ニュース

ダイキン×産総研〈スペシャル対談〉自動運転により変化する人とクルマの関係性

2017/9/28(木)


求められる技術課題を先読みするためには技術者同士のコミュニケーションが重要

三浦氏 自動運転車の開発における技術課題があれば教えてください。

赤松氏 整備されている道路であれば、白線を画像処理で認識する方法が王道です。しかし、車線と前方のクルマの情報があればいいかというとそうではありません。変化する環境をどれだけ安定してセンシングできるかというのが課題です。加えて、どの領域で、どのような条件であればそれが可能かを決める必要があります。また、システムに任せる範囲と人間が判断する範囲の線引きが難しいです。他にも、100キロメートルで1回のエラーなのか、1000キロメートルに1回のエラーなのか、確実性の定義も課題になります。エラーをゼロにすることはできないので、バックアップシステムを作って、少なくとも一定の範囲では心配せずに乗れるという信頼性が求められます。環境認識とそれに付随する安定性や精度が今の技術課題です。

三浦氏 非常に難しい問題ですね。そのようなハードルの高い技術課題に素早く応える環境を整えることは、技術者にとって重要と考え、弊社はテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を2015年11月に設立しました。自前だけでは新しい技術はなかなか生まれません。メーカーは良い商品を作ることが大前提なので、そのための技術をどのように強化して高度化するかが全社的な課題でした。コラボレーションという協創を意識してTICは作られています。外部や社外の専門的な技術者とコラボレーションし、研究を行っています。空調・化学・油機・電子システムといった各事業部間での連携も進めています。いろいろな分野の技術者を集めているので、フリーにコミュニケーションして触発することで新しいものを生み出そうという狙いもあります。


 

例えばある分野の開発でトラブルがあったとき、空調の技術者にサポートをもらうなど、違う分野の技術者に協力してもらうこともできます。空調機の中にはモーター、インバーター、熱交換器関係など、いろいろな部材があります。自動車用のモーターやインバーターなどで何かできないかと思ったときに、スペシャリストが社内にいるので、話を聞いたり人を紹介してもらったりすることが可能です。オープンイノベーションを実践している強みを生かして技術課題に合わせた提案ができればと考えています。

 

ヒューマンファクターがより重視されるこれからのクルマ

赤松氏 自動運転に関わらず、自動車業界はヒューマンファクターが重視されており、人間のことを考えて作らないといけないという流れが強いです。自動車技術は完成した技術であり、成熟した技術です。電子的な制御技術も含めて、どのようなクルマでも作れるとなったとき、最終的には人間にとって良い道具となることを目指すことになるでしょう。そのためには、人間のことを知る必要があります。クルマにおいて人間工学は古典的な要素です。昔はキャビン設計としてシートのレイアウトやダッシュボードの距離など、メカニカルなものが主流でした。最近は使いやすさ、快適さ、楽しさが重視されるようになってきています。

現在、私はヒューマンファクターとドライビングプレジャーの研究をしています。今の自動運転や運転支援技術は最終的に人間に合わせないと使い物になりません。自動運転を進めてしまうと、クルマ好きの方からクルマを運転する楽しみを取り上げかねないでしょう。そうなると、本末転倒というところもあって、自分で運転するとはどういうことかを考えないといけないという世界になってきています。

フロー理論を唱えたアメリカの心理学者であるミハイ・チクセントミハイ氏によると、スポーツが楽しいのは、自分の力を精一杯発揮し、チャレンジするからです。スポーツの試合をするとき、相手が自分より弱過ぎても強過ぎてもおもしろくありません。実力が伯仲する中で、勝つのが一番楽しいでしょう。クルマの運転も同様で、峠道を走るときはやや無理をしながらでも楽しいという感覚を得ながら一生懸命運転します。全体をコントロールしているという支配感が楽しさを生むからです。どれだけ一生懸命運転するかをディマンドと言いますが、ディマンドは与えられるものだけではなく、自分自身でもコントロールするものです。すなわち、同じ道でもゆっくり走れば楽に走れるし、スピードを出せば大変になる。全体のタスクの難しさをコントロールできるのがクルマの楽しさです。自動運転においてもこれらの楽しさを得ることはできます。


 

自ら一生懸命運転することも、システムに任せてすごく楽をすることも可能です。そのため、今よりも運転タスクの静と動のリズムをダイナミックに楽しめます。自分のクルマの機能を使える範囲を広げてくれる技術という観点で自動運転技術を考えていくのがポイントだと思います。

三浦氏 自動運転により運転する楽しみが減るという考え方ではなく、タスクの範囲を広げる楽しみができると捉えることもできるのですね。これまでのお話から、自動運転によりクルマの楽しみ方やクルマの付加価値、使い方が変化していくことを実感しました。ダイキンでは変化するマーケットに素早く対応できるように、常に自動車業界の動向を探っています。今後は自動運転を視野に入れていきたいと考えており、アメリカのサンノゼの拠点や今後ラボを作る予定のデトロイトから、自動車メーカーや関係企業とコミュニケーションをどんどん図っていきたいと思っています。

小さく、軽くするというのは昨今のニーズとしては大前提です。どのようなシステムが求められるようになっても、より人のストレスにならないように、縁の下の力持ちとして技術開発をしていきたいと思っています。今、持っていない技術も当然あるので、赤松先生のような方から、新しい時代がどういうものになっていくのか、いろいろと情報を得ながら、技術も先回りしていければ化学材料メーカーとしての役割を果たせるのではないかと考えています。


 

[こちらもご覧ください]

第2回スペシャル対談 | Daikin Mobility Lab. | フッ素化学 | ダイキン工業株式会社

http://www.daikin.co.jp/chm/mobility/interview2-1.html

1 2

ログイン

ページ上部へ戻る