タクシー業界は、IT化の遅れや、就労者の平均年齢約60歳という高齢化など、さまざまな課題を抱えている。また利用者の高齢化も同様に進んでいることから、地方では電話での配車リクエストによるタクシー利用が約75％を占めている。

事前確定運賃は、国土交通省が2019年から認可した新しい料金体系だ。乗車前に運賃とルートが決まるため、「到着まで金額がわからない」「渋滞に巻き込まれて料金が高くなるかも」といった点を払拭できる。

しかし、現状では、特定の配車アプリ経由でしか利用できない。そのため、配車アプリが普及していない地域や、スマートフォンアプリを使いこなせない高齢者向けにタクシー事業者がサービスを提供することは困難だった。


電脳交通の事前確定運賃サービスは、これまでのように特定の配車アプリを利用しない。利用者が電話でタクシー配車を注文すると、配車室のオペレーターは運行ルートと運賃を迅速に算出できる。これにより、利用者に運賃を伝えると共に、配車する車両に搭載されたタブレットへ配車指示を送信することが可能だ。

タクシー事業者側では煩雑な計算や操作もなく、利用者側も配車アプリを使わずに利用できる。即時配車・予約配車のどちらにも対応可能だ。割増時間帯が含まれる場合や有料道路を経由する場合、障害者割引など、割引・割増の適用にも柔軟に対応できる。

今回のシステムは、8月以降、広島県のタクシー会社3社が加盟する「協同組合タクシーセンター」で運行を開始する。日本全国の「電話注文経由での事前運賃確定サービス」を提供したいタクシー事業者向けに、システムの提供を開始するという。

なお、電脳交通は、今後全国のタクシー事業者へ順次導入を進め、誰もが事前に乗車料金を把握して乗れるタクシーを推進すると述べている。