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ノキアが考えるコネクティビティを実現するクルマの通信の未来 〜既存の4GLTEなのか未来の5Gを使うのか

2017/11/1(水)


C-V2Xによりつながるクルマ

この4GやLTEの技術を使ってV2Xを実現しようとするのがC-V2Xだ。このCはCellularの略で、これは基地局を配置して無線通信を行なう方式のことで、スマートフォンなどもこの方式で通信をしている。一方V2XとはVehicle to Xである。Xは未知数を表していて、クルマ対クルマ(V2V)はもちろん、ネットワーク(V2N)、クラウド(V2C)、インフラ(V2I)などさまざまなモノと通信を行なう。このC-V2Xに4Gを利用することは、技術的にもシステム展開的にも、すでに他の事業で実用化されているという点で有利性がある。3月には4GLTEによる標準化が発表され、最初のLTEによるV2Xが完成した。

このようなセルラーの技術をクルマに応用していく取り組みを、アメリカ政府関係やEATAというヨーロッパの自動運転やコネクテッドカーに関する団体、5G Net Mobil Projectという団体など、国際レベル、国家レベルでのプロジェクトと関わりながら、コネクテッドカーの将来に向けて応用性を高めていこうという活動を行っている。

続いて、柳橋達也氏よりV2Xの市場動向について説明があった。

 

自律運転を補うコネクティビティの重要性

柳橋氏は、V2XではV2Vのみに関心が向けられるが、それ以外の部分も必要だと述べるV2Pは歩行者などの交通弱者を対象とし、V2Iはインフラや信号機などが対象となる。3月に標準化されたV2Xにはこれら全てが含まれている。また、BMWやAudiといったOEMは、完全自動運転を実現する要素としてセンサー、ディープラーニング、AI、HDマップなどに加えてコネクティビティを重要なものとして挙げている。

一方、完全自動運転は、現在のセンサーを搭載するクルマが賢くなるという方向性は変わらないと言う。コネクティビティがセンサーの置き換えになるという意見があるが、Nokiaではそのような形ではなく、クルマの安全性を司るのはセンサーによる自律運転であり、それを補助する情報をネットワーク経由で与えるという考え方だ。

 

クルマのコミュニケーションの3つの分類



 

V2Xを取り巻く環境

最近のヨーロッパのハイエンドOEMのクルマには、ほとんどにセルラーのモデムがついており、V2Xが実現されている。しかし、それはテレマティクスなど一部の用途に限られたものである。今後、クルマのコミュニケーションは大きく分けて3つになると柳橋氏は言う。1つは安全性に関わるトラフィックセーフティーである。そして2つ目は、信号切り替わりの予測や速度の制御、合流時のアシスタントなどのトラフィックエフィシェンシーだ。そして3つ目が、インフォテインメントである。C-V2Xはこれらを広く網羅していく形になると予測される。

 

V2Xのハイレベルなユースケースの12パターン_その1



V2Xのハイレベルなユースケースの12パターン_その2



V2Xのハイレベルなユースケースの12パターン_その3



 

V2Xの現在の姿と未来の形

現在、V2Xはクルマに搭載されたセンサーによる環境認識などのみであり、4Gなど通信を介したコミュニケーションは主にインフォテインメントやリアルタイム性の低いアプリケーションに使用されている。

そこで将来的に考えられる1つの通信活用の形は、セルラーの基地局にインテリジェンスを持たせ、エッヂコンピューティングによりV2V、V2P、V2Iなどのコミュニケーションを実現するものある。もう1つのコミュニケーション方法としては、LTEによる車車間の直接の通信である。

 

V2Xのハイレベルなユースケースの12パターン_その4
ソリューションの仕組みの概要を表している。CAN-busから得たウインカーや急ブレーキなどの情報を車載器からセルラーの基地局に送り、エッジコンピューティングにより周囲の決められてた距離圏内にいるクルマに対して警告する。



 

このようなV2Xの仕組みを、2018年までに実証実験を繰り返しながら実装していきたいと言う。しかし、それは通信業界に限ったことだ。そこから自動車業界にシステムが引き渡され、さらに自動車業界の観点での試験が始まる。これを考えると、3月に標準化されたC-V2Xが実際に商用化されるまでには3~4年かかってしまう。LTEですら時間がかかってしまうのに、まだ技術が確立していない5Gではさらに実現が遠くなる。そのため、5GAAではその名前に反し4Gからの技術活用の流れとなっていると言う。

西原政利氏も、V2Xの実現に対して「もともとコネクテッドカーは、5Gのユースケースから始まったが、自動車業界では新しいものを開発すると10年の時間軸が必要となる。自動運転を2020年、2022年に実現しようとすると5Gでは遅すぎる。LTEの技術をいかに活用するかが重要」と述べている。

確かに5Gの低遅延性や大容量の伝送は自動車交通に対して大きな利便をもたらすだろうが、早期の自動運転の実現を目指すためには、現在の4GLTEの技術でいかにコネクティビティを実現するかという点に着眼したほうが良いのだろう。

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