそろえています。
●大事なのは、安全運転管理者が積極的に関わること
――安全運転管理者が現場で指導する際、どんなポイントを意識しておくべきでしょうか?野村氏:安全運転管理者が指導する上で大切なのが、「フィードバック」です。運転者自身に対するフィードバックを、適切なタイミングで、具体的な内容で伝えると効果が高まります。その意味で、ドライブレコーダーの映像をもとにアドバイスするのは有効でしょう。機械を設置して直ちに事故がなくなるわけではないですから、どれだけ熱心に部下の指導や教育に関与できるか、そういう思いを持てるかが重要だと考えます。
高林氏:例えば、安全運転診断のスコア結果を1枚の用紙で渡されて、それだけで危険な運転行動を改めるかと言われると、難しいかもしれません。結果だけ見て終わってしまうという人がいても、むしろそれが自然だと思います。そこに、安全運転管理者の言葉が合わさることで、1枚の紙の重みが変わってくるんです。
――最後に、安全運転管理者の役割について総括してください。
高林氏:SSD研究所は、主に次のような5つがあると考えています。
・明るく働ける職場環境づくり(安全文化を形成)
・事故の直接・間接コストを下げると同時に損失を減らす
・企業の社会的責任を果たし信用イメージを高める
・適切な安全対策を統括部署に具申し、安全確保の効果を高める
・安全確保の体制、実施を自己評価する
社内の事故防止だけでなく、明るい職場づくりなどの要にもなるのが安全運転管理者です。この5つこそ、我々の考える安全運転管理者の本当の役割だと考えています。
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