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逆説のスタートアップ思考―Supernova―

2017/5/1(月)

Co-Founder & Director(Community Producer) 栗島 祐介 氏

 

変革が求められる時代に、日本の起業家を支援するコミュニティづくりに取り組んでいるスパノバ株式会社(英名:Supernova Inc.)。このスパノバ株式会社で、産業構造・技術構造的にHardな領域を主軸に新産業創出を目指す起業家支援コミュニティ「Supernova」の企画・運営総括を行うCo-Founder & Director (Community Producer)の栗島 祐介氏(以下、栗島氏)に、スパノバ株式会社の取り組みや起業家のおかれている現状、自動車業界に対する見解についてお話を伺った。

※社名は2017年5月11日取材当時のもの。現在は「プロトスター株式会社」に変更している。

 

―Supernovaの事業の概要と取り組み始めたきっかけを教えて下さい。

私は、前職のアジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社Vilingベンチャーパートナーズで代表をやっていたのですが、その中で起業家の支援環境があまりにも悪すぎるということに気づきました。

そこで、それを直していこうと始めたのがSupernovaです。課題としては、まずWeb領域の起業家に支援が特化していて、それ以外の領域に対する支援がなかなか行われていない現実があるということ、そしてもう一つが投資家と事業会社とのアンマッチが多かったなということです。

投資家は何千回と起業家を見たりしているのですが、起業家はたいてい初めて起業したばかりで、そもそもどういった方々が投資し、どんな支援ができ、どういう点で連携できるのかといったことが全く分からないので、これを解消したほうがいいと思い始めました。

私たちがやっていることは、起業家の支援インフラをつくることをミッションに掲げ、その中でも特に、情報の非対称性を解消していき、起業家がベストを尽くせる環境をつくるということです。

Supernova自体は、私の趣味で始めていて、途上国向けの適正技術開発コンテストの運営者として私が携わっていた際に、クレイジーな人がクレイジーなプロセスを経て変なモノを作っていくのを見ていて、どうすればこんな変な人たちが生まれ、このプロセスをもう一度再現するためにはどうすればいいのかということに関心を持ちました。

こうしたエコシステムから起業家がたくさん生まれるのを見ていくなかで、そこに知見というか感覚知を持つようになり、これを再現しようと思ってSupernovaをつくりました。

 


スパノバについて

 

―対象領域がハードテックということですが。

対象領域は「Hard Tech(ハードテック)」という領域で、これは、ハードウェアのHardではなく「困難な」という意味のHardになっています。産業構造、もしくは技術構造的に複雑になっていて構造的に困難な領域を変えていこうというのがハードテック領域です。指数関数的に急成長するビジネスを主に対象として、そこに投資をするのがスタートアップ投資なのですが、Supernovaは、そこで改めて100年続くエコシステムをつくるという目的のもと、1兆円を超える企業をいかに創出できるかといった考え方のコミュニティです。

例えば教育や医療、製造、自動車、宇宙、金融、メディアなど、昔からある古くて大きく変わっていない産業領域に対し、既存技術のインフラを導入することで、産業をつくれる時代になっているのではないかという仮説で動いています。我々のポジショニングは、IT化率が低くて支援成就が早いという点ですが、これにプラスして技術軸がありまして、新しい技術シーズと既存技術の応用モデルという両極端を考えたときに、既存技術の応用モデルを大きな軸とするような独特なポジショニングをしています。

 


Supernovaの対象領域(領域軸)

 

―既存技術の応用モデルを軸にしている理由は何ですか。

古くて大きい産業が、そもそもIT化されていないんですね。2010年くらいまでに培われた技術インフラがそもそも入っていないので、この状態でAI(人工知能)やVRといっても上滑りしてしまいます。なので、新しい技術シーズはあくまでも2010年までのインフラが導入されている企業に限ります。これができていない企業が圧倒的にあるので、まずIT技術インフラを入れ込んだ先にAIを入れて強くすることが必要で、その前段階に至っていない企業がAIといっても刺さらないしずれています。

これを、私たちは隠れた事実と捉えています。新しい技術に皆さん注目しますが、実は違うのではないかという仮説です。

なぜ、ハードテックでスタートアップなのかというと、技術革新の普及の流れは昔から一定パターンで起きているということがあるからです。特定の技術が急速になくなる時期があって、その後その領域が勃興していく。

例えば、1971年以降はインターネットの時代で、関連のものがどんどん出てきて、インターネット領域が勃興しました。そこで、大抵は、すごいお金が入りバブルが起きて、崩壊するというパターンになります。そのときにつくられた技術で再評価されたものが、今度は応用されるというのが以前から行われているパターンです。

そこで、この時代の技術を、遅れている領域に応用するという考え方をしています。AIとかはまだ次の時代なんです。その上で、この遅れている領域は基本的に複雑がゆえに遅れているのだと思っています。起業家はビジネスモデルで切ろうとするんですが、ビジネスモデルが跳ね返されるパターンが多いんですね。ということは、ビジネスモデルは重要でなくて、やってみて構造を理解するというサイクルをぐるぐる回していけるようなタイプの人間が重要です。チームとしての行動理解力があり、その上で領域として、一個切ってみたら横に拡張しうる領域に挑んでいるというのが重要だと捉えています。

つまり、一個でも、ニッチでもいいので挑んでみて、拡張しうるところに違う領域があれば一個独占したことが、その産業を置き換えるかもしれず、と産業をつくる時代に来ているのではないかと捉えています。

 


ハードテック領域に挑むスタートアップ(判断軸)

 

―新産業創出に挑むためのポイントとは何なのでしょうか。詳しくお聴かせください。

私たちは「3つ逆張り」を行っています。 (1)Web領域ではなく時間がかかりそうな、一見面倒くさそうな領域に挑むこと、(2)技術軸として、新しい技術ではなく枯れた技術を応用すること、(3)ビジネスモデルではなく、チームの可能性と領域の拡張性に賭けるということの3つが特徴になっています。

ちょっと間違うと時間がかかりすぎて潰れてしまうようなギリギリのラインに挑みにくい構造があるので、ここにこそブルーオーシャンがあって、かつ産業を置き換える領域があるという逆張りですね。

具体的な運営方針としては、大抵数カ月のプログラムでハンズオンで投資をするパターンが多いのですが、全て真逆にしています。ビジネス化に時間がかかりそうな領域ですので、ファンドを持つことはネックで、超長期支援が難しくなってしまいます。あくまでもマッチングさせるという中立性を維持するポジションにしているというのが一個目。その上で、例えば金融や自動車、宇宙といったときに、事業のライフスパンというものがあります。

これを数カ月のプログラムに押し込んだとして、できることはプレゼンのブラッシュアップぐらいしかありません。これでは意味がないです。卒業という概念を消して、必要なときに必要なものを適切な分だけ最適化して提供するためハンズオフという形にしています。

 


Supernovaの特徴まとめ

 

―具体的にどのように支援していますか?

例えば、週一回会わなければいけないプログラムにすると、運営側も負担がかかり、運営側の都合で起業家を振り回してしまいます。それをしないためにも、ハンズオフで起業家側から必要なときに来てもらうというのが特徴になっています。起業家がしたいような最適な支援環境の構築を促しています。

例えばメンタリング・デーのようなものを月一回で用意して、メンターに来ていただいたりなど、そのようなことはたくさん提供したり、何百社を巻き込んだり、事業者ネットワークや地域ネットワーク、フリーランスネットワークなどをつくって、リソースは何でもある程度は提供できるような環境をつくっています。

しかし、全部の参加不参加は起業家が決めてくれという形にしています。なので、起業家にとって都合のいい存在として、自立・自発で決めるというスタンスにしています。あともう一つ重要なものとしては、Supernova自体で全部できるとは思っていないので、併用していいよと言っています。他の支援環境と合わせ技をすれば、その会社にあった支援環境をつくれるのではないかと思っています。そうすることによって、起業家に応じた個別最適化された環境ができると仮定しています。

あともう一つは、事業領域に特有なリスクは、私たちでは削減できないと思っています。共通のリスクは何とかできると思うのですが、こういうものになってくるとSupernovaにできる気は一切しません。なので、そういうことができる支援環境と合わせてお互い違う領域でできることをしようという形にしています。

あとは、先ほど言ったように中立的な立場でスタートアップファーストで支援するためにファンド化はしていません。あくまでも、スタートアップと投資家を結びつけるコミュニティにしようとした結果、このような逆張りのエコシステムになったという特徴があります。1年ほど試行錯誤して、今の形に行きつきました。

 

―今やっている事業で言いますと、リサーチとスポンサーをやっていて、これからコンテンツサービスが始まるという感じですか?

そうですね、それらを起点として、起業家情報などをsupernovaがほとんど把握しているという状況にしたいと思っています。そこから横展開していって、マトリクス上にビジネスを広げていきたいです。α版は無料で公開していて、助成金の話をまとめていたり、投資家の情報を約1500社載せていたりなど、サービスとして載せておいた方がいい情報がたくさんあるので、それを細かく載せていたりします。

見たほうがいい資料とか、テンプレートとして役に立つようなものなどをいろいろ提供しています。起業家からみたときに、情報が散雑しているのが問題点だと思っているので、これらを全部まとめて掲載しています。投資家でさえ把握できていないのに、本業のある起業家が本業に関係ない情報を把握していることはほとんどありません。これを全部整えるインフラをつくろうというのがsupernovaの今やりたいことです。

 

―自動車業界は国内で最も市場としては大きいところですが、業界の外からみている立場として自動車業界をどう見ているのか、教えてください。

おそらく、今の自動車の延長線上にはないものが到来する予感があります。例えばファッション業界では、超小ロットでブティック型のものがいくらでも低価格でできるような時代が来そうです。自動車においても似たような形で、工場を最適化したり、造り方を変えていくサービスが今後出てきたときは、自分たちで独自の車を造るような、ブティック型のものとかが出てきうる可能性があると一つ考えています。

それに加え、そのような世界が到来したときに、おそらく強豪となるのは、そもそも車は持たないけれど、クルマのことを全部把握していて、どのクルマさえも自分が保有せずシェアリング的に使える会社だと思っています。今、自動運転に向かっていると思うんですが、そこに向かったときに、今の造っている工場の延長線上にある自動運転と、シェアリングというところのある面をとったときの自動運転みたいな二つの方向があると思うので、その二つの向かう方向に興味があります。

昔よりも自動車を構成する部品数って少なくなりますよね。そうなったときに、ハードウェアのソフトウェア化という流れで、どんどんすべてがソフトウェアになっていったときにどうなるんだろうっていうところにも興味があります。

おそらくこのままでは、イノベーションのジレンマが発生する可能性が高いのが自動車業界だと捉えています。そうなるときに、ジレンマを回避するためには既存の組織の枠組みから脱して、いろいろ実験させるということが重要になるかと思うので、そういったことにもし取り組むのであればsupernovaが何かしらの支援はできるのではと思います。

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