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公共交通の未来とは?AIで完全自動配車を目指す未来シェア

2017/5/10(水)

株式会社 未来シェア 代表取締役 松舘 渉 氏

 
株式会社未来シェアは、走行ルートを固定しないオンデマンドかつ、乗合を可能にする車両システムであるSmart Access Vehicle(SAV)を開発している。スマートフォンなどスマートデバイスとクラウドのプラットフォームにより、完全自動で車両の最適な走行ルートを決定し配車するシステムにより、より効果的な配車、低コストな移動、環境に負荷をかけない移動を目指している。

完全自動配車、オンデマンド、ライドシェアなどの長所を融合した新たな公共交通システムを目指す、大学発ベンチャーの未来シェア。その取り組みについて、代表取締役の松舘渉氏に伺った。

 
設立までの経緯
設立までの背景や経緯を教えてください
最初のスタートは、2001年の産業総合研究所で行われていたデマンドバス配車シミュレーションの研究でした。オンデマンドバスがそもそも役に立つのかどうかという内容です。しかし、16年も前の話なので今とは時代が違います。そんな需要があるわけないという時代の中での研究でした。その中でだんだんとコンピューターやスマートフォン、クラウドといった技術的要素が追いついてきて、本格的に研究がスタートしました。

実際には、2011年ごろにITを使った交通の最適化を函館で実証的にやっていこうと「NPO法人スマートシティはこだて」を立ち上げました。そして2013年に函館で実際の道路交通網と車両を使った実証実験を始めました。それ以降毎年実証実験を重ね、デマンドバス配車が役に立つということが実感としてあり、そろそろ研究から社会に旅立たせる時期だろうと気運が高まっていました。そして昨年、はこだて未来大学発のベンチャーとしてでき上がったのが未来シェアという会社です。

研究自体は、最近ブームとなっているAIと、注目度の高い自動運転の連携や模索を研究テーマとして、今後も続けていきます。それとは別に商用化をして、本当に社会で使われることを目指していくため、ビジネス面では未来シェアを中心としてやっていいきます。

 
 
SAVの内容について
──SAVのサービスの仕組みをおしえてください
クラウドとしてのサービスのイメージです。乗りたい人と移動しているクルマの情報をクラウドでマッチングさせて、最適な走行ルートを提供します。車両にはタブレットを載せてGPSで位置を取得するため、今どこを走っているかわかります。

一方ドライバー側がアプリを操作することによって乗降情報を取得しているので、リアルタイムに車両のキャパシティと何人乗っているかを把握できます。そこで乗客がA地点からB地点まで行きたいと要求を出したときに、どの車両が誰を迎えに行き、その後誰を迎えに行くかといったさまざまな組み合わせがある中で、最も効率が良く、全員にとって一番幸せな組み合わせはどれかということを計算し、結果を車両に伝えます。

 
 
──単純に時間短縮の考え方ではないっていうことですね
一番近い車両が迎えに行くというケースもありますが、すでに車両に人が乗っていた場合、その人は到着地点に遅れてしまいます。その遅れと、遠くの空いている車両を廃車することを比べた場合、どっちが得なのか、いろいろな組み合わせがある中で計算しています。

どちらかというと、みんなが不幸にならないという考え方です。したがって、すでに決まっている迎車の順番の間に差し込むこともできますし、前や後ろに差し込むこともできます。

 
──この場合、料金体系はどうなっているのですか
このサービスはオンデマンドのタクシーと、乗合のバスの良いところを統合したものです。しかし、これが実際にサービスになったときに、利用者のニーズをどうやって換算し料金に反映するかという部分はまだ研究段階です。

さまざまな算出方法がありますが、例えば乗った距離に対して公平に運賃を分割したり、急いでいたりゆっくりで良かったりと乗客の希望に合わせた料金の分配をしたりすることも考えています。この中でどうやって公平感を出すかが研究テーマになります。

また、事前に料金を決定するということも大きな課題の一つです。現在、タクシーはメーター制で、最後まで乗らないと料金が分からないシステムになっています。このようなサービスは、実は世の中にほとんどありません。バスでも飛行機でも電車でも、基本的にはサービスを受ける前に料金が分かっています。

なので、どれだけ乗り合いが発生するか分からない中で料金を事前に決定することをやらなければいけません。世の中にSAVのようなサービスがないからこそ、いろいろな料金決定のアルゴリズムを作って実験していきながら、どのぐらい満足が得られ、どのぐらいが適切なのか研究題材としていく予定です。

 
 
──このサービスは貨客混載などにも応用使えますね
そうですね。あくまでも全体車両の最適化であり、地域全体の車両台数を見て全体的に効率が良いか考えていきたいと思うので、バスやタクシーだけでなく、荷物の集配などもまとめて、限られた車両でいかに人もモノも効率良く運ぶかを考えていくというビジョンです。アルゴリズムとしては法制度は度外視しているので、人を運ぶのも荷物を運ぶのもあまり変わりがありませんので、人もモノもまとめて最適化が図れれば良いのではないかと思います。

 
──サービスモデルとしてはどのようなものを考えていますか?
一つ目は、これまでお話ししたリアルタイムの最適化です。現在ドライバーの勘や経験に頼っているところをAIを使って車両全体の最適化を図ることです。また、人を運ぶこと自体がサービスプラットフォーム、インフラになっていくのではないかと感じています。

既存のサービスに対して移動サービスもくっついたらもっと価値があがるという連携を目指していきたいと思っています。例えば塾やスイミングスクールに送迎サービスをセットで提供したり、病院の診察予約をしたら同時に移動手段もセットで付いてきたりと、サービスの連携がこれから出てくるのだと思います。

二つ目は、世の中の送迎サービス自体をシェアすることです。都心部から空港、観光地などをつないで1時間ごとにピストン輸送するよりは、小型の車両でジャストインタイムでくるくる回るほうが利用者にとって便利なサービスになるのではないかと思います。

三つ目は定点発着の乗り合いサービスです。バラバラのところから空港など決まった場所に行ったり、その逆であったりするところを乗り合いの計算でうまく最適化して運んでいくことをやりたいと思います。これは7月から開始しようとしています。名古屋のつばめタクシーと、セントレアと各地点をSAVの計算を使って今日は何台必要だとか、この車両は何時に出発してこのルートで迎えに行くなどを計算しています。

今後規制緩和などが行われれば市街地でのリアルタイムオンデマンドのサービスが使いやすくなると思います。

 
 
 
──その中で未来シェアの立ち位置はどうなるのですか
われわれはドライバーや車両を買ってサービスをするのではなく、あくまでもプラットフォームを提供し、クラウドサービスの利用料をいただくというイメージです。

 
──コミュニティタクシーはどういった立ち位置なのですか
岐阜市にあるタクシー会社なのですが、乗り合いサービスをシステムでやることに注目していただいています。実際に多治見市でシステムを使わない乗り合いサービスをやられているほど積極的な会社で、そもそもバスやタクシーが走らないエリアで、一律定額の乗り合いサービスをやられているところです。このようなタクシー会社さんのノウハウと、大学のAI研究のノウハウを使っています。

 
──自動車メーカーや他の交通事業者と共同で何かやっていくことは考えていますか
この技術を使ってどこかに生かせるようなシナジーが見出せそうなところであれば是非一緒にやらせていただきたいと思っています。通信事業者や交通事業者、または荷物を運ぶというところも可能性があります。

 
 
──サービスの内容も御社が考えられているのですか
そこに特化しようかなと思っています。例えばこのエリアでこのくらいの人口でこのぐらいの利用頻度があったら、何台あれば回るなど、そういったシミュレーションができるようになっています。先ほどの多治見市の話だと、コミュニティタクシーから10第の配車データを全部頂いて、もしオンデマンド型のライドシェアに全部置き換えたら、同じ売上のために何台必要かといったシミュレーションを行っています。繁忙期でも7台あれば10分以内に到着でき、閑散期では3台あれば10分以内に到着できるとすれば、平均は5台です。こういったシミュレーションを行い、サービスモデルを確立しています。

 
──これはカーシェアリング会社でもできないことですね。カーシェアのクルマが全て自動運転になったら良いのでしょうが、料金はカーシェアリングのものなのか、運賃なのか、レンタカー代なのか、わからなくなっていきますね。ありがとうございました。
 
 
AIを使った自動的な最適配車と、タクシーとバスの利点を融合した乗合型のデマンド車両であるSAVは、中山間地域や過疎地などで今後ますます必要になっていく。それが自動運転化されれば、ユーザーのニーズと配車側のプロフィットもマージしていくだろう。新たなモビリティサービスとして今後も注目していきたい。

 

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